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第十二話 エルミーユの事情
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■ブラハルト視点■
「……なるほど、報告ご苦労だった、マリーヌ」
自室で書類に目を通していた俺の元にやってきたマリーヌから、その後のエルミーユ嬢の報告を受ける。
まさか、風呂の中で眠ってしまうのは想定外だったが、聞いている限りでは、嫌がってたわけではなさそうだから、とりあえずは安心――と言いたいが、そうもいかなさそうだ。
ちなみにエルミーユ嬢は、マリーヌと数人の使用人で着替えを済ませ、部屋に運び、ベッドに寝かしている。
「それにしても、エルミーユ嬢の体に無数の傷跡があったとは、一体どういうことだ?」
マリーヌの話を聞いた限りでは、傷は体の至る所にあったそうだ。
切り傷や打撲、青あざといった物が大半を占めていて、新しい傷もあれば、かなり古いものもあるとのことだ。
幸いにも、骨折や酷い火傷のような、酷い怪我が無かったのが唯一の救いか。
「わかりません。本人が言うには、ドジだからだそうです」
「さすがに、それは無理があるだろう……」
「ですよね。話す様子がなかったので、とりあえずその場では合わせましたが……」
いくらドジとはいえ、体中に傷があるほどのドジな人間がいるとは、あまり考えられない。
ということは、考えられることは一つしかない。
「傷だらけなのも気になりましたけど、その傷が首から下にしかなかったことや、酷く痩せていたのも気になります。それなのに、髪だけは手入れが行き届いてました」
「なるほど……日常的に虐待をされていた可能性は高いな。それも、ドレスを着てればバレない部分だけ傷つけて、虐待されているのがわからないようにしている」
エルミーユについて、ワーズ家に事情を聞いてみたいが、エルミーユ嬢の過去について詮索しない契約を結んでいる以上、ワーズ家に聞くことは出来ない。
よくわからない契約を結ばせると思っていたが、まさかこのことを聞かれないようにするためだったとはな。
契約を破って、エルミーユ嬢を家に返したら、また何をされるかわかったものじゃない。エルミーユ嬢を守るためにも、この契約は、絶対に守らなければ。
「事情を聞きたいが、俺が過去について詮索するのは、契約で禁じられてるからな……」
「そんな契約を交わしたのですか?」
「ああ。あの時は何も思わなかったが、まさかこういうことだとはな……とりあえず、今の俺達に出来ることをするだけだ。大至急で傷によく効く薬と、消化が良くて栄養のある食べ物を手配をする。それと、服やベッドのシーツなども、なるべく痛まないように摩擦が少ない生地のものを用意しよう」
新たに申請に必要な書類を取り出し、その上で羽ペンを踊らせ始めると、マリーヌが楽しそうに、手を口元にやって笑っていた。
「……ふふっ」
「なんだ?」
「エルミーユ様には、愛することは無いと言っておきながら、溺愛していると言われても反論できないくらい愛していると思ったら、おかしくて」
確かに俺は、あの時に愛さないと断言した。だが、それとこれとは話が別だ。
「彼女を妻として愛するつもりはない。しかし、妻となってくれたことには変わりはないだろう? だから、夫として大切にしようとしているに過ぎないんだ」
「相変わらず、無駄に真面目ですこと」
「無駄は余計だ」
全く、マリーヌは悪い人間じゃないが、たまにからかってくるのが玉に瑕だ。
場を和ませるためとか、仕事ばかりしている俺をリラックスさせるためだというのは、薄々わかっているから、あまり強くは言えない。
「そうですね~……使用人兼、坊ちゃまの良き理解者代表である、私の見立てですと、坊ちゃまは無駄に優しくて正義感のある人ですから、変な噂のせいで恐れられ、孤立している自分と親密になって、エルミーユ様まで変な風に見られないようにするために、わざと深煎りさせないように見えますけどね」
「……さあ、なんのことかさっぱりだ」
「あらあら、変なところで強がりなんですから」
マリーヌの言う通り、俺はエルミーユ嬢が悪く言われ、傷つくことを恐れている。
