53 / 97
第五十三話 するべきか、しないべきか
しおりを挟む
パーティーの当日、私は夜まで時間を潰すために、自室で読書をしていた。
本当は、パーティーの準備の手伝いをしようとしていたのだが、サイラス様やレージュ様を含めた何人かの人達に、全力で止められてしまったから、準備が出来るまで、自室で待ちぼうけということなの。
あーあ、みんなきっと疲れてるだろうから、疲労回復効果が盛り盛りの、薬膳ケーキを焼こうと思ったのに……残念だわ。
「…………」
「なんか、昔もこんな感じのがあったわね」
なぜか一緒の部屋にいるサイラス様が、私の前に座って、ニコニコしながら私を見つめている。
当たり前のように、私の部屋にサイラス様がいるけど、別に嫌ではないし、むしろ見られて嬉しく思ってるけど、それ以上にジッと見られていると恥ずかしい。
「それで、どうしてここに?」
「今回も手伝おうと思ったんだけど、疲れているんだから休めと言われて、追い出されてしまってね。今日は随分と使用人が忙しそうにしているから、手伝いたかったんだけど……空いた時間を有効活用して、こうして君に会いに来たというわけだよ」
「なるほどね。来てくれて嬉しいわ」
「ははっ、相変わらずエリシアはツンツンしているな。そんなところも……え、エリシアが俺を受け入れてくれた!? くぅ……! 俺は猛烈に感動している!」
この展開は、絶対にサイラス様に抱きしめられる。それがわかっていたのに、私は止めたり逃げたりせず、素直にそれを受け入れた。
それどころか、サイラス様の背中に腕を回して、自分からも抱きつきにいっていた。
「え、えっと? エリシア、今日はどうしたんだ? いつもなら、すぐに離れるように言うのに……」
「……べ、別に……そういう気分になれなかっただけよ」
「それなら、今日はたくさんこうしてくっつけるということか!? よし、最近忙しくてイチャイチャ出来なかった分、ここで取り戻さないとな!」
「いつもイチャイチャなんてしてないわよ……もうっ」
相変わらず可愛くないことを言ってしまったことを後悔しながらも、離れることはしなかった。
……こんなにずっと触れ合えるのなんて、いつぶりだろう。いや、一緒に過ごすようになってから今日まで、こんなに長くくっついているのは無かった気もする。
だけど……まだ足りない。もっとサイラス様を心と体で感じていたい。それほどまで、私はサイラス様のことが……。
「……サイラス様……私……私……」
「エリシア……?」
「サイラス様、こちらにいらっしゃいますか?」
自然とサイラス様への気持ちを言葉として出そうになったが、部屋にやってきた使用人の声で我に返り、急いでサイラス様から離れた。
「あ、ああ。どうかしたのか?」
「イリス様が、お話があるから来てほしいとの事でして」
「母上が? わかった。すぐに行くよ」
その言葉を最後に、部屋の外から使用人の声が聞こえなくなった。きっと伝えることを伝えたから、仕事に戻ったのだろう。
「エリシア、俺に何か言うことがあったんじゃないか?」
「えっ!? ううん、なんでもないわ」
「そうか? それじゃあ、また後で」
サイラス様は、最後に私のことを強く抱きしめてから、笑顔で部屋を出ていった。それを見送った後、私は大きな溜息を漏らしながら、ベッドに頭から飛び込んだ。
「私……何を言おうとしていたの……?」
何を? そんなの、わざわざ思い出す必要も無い。私は、場の空気に便乗して、サイラス様に告白をしようとしていた。
好きだと気づいた時に、告白をして万が一に失敗してしまったら、この関係が壊れるかもしれないと思った。それが怖いとか思っていたくせに、私は無意識に気持ちを伝えようとしていた。
それを考えると、あそこで横槍が入ってきたのは、ある意味不幸中の幸いだった……のかもしれない。
「……わかってる……きっとサイラス様も、私と同じ気持ちなのは……告白すれば、成功するだろう……でも、絶対じゃない……それが怖い……」
