継母の策略で婚約者から婚約破棄と追放をされた私、奴隷にされそうだったので逃げてたら救ってくれた吸血鬼の騎士様に何故か唇を奪われました

ゆうき

文字の大きさ
34 / 35

第三十四話 祖国の民の為に

しおりを挟む
 兵士達に連れて行かれるお義母様とコルエを見ていて、本当に終わったのだと実感できた私は、思わずその場に座り込んでしまいました。

 元王族としての仕事が少しは果たせた安心感と、ここまで来た疲れが出てしまったのでしょう。なにせ、凄い速度のモコに乗ったり、街中を全力で走ったり、下水を通ったりと、慣れない事ばかりをしましたからね。

「大丈夫か、マシェリー?」
「は、はい……いえ、私よりもカイン様こそ大丈夫ですか!?」

 未だに刺された所から血が出ているというのに、カイン様はいつも通りの顔をしています。

 本当に大丈夫なのか、やせ我慢をしてるのか……私にはわかりませんが、とにかく早く治療をしなければ!

「うん。急所は外してあるからね。それに、ヴァンパイアはこれくらいでは死なないよ」
「本当ですか? 私に心配をかけないように、隠してませんよね?」
「大丈夫。俺を信じて」

 正直まだ不安ですが、カイン様がここまで仰るのですから、信じるしかありませんわね。急に容体が急変しないと良いのですが……。

「君のおかげで、両国の平和は保たれた。皆を代表してお礼を言わせてほしい」
「……いえ、元はといえば、私がもっとしっかりしていれば、この国の王になって、お義母様の暴走を止められたでしょう」
「それはどうだろうか。君が王になったら、それはそれで別の方法を取ってくると俺は思う。だから、早めに止められてよかったんだ」
「…………」

 カイン様の言う通り、確かに時間で言えば、何十年も経ったりしていないので、いいのかもしれません。

 ですが、この短時間でグロース国の多くは荒廃し、民は苦しんでしまいました。それを忘れてはいけないのですわ……決して。

「カイン様、本当にありがとうございました。あなたがいなければ、どうなっていた事か……」
「気にしなくていいよ。君を守ると約束したからね」
「カイン様……そうだ、モコは……モコは大丈夫なのでしょうか!? もう良いんだよって止めに行かなければ!」
「それだったら、丁度良いタイミングだよ」
「え、それって……」

 カイン様の視線の先――玉座の間の入口を見ると、そこには泥だらけになりながらも、嬉しそうにしっぽを振るモコの姿がありました。

「やったなご主人! ご主人の言葉、しっかり聞いてたよ!」
「モコ! どうしてここに……それに、そんなに泥だらけで……怪我は!?」
「へへん、人間の剣なんて、オイラの足の速さがあれば、余裕で避けれるから大丈夫さ!」

 綺麗な白い毛が汚れてしまっていますが、モコ自身はとても元気そうです。でも、息がかなり上がっています。ずっと頑張ってくれたと思うと、本当に感謝と申し訳なさで一杯です。

「ふぁ~……さすがに疲れたなー……オイラ、しばらく休むよ。ご主人、後はよろしくな! 結構ぐっすり寝るから、起きなくても心配すんなよ! あと、故郷取り戻せてよかったな、ご主人!!」
「ええ。本当にありがとう、モコ」
「へへっ、どういたしましてだぜ! おいカイン! 干し肉の件、忘れんなよ!」
「大丈夫だ。ちゃんと約束は守る」

 モコは満足そうにそう言うと、元の小さな体に戻って寝息を立て始めました。

 本当にありがとう、モコ。今回だけじゃなくて、ずっと私の傍にいてくれて……私の家族でいてくれて、本当にありがとう。

「マシェリー様、カイン様。この度はグロース国を救ってくださり、感謝いたします」
「そんな、ノア様の勇気ある行動がなければ、国はもっと荒廃していたでしょう。最悪、戦争に発展して大きな犠牲が出ていたかもしれませんわ」
「僕はそんな優しい言葉をかけてもらう資格などありません……いえ、後悔は後にしましょう。今は民の為に、行動をしなければ。荒んだ街の修復や、民達の安定した生活の確保、資金調達、その他諸々……やる事は盛り沢山です」
「なら、我が国の陛下に掛け合ってみましょう。何か力になってくれるはずです」
「それはありがたい申し出です」

 き、聞いてるだけで目が回りそうな業務の数々ですわ。しかも、短期間で終わらせられるものも少ないです。絶対に一人で指揮をするには多忙すぎます。

「それなら、私もここに残りますわ!」

 私の申し出に驚いたお二人は、一斉に私へと視線を向けました。突然私がこんな申し出をしたら、驚くのも無理はありませんわ。

「いえ、これは宰相として僕がやるべき事ですので」
「私は元王族です。国や民が大変な時に、安全な場所で傍観してるなんて、出来ませんもの」
「……しかしですね……」
「こうなったマシェリーは、絶対に折れないと思いますよ、ノア殿」

 カイン様の後押しに乗るように、私は真っ直ぐとノア様を見つめると、観念したのか、小さく溜息を漏らしました。

「わかりました。ですが、あなたにも色々準備があるでしょう。一度お戻りになって準備をされてから、帰国していただけますか?」
「っ……! ありがとうございます! 私、国と民の為に尽力いたしますわ!!」