俺のような評判が悪い人間と結婚するのだから、最初から覚悟しておかないといけないのは、重々承知している。
しかし、俺も家を存続させるために、なりふり構ってはいられないのも事実だ。
だから、俺は考えた。その結果、最初から愛さないと伝えておいて、俺に深く関わらないようにすればいいという結論に至った。
何を言われても、形だけの結婚だから、自分は関係ないと言い張れるし、深く関わらなければ、俺のことを悪く言われても、心を痛めないだろう。
それに、貴族達に愛のない姿を見せれば、俺が無理やり結婚させたという噂が広まるのは、火を見るより明らかだ。
それを利用して、エルミーユを彼らの噂から守ろうということだ。
これが正しい選択なのかは、正直わからないが……少しでもエルミーユ嬢を守れれば幸いだ。
「そうだ、もう一つご報告がありました。これを見てください」
「これは、ぬいぐるみか?」
「エルミーユ様が持ってきた物です。入浴の前に、預からせてもらったんです」
「随分と年季が入っているが……それに、どうして首から破損している? 明らかに不自然だ」
「ご本人が言うには、来る前に壊れてしまったそうです。直す時間が無くて、壊れたままだそうですよ」
マリーヌが見せてくれた、汚れたクマのぬいぐるみは、首が切断されて中の綿が出てきてしまっている。
随分と綺麗に切断されているな……経年劣化で壊れたものには見えない。それに、貴族の令嬢が持つ物にしては、あまりにも汚れすぎている。これも虐待の一環か?
「さすがにこの汚れを落とすのは難しいが、首を直すことくらいはできそうだな。俺が明日までに直しておこう」
「明日まで? 仕事もあるのに、それは無茶じゃありませんか? 私達に任せた方がよろしいかと」
「寝なければ問題ない」
「問題しかないと思いますが……」
「なに、三日間徹夜した経験が何度もある俺には、一晩くらいの徹夜くらい、なんてことはない。それに、俺がエルミーユ嬢のために、直してあげたいんだ」
マリーヌに呆れ顔をされてしまったが、一度口にしたことを撤回する気は無い。
とりあえず、エルミーユ嬢のための物の準備を早く済ませて、ぬいぐるみの修理に取り掛からないとな。
それに、エルミーユ嬢と結婚するのに必要な書類も、国に提出しないといけない。
本当は二人の記念として、結婚式やパーティーを開きたいところだが、変に大掛かりなことをして悪目立ちするのは避けたい。
もしも、エルミーユ嬢がどうしてもやりたいと言った時や、ある程度落ち着いてきて、祝いの席を設けても大丈夫と思った時には、ぜひ開きたいものだ……。
「……なるほど、報告ご苦労だった、マリーヌ」
自室で書類に目を通していた俺の元にやってきたマリーヌから、その後のエルミーユ嬢の報告を受ける。
まさか、風呂の中で眠ってしまうのは想定外だったが、聞いている限りでは、嫌がってたわけではなさそうだから、とりあえずは安心――と言いたいが、そうもいかなさそうだ。
ちなみにエルミーユ嬢は、マリーヌと数人の使用人で着替えを済ませ、部屋に運び、ベッドに寝かしている。
「それにしても、エルミーユ嬢の体に無数の傷跡があったとは、一体どういうことだ?」
マリーヌの話を聞いた限りでは、傷は体の至る所にあったそうだ。
切り傷や打撲、青あざといった物が大半を占めていて、新しい傷もあれば、かなり古いものもあるとのことだ。
幸いにも、骨折や酷い火傷のような、酷い怪我が無かったのが唯一の救いか。
「わかりません。本人が言うには、ドジだからだそうです」
「さすがに、それは無理があるだろう……」
「ですよね。話す様子がなかったので、とりあえずその場では合わせましたが……」
いくらドジとはいえ、体中に傷があるほどのドジな人間がいるとは、あまり考えられない。
ということは、考えられることは一つしかない。
「傷だらけなのも気になりましたけど、その傷が首から下にしかなかったことや、酷く痩せていたのも気になります。それなのに、髪だけは手入れが行き届いてました」
「なるほど……日常的に虐待をされていた可能性は高いな。それも、ドレスを着てればバレない部分だけ傷つけて、虐待されているのがわからないようにしている」