私はサイラス様を愛している。出来ることなら、結婚して一緒にこれからもギルドを世界一にするため、多くの人を助けるために頑張って、いつかはマグナス様にぎゃふんと言わせたい。
でも、愛しているからこそ、失うのが怖い。告白がうまくいかなかったら……いや、そんなことは無い! やっぱり告白をして、関係を進展させた方が……! でも、やっぱり……。
でも……でも……でも……。
「……ああもう、考えがまとまらない!」
こういう時は、私の背中を押してくれたことがある、ミラやイリス様に相談するのが良いのかもしれないが、多分相談しても、二人共告白した方が良いと言うのはわかっている。
……結局のところ、最後に決めるのは私だ。気持ちに従って告白するのか、万が一を恐れてこのままの関係を続けるのか。
「私って、こんなに弱い人間だったのね」
ここに来るまで、私は一人で何でもできると思っていた。いや、出来ると思わなくては、生きていけなかった。それくらい、マグナス様のギルドでは一人で仕事をしていたから。
でも、ここで過ごすようになって、サイラス様とまた交流をする中で、私はもうサイラス様がいない人生なんて、考えられなくなっている。それくらい、この数ヶ月の間でサイラス様への気持ちが、爆発的に増している。
「……はぁ……少し、寝よう……」
結局答えが出せないまま、現実から逃げるように、私はゆっくりと意識を手放した――
本当は、パーティーの準備の手伝いをしようとしていたのだが、サイラス様やレージュ様を含めた何人かの人達に、全力で止められてしまったから、準備が出来るまで、自室で待ちぼうけということなの。
あーあ、みんなきっと疲れてるだろうから、疲労回復効果が盛り盛りの、薬膳ケーキを焼こうと思ったのに……残念だわ。
「…………」
「なんか、昔もこんな感じのがあったわね」
なぜか一緒の部屋にいるサイラス様が、私の前に座って、ニコニコしながら私を見つめている。
当たり前のように、私の部屋にサイラス様がいるけど、別に嫌ではないし、むしろ見られて嬉しく思ってるけど、それ以上にジッと見られていると恥ずかしい。
「それで、どうしてここに?」
「今回も手伝おうと思ったんだけど、疲れているんだから休めと言われて、追い出されてしまってね。今日は随分と使用人が忙しそうにしているから、手伝いたかったんだけど……空いた時間を有効活用して、こうして君に会いに来たというわけだよ」
「なるほどね。来てくれて嬉しいわ」
「ははっ、相変わらずエリシアはツンツンしているな。そんなところも……え、エリシアが俺を受け入れてくれた!? くぅ……! 俺は猛烈に感動している!」
この展開は、絶対にサイラス様に抱きしめられる。それがわかっていたのに、私は止めたり逃げたりせず、素直にそれを受け入れた。
それどころか、サイラス様の背中に腕を回して、自分からも抱きつきにいっていた。
「え、えっと? エリシア、今日はどうしたんだ? いつもなら、すぐに離れるように言うのに……」
「……べ、別に……そういう気分になれなかっただけよ」
「それなら、今日はたくさんこうしてくっつけるということか!? よし、最近忙しくてイチャイチャ出来なかった分、ここで取り戻さないとな!」
「いつもイチャイチャなんてしてないわよ……もうっ」
相変わらず可愛くないことを言ってしまったことを後悔しながらも、離れることはしなかった。
……こんなにずっと触れ合えるのなんて、いつぶりだろう。いや、一緒に過ごすようになってから今日まで、こんなに長くくっついているのは無かった気もする。
だけど……まだ足りない。もっとサイラス様を心と体で感じていたい。それほどまで、私はサイラス様のことが……。
「……サイラス様……私……私……」
「エリシア……?」
「サイラス様、こちらにいらっしゃいますか?」
自然とサイラス様への気持ちを言葉として出そうになったが、部屋にやってきた使用人の声で我に返り、急いでサイラス様から離れた。
「あ、ああ。どうかしたのか?」
「イリス様が、お話があるから来てほしいとの事でして」
「母上が? わかった。すぐに行くよ」