 グロース国の為に働けるのが嬉しくて、私は思わずノア様の手を取りながら、上下に大きく手を振ってしまいました。

 私とした事が、感情に流されて、はしたない事をしてしまいました……反省です。

「その……カイン様、勝手に決めて申し訳ございません」
「いや、君なら名乗り出ると思っていたからね。でも、一つ約束してほしい。全てが終わったら、その時は……」
「もちろんでございます。私はあなたの元に、必ず戻りますわ」
「もしかして、マシェリー様とあなたは?」
「ええ。彼は私の恋人ですの」
「そうでしたか! あなたのような方なら、マシェリー様を安心して任せられる!」

 元婚約者のノア様に、カイン様とお付き合いしてるのを知らせたら、あまり良い顔をされないと思っていたのですが、想像以上に好意的で良かったですわ。

「僕では、彼女を幸せにしてあげるどころか、不幸に陥れてしまった。だから、僕の代わりに、彼女を目一杯幸せにしてもらえないでしょうか?」
「あなたも色々と事情があったのですから、あまり気負いはしないでもらいたい。それと、彼女の事はお任せください」
「ありがとうございます。せめてものお礼として、すぐにその傷の治療の準備をさせていただきます」

 ノア様の提案を受け入れたカイン様と共に、医務室で手当てと休憩をした私達は、ノア様が用意した馬車に乗って、にエルピス国に帰国しました。

 空が少し明るくなり始めた頃、無事帰国し、エルピス国の民達に盛大に出迎えられる中、私達はもみくちゃになりながらも、何とか屋敷まで帰ってこれました。

「屋敷を出てから時間は経っていないのに、なんだか何年も出ていたような気がしてなりません」

 私はモコを小屋の中に寝かせながら、大きく息を漏らしました。

 疲れと眠気で、体が異様に重いですわ。きっと明日は、体中が筋肉痛になっているに違いありませんね。

「それくらい疲れているのだろう。今日はもう休んで、グロース国に行く準備は明日以降すればいい」
「はい。カイン様もお休みになられますか?」
「そうだね。朝は動くのつらいし、さすがに俺も疲れたから、戻ってすぐに休むつもりだ」
「なら、その……い、一緒に……なんて……あ、何でもないです!」
「ああ、もちろん」

 カイン様は短く返事を返しながら、私の唇を奪いました。その口づけはとても優しく、体の芯から溶けそうなくらい心地よく……なによりも、体も心もカイン様の虜になっていくようでした。

「……しばらくは会えないだろうから、今はこうしていたいな」
「そうですわね……あっ!!」
「ど、どうかしたかい?」
「会えなくなったら、血はどうするんですか!?」
「………………言われてみれば、その問題があったね。参ったな……全く考えてなかった。また別の方法で確保するようにしないと」

 私もすっかり失念していました。グロース国の民の事も大切ですが、カイン様の事もとても大切ですから、放っておく事など……。

 うぅ、どうすれば……冷静に考えるのよ、私。もうあまり時間は残されていないのだから……そうだわ!

「あの、とても強引で身勝手な方法ですが、一つ思いついた事が――」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】離縁王妃アデリアは故郷で聖姫と崇められています ~冤罪で捨てられた王妃、地元に戻ったら領民に愛され「聖姫」と呼ばれていました~

猫燕
恋愛
「――そなたとの婚姻を破棄する。即刻、王宮を去れ」 王妃としての5年間、私はただ国を支えていただけだった。 王妃アデリアは、側妃ラウラの嘘と王の独断により、「毒を盛った」という冤罪で突然の離縁を言い渡された。「ただちに城を去れ」と宣告されたアデリアは静かに王宮を去り、生まれ故郷・ターヴァへと向かう。 しかし、領地の国境を越えた彼女を待っていたのは、驚くべき光景だった。 迎えに来たのは何百もの領民、兄、彼女の帰還に歓喜する侍女たち。 かつて王宮で軽んじられ続けたアデリアの政策は、故郷では“奇跡”として受け継がれ、領地を繁栄へ導いていたのだ。実際は薬学・医療・農政・内政の天才で、治癒魔法まで操る超有能王妃だった。 故郷の温かさに癒やされ、彼女の有能さが改めて証明されると、その評判は瞬く間に近隣諸国へ広がり── “冷徹の皇帝”と恐れられる隣国の若き皇帝・カリオンが現れる。 皇帝は彼女の才覚と優しさに心を奪われ、「私はあなたを守りたい」と静かに誓う。 冷徹と恐れられる彼が、なぜかターヴァ領に何度も通うようになり――「君の価値を、誰よりも私が知っている」「アデリア・ターヴァ。君の全てを、私のものにしたい」 一方その頃――アデリアを失った王国は急速に荒れ、疫病、飢饉、魔物被害が連鎖し、内政は崩壊。国王はようやく“失ったものの価値”を理解し始めるが、もう遅い。 追放された王妃は、故郷で神と崇められ、最強の溺愛皇帝に娶られる!「あなたが望むなら、帝国も全部君のものだ」――これは、誰からも理解されなかった“本物の聖女”が、 ようやく正当に愛され、報われる物語。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。 だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。 失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。 どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。 「悪女に、遠慮はいらない」 そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。 「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。  王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」 愛も、誇りも奪われたなら── 今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。 裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス! ⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...