エルミーユについて、ワーズ家に事情を聞いてみたいが、エルミーユ嬢の過去について詮索しない契約を結んでいる以上、ワーズ家に聞くことは出来ない。
よくわからない契約を結ばせると思っていたが、まさかこのことを聞かれないようにするためだったとはな。
契約を破って、エルミーユ嬢を家に返したら、また何をされるかわかったものじゃない。エルミーユ嬢を守るためにも、この契約は、絶対に守らなければ。
「事情を聞きたいが、俺が過去について詮索するのは、契約で禁じられてるからな……」
「そんな契約を交わしたのですか?」
「ああ。あの時は何も思わなかったが、まさかこういうことだとはな……とりあえず、今の俺達に出来ることをするだけだ。大至急で傷によく効く薬と、消化が良くて栄養のある食べ物を手配をする。それと、服やベッドのシーツなども、なるべく痛まないように摩擦が少ない生地のものを用意しよう」
新たに申請に必要な書類を取り出し、その上で羽ペンを踊らせ始めると、マリーヌが楽しそうに、手を口元にやって笑っていた。
「……ふふっ」
「なんだ?」
「エルミーユ様には、愛することは無いと言っておきながら、溺愛していると言われても反論できないくらい愛していると思ったら、おかしくて」
確かに俺は、あの時に愛さないと断言した。だが、それとこれとは話が別だ。
「彼女を妻として愛するつもりはない。しかし、妻となってくれたことには変わりはないだろう? だから、夫として大切にしようとしているに過ぎないんだ」
「相変わらず、無駄に真面目ですこと」
「無駄は余計だ」
全く、マリーヌは悪い人間じゃないが、たまにからかってくるのが玉に瑕だ。
場を和ませるためとか、仕事ばかりしている俺をリラックスさせるためだというのは、薄々わかっているから、あまり強くは言えない。
「そうですね~……使用人兼、坊ちゃまの良き理解者代表である、私の見立てですと、坊ちゃまは無駄に優しくて正義感のある人ですから、変な噂のせいで恐れられ、孤立している自分と親密になって、エルミーユ様まで変な風に見られないようにするために、わざと深煎りさせないように見えますけどね」
「……さあ、なんのことかさっぱりだ」
「あらあら、変なところで強がりなんですから」
マリーヌの言う通り、俺はエルミーユ嬢が悪く言われ、傷つくことを恐れている。
俺のような評判が悪い人間と結婚するのだから、最初から覚悟しておかないといけないのは、重々承知している。
しかし、俺も家を存続させるために、なりふり構ってはいられないのも事実だ。
だから、俺は考えた。その結果、最初から愛さないと伝えておいて、俺に深く関わらないようにすればいいという結論に至った。
何を言われても、形だけの結婚だから、自分は関係ないと言い張れるし、深く関わらなければ、俺のことを悪く言われても、心を痛めないだろう。
それに、貴族達に愛のない姿を見せれば、俺が無理やり結婚させたという噂が広まるのは、火を見るより明らかだ。
それを利用して、エルミーユを彼らの噂から守ろうということだ。
これが正しい選択なのかは、正直わからないが……少しでもエルミーユ嬢を守れれば幸いだ。
「そうだ、もう一つご報告がありました。これを見てください」
「これは、ぬいぐるみか?」
「エルミーユ様が持ってきた物です。入浴の前に、預からせてもらったんです」
「随分と年季が入っているが……それに、どうして首から破損している? 明らかに不自然だ」
「ご本人が言うには、来る前に壊れてしまったそうです。直す時間が無くて、壊れたままだそうですよ」
マリーヌが見せてくれた、汚れたクマのぬいぐるみは、首が切断されて中の綿が出てきてしまっている。
随分と綺麗に切断されているな……経年劣化で壊れたものには見えない。それに、貴族の令嬢が持つ物にしては、あまりにも汚れすぎている。これも虐待の一環か?
「さすがにこの汚れを落とすのは難しいが、首を直すことくらいはできそうだな。俺が明日までに直しておこう」
「明日まで? 仕事もあるのに、それは無茶じゃありませんか? 私達に任せた方がよろしいかと」
「寝なければ問題ない」
「問題しかないと思いますが……」
「なに、三日間徹夜した経験が何度もある俺には、一晩くらいの徹夜くらい、なんてことはない。それに、俺がエルミーユ嬢