その言葉を最後に、部屋の外から使用人の声が聞こえなくなった。きっと伝えることを伝えたから、仕事に戻ったのだろう。
「エリシア、俺に何か言うことがあったんじゃないか?」
「えっ!? ううん、なんでもないわ」
「そうか? それじゃあ、また後で」
サイラス様は、最後に私のことを強く抱きしめてから、笑顔で部屋を出ていった。それを見送った後、私は大きな溜息を漏らしながら、ベッドに頭から飛び込んだ。
「私……何を言おうとしていたの……?」
何を? そんなの、わざわざ思い出す必要も無い。私は、場の空気に便乗して、サイラス様に告白をしようとしていた。
好きだと気づいた時に、告白をして万が一に失敗してしまったら、この関係が壊れるかもしれないと思った。それが怖いとか思っていたくせに、私は無意識に気持ちを伝えようとしていた。
それを考えると、あそこで横槍が入ってきたのは、ある意味不幸中の幸いだった……のかもしれない。
「……わかってる……きっとサイラス様も、私と同じ気持ちなのは……告白すれば、成功するだろう……でも、絶対じゃない……それが怖い……」
私はサイラス様を愛している。出来ることなら、結婚して一緒にこれからもギルドを世界一にするため、多くの人を助けるために頑張って、いつかはマグナス様にぎゃふんと言わせたい。
でも、愛しているからこそ、失うのが怖い。告白がうまくいかなかったら……いや、そんなことは無い! やっぱり告白をして、関係を進展させた方が……! でも、やっぱり……。
でも……でも……でも……。
「……ああもう、考えがまとまらない!」
こういう時は、私の背中を押してくれたことがある、ミラやイリス様に相談するのが良いのかもしれないが、多分相談しても、二人共告白した方が良いと言うのはわかっている。
……結局のところ、最後に決めるのは私だ。気持ちに従って告白するのか、万が一を恐れてこのままの関係を続けるのか。
「私って、こんなに弱い人間だったのね」
ここに来るまで、私は一人で何でもできると思っていた。いや、出来ると思わなくては、生きていけなかった。それくらい、マグナス様のギルドでは一人で仕事をしていたから。
でも、ここで過ごすようになって、サイラス様とまた交流をする中で、私はもうサイラス様がいない人生なんて、考えられなくなっている。それくらい、この数ヶ月の間でサイラス様への気持ちが、爆発的に増している。
「……はぁ……少し、寝よう……」
結局答えが出せないまま、現実から逃げるように、私はゆっくりと意識を手放した――
169
あなたにおすすめの小説
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
家の全仕事を請け負っていた私ですが「無能はいらない!」と追放されました。
水垣するめ
恋愛
主人公のミア・スコットは幼い頃から家の仕事をさせられていた。
兄と妹が優秀すぎたため、ミアは「無能」とレッテルが貼られていた。
しかし幼い頃から仕事を行ってきたミアは仕事の腕が鍛えられ、とても優秀になっていた。
それは公爵家の仕事を一人で回せるくらいに。
だが最初からミアを見下している両親や兄と妹はそれには気づかない。
そしてある日、とうとうミアを家から追い出してしまう。
自由になったミアは人生を謳歌し始める。
それと対象的に、ミアを追放したスコット家は仕事が回らなくなり没落していく……。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
婚約破棄?悪役令嬢の復讐は爆速で。
ハチワレ
恋愛
「リリム・フォン・アスタロト! 貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの最中、婚約者である王太子エリオットから身に覚えのない罪を突きつけられた公爵令嬢リリム。隣には「真実の愛」を語るマシュマロ系男爵令嬢シャーリーの姿。
普通の令嬢なら泣き崩れる場面――だが、リリムは違った。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる