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第三十九話 いつか必ず勝つ!
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「失礼。本日招待された、クラヴェル家のサイラスとエリシアです」
「おまちしておりました。招待状を拝見いたします……はい、結構です」
無事に会場に到着した私達は、受付をしていた男性に招待状を見せ、会場の中に通してもらった。
最近はとても良い意味で忙しかったから、こういう場が久しぶりに感じられる。
無駄に装飾がされたシャンデリアや壁、装飾品を見て、こんなことに使うお金があれば、沢山の人に薬を作れるのにと、何度思ったことか。
「サイラス様、まずは挨拶回りをしないと」
「あっ、そうだったな! 家を代表してパーティーに参加したことなんて無いから、どうも勝手がわからなくて」
「それなら大丈夫よ。大体頭に入っているから」
「さすがエリシア、頼りになるなぁ」
「もう、いつかはあなたがクラヴェル家の当主になる日が来るのかもしれないのよ?」
サイラス様には、お兄様が一人と、お姉様が二人いるから、末っ子のサイラス様が長になる可能性は低いと思うけど、全く無いわけではない。そんな時のために、知識として持っておくのは大切でしょう?
「それって、兄上になにかあった時の話だろう? 兄上は体をバラバラにされても死ぬような人じゃないから、その可能性はほぼゼロだな!」
「それ、人間を卒業してないかしら……?」
サイラス様が、既にグリムベアと戦っても軽傷で済んでるぐらいだし、騎士団に所属して活躍しているお兄様なら、本当に出来てしまいそうな気がしてならない。
「話がそれちゃったわね。今度こと挨拶回りを――」
サイラス様から意識を外側に向けた瞬間、すでに多くに貴族達から、私に対して軽蔑や憐れみの声が聞こえてきた。
捨てられた哀れな女。職も失って全てを失った。旦那にあそこまで言わせる毒女。そんな陰口が次々に聞こえてくる。
言われていることは腹が立つけど、離婚をされたのはその通りだから、強く言い返せないのよね……って!?
「ちょ、ちょっとサイラス様。最初からこうなるのは、あなたもわかっていたでしょう?」
「ああ、わかっていた。でも、こうして実際に目の前でやられると、不愉快この上ない。だから、彼らと少し話をしてこようと思って。もちろんこいつには頼るつもりは無いから、安心してくれ」
静かに答えるサイラス様の拳は、力が入り過ぎてプルプルと震え、いくつもの青筋が立っている。
これを見るだけで、サイラス様がいかに私のために怒ってくれているかが、わかってしまう。
「も、もうっ! 安心できるところが全然ないじゃないの! ほら、こっちこっち!」
このままでは、大騒ぎになってしまいかねないと思い、人気が少ない中庭へとやってきた。
今日は良いお天気なおかげで、星が綺麗に見えるうえに、暖かさもちょうど良いおかげか、先客が何人かいて、パーティーが始まるまでそれぞれの時間を過ごしていた。
「サイラス君、ちゃんと聞いて」
「はいっ」
「私のために怒ってくれるのは嬉しいわ。でもね、その代償としてあなたの立場や、ギルドの立場が悪くなったらどうするの? 一時の感情に身を任せないで、ちゃんと考えて」
「わかったよ、エリシア先生!」
本当にちゃんと大人しくなったサイラス様は、ベンチに座って星空を眺める。私もそれに倣い、座って星を眺めはじめる。
「綺麗ね」
「そうだな。こんなに星があるのをみると、自分の悩みやストレスって、些細なことなんだなって思うよ」
そうね、と相槌を打ってからは、しばらくは会話がないまま、星空を見上げていた。
黙って二人で過ごしているだけだったけど、むしろそれがすごく落ち着いた。まるで、世界に私達だけしかいないみたいな感じだったわ。
「さてと、そろそろパーティーが始まるし……戻ろうか」
月明かりに照らされたサイラス様は、少しだけ腰を曲げながら、私に手を差し出す。まるで、ダンスのお誘いをするかのように。
こういうサイラス様も、とっても素敵だわ。普段とのギャップもあるから、なおさらそう見えるのかもしれない。
そんなことを思いながら会場に戻ると、今一番会いたくない人と視線がぶつかった。
そう……マグナス様と、妻のヘレナ様だ。
「貴様も参加していたのか。馬子にも衣装というか、なんというか……ふっ」
随所で人を馬鹿にするその技術、見習いたくはないけど、凄いとは思う。
「貴様がドレスアップをしても、我が妻の方が美しい! そう思わないか、サイラス!!」
「……俺?」
これはマズい。多分、わざと煽るようなことをしてサイラス様を怒らせて、立場を悪くさせるつもりだ。
さっきのマグナス様のセリフで、かなり頭に来ているわよね……変な行動をしませんようにっ!
「そうですね……? まあ綺麗だと思いますよ。 エリシアの足元にも及ばないですけど」
「は……? 馬鹿な、ヘレナの良さがわからないなんて、貴様の目は節穴なのか!?」」
「それはそちらでしょう? あ、節穴じゃなくて、腐っているの間違いでしたか」
冷静に対応しているように見えるけど、いつも言わないような汚い言葉が出ているあたり、だいぶきているような気がする。
「ちっ……ああ、そうそう。最近ギルドの調子がいいそうじゃないか」
サイラス様にあしらわれたのだから、もうどこかに行けばいいのに、まだ執拗に絡んでくるのね。面倒で仕方がない。
「ええ、おかげさまで。そちらは私の穴埋めで大変だったのでは?」
「あれくらい、我がギルドなら余裕なのだよ」
私が出て行って、少しは傷跡を残せたかと思ったのだけどね……そう簡単にはいかないか。
「貴様らがいくら頑張ったところで、絶対的王者の我々には勝てないよ。諦めて二番でも狙うんだな! はっはっはっ!」
それだけ言ってようやく満足したのか、ヘレナ様を連れて私達の元を離れようとするが、すぐに私が引き止めた。
「今は確かにうちの方が下だわ。でも、必ずあなたのギルドを抜かしてあげる」
「寝言は寝て言え。貴様らには無理だ」
「どうしてそんなことを言うの? やる前から諦めさせるなんて、よほど自分達のギルドに自信がないの? それとも、怖気づいたのかしら? まあ、私達には関係のないことだけど。それでは、ごきげんよう」
最後にそれだけ伝えた私は、サイラス様と一緒にその場を離れた。去り際に、こっそりと拳を軽くぶつけ合い、喜びを分かち合った。
振り返ってみると、マグナス様がものすごいしかめっ面で、こっちを見ている。相変わらず自分の思い通りにならないと怒る、最低な人だ。
「おまちしておりました。招待状を拝見いたします……はい、結構です」
無事に会場に到着した私達は、受付をしていた男性に招待状を見せ、会場の中に通してもらった。
最近はとても良い意味で忙しかったから、こういう場が久しぶりに感じられる。
無駄に装飾がされたシャンデリアや壁、装飾品を見て、こんなことに使うお金があれば、沢山の人に薬を作れるのにと、何度思ったことか。
「サイラス様、まずは挨拶回りをしないと」
「あっ、そうだったな! 家を代表してパーティーに参加したことなんて無いから、どうも勝手がわからなくて」
「それなら大丈夫よ。大体頭に入っているから」
「さすがエリシア、頼りになるなぁ」
「もう、いつかはあなたがクラヴェル家の当主になる日が来るのかもしれないのよ?」
サイラス様には、お兄様が一人と、お姉様が二人いるから、末っ子のサイラス様が長になる可能性は低いと思うけど、全く無いわけではない。そんな時のために、知識として持っておくのは大切でしょう?
「それって、兄上になにかあった時の話だろう? 兄上は体をバラバラにされても死ぬような人じゃないから、その可能性はほぼゼロだな!」
「それ、人間を卒業してないかしら……?」
サイラス様が、既にグリムベアと戦っても軽傷で済んでるぐらいだし、騎士団に所属して活躍しているお兄様なら、本当に出来てしまいそうな気がしてならない。
「話がそれちゃったわね。今度こと挨拶回りを――」
サイラス様から意識を外側に向けた瞬間、すでに多くに貴族達から、私に対して軽蔑や憐れみの声が聞こえてきた。
捨てられた哀れな女。職も失って全てを失った。旦那にあそこまで言わせる毒女。そんな陰口が次々に聞こえてくる。
言われていることは腹が立つけど、離婚をされたのはその通りだから、強く言い返せないのよね……って!?
「ちょ、ちょっとサイラス様。最初からこうなるのは、あなたもわかっていたでしょう?」
「ああ、わかっていた。でも、こうして実際に目の前でやられると、不愉快この上ない。だから、彼らと少し話をしてこようと思って。もちろんこいつには頼るつもりは無いから、安心してくれ」
静かに答えるサイラス様の拳は、力が入り過ぎてプルプルと震え、いくつもの青筋が立っている。
これを見るだけで、サイラス様がいかに私のために怒ってくれているかが、わかってしまう。
「も、もうっ! 安心できるところが全然ないじゃないの! ほら、こっちこっち!」
このままでは、大騒ぎになってしまいかねないと思い、人気が少ない中庭へとやってきた。
今日は良いお天気なおかげで、星が綺麗に見えるうえに、暖かさもちょうど良いおかげか、先客が何人かいて、パーティーが始まるまでそれぞれの時間を過ごしていた。
「サイラス君、ちゃんと聞いて」
「はいっ」
「私のために怒ってくれるのは嬉しいわ。でもね、その代償としてあなたの立場や、ギルドの立場が悪くなったらどうするの? 一時の感情に身を任せないで、ちゃんと考えて」
「わかったよ、エリシア先生!」
本当にちゃんと大人しくなったサイラス様は、ベンチに座って星空を眺める。私もそれに倣い、座って星を眺めはじめる。
「綺麗ね」
「そうだな。こんなに星があるのをみると、自分の悩みやストレスって、些細なことなんだなって思うよ」
そうね、と相槌を打ってからは、しばらくは会話がないまま、星空を見上げていた。
黙って二人で過ごしているだけだったけど、むしろそれがすごく落ち着いた。まるで、世界に私達だけしかいないみたいな感じだったわ。
「さてと、そろそろパーティーが始まるし……戻ろうか」
月明かりに照らされたサイラス様は、少しだけ腰を曲げながら、私に手を差し出す。まるで、ダンスのお誘いをするかのように。
こういうサイラス様も、とっても素敵だわ。普段とのギャップもあるから、なおさらそう見えるのかもしれない。
そんなことを思いながら会場に戻ると、今一番会いたくない人と視線がぶつかった。
そう……マグナス様と、妻のヘレナ様だ。
「貴様も参加していたのか。馬子にも衣装というか、なんというか……ふっ」
随所で人を馬鹿にするその技術、見習いたくはないけど、凄いとは思う。
「貴様がドレスアップをしても、我が妻の方が美しい! そう思わないか、サイラス!!」
「……俺?」
これはマズい。多分、わざと煽るようなことをしてサイラス様を怒らせて、立場を悪くさせるつもりだ。
さっきのマグナス様のセリフで、かなり頭に来ているわよね……変な行動をしませんようにっ!
「そうですね……? まあ綺麗だと思いますよ。 エリシアの足元にも及ばないですけど」
「は……? 馬鹿な、ヘレナの良さがわからないなんて、貴様の目は節穴なのか!?」」
「それはそちらでしょう? あ、節穴じゃなくて、腐っているの間違いでしたか」
冷静に対応しているように見えるけど、いつも言わないような汚い言葉が出ているあたり、だいぶきているような気がする。
「ちっ……ああ、そうそう。最近ギルドの調子がいいそうじゃないか」
サイラス様にあしらわれたのだから、もうどこかに行けばいいのに、まだ執拗に絡んでくるのね。面倒で仕方がない。
「ええ、おかげさまで。そちらは私の穴埋めで大変だったのでは?」
「あれくらい、我がギルドなら余裕なのだよ」
私が出て行って、少しは傷跡を残せたかと思ったのだけどね……そう簡単にはいかないか。
「貴様らがいくら頑張ったところで、絶対的王者の我々には勝てないよ。諦めて二番でも狙うんだな! はっはっはっ!」
それだけ言ってようやく満足したのか、ヘレナ様を連れて私達の元を離れようとするが、すぐに私が引き止めた。
「今は確かにうちの方が下だわ。でも、必ずあなたのギルドを抜かしてあげる」
「寝言は寝て言え。貴様らには無理だ」
「どうしてそんなことを言うの? やる前から諦めさせるなんて、よほど自分達のギルドに自信がないの? それとも、怖気づいたのかしら? まあ、私達には関係のないことだけど。それでは、ごきげんよう」
最後にそれだけ伝えた私は、サイラス様と一緒にその場を離れた。去り際に、こっそりと拳を軽くぶつけ合い、喜びを分かち合った。
振り返ってみると、マグナス様がものすごいしかめっ面で、こっちを見ている。相変わらず自分の思い通りにならないと怒る、最低な人だ。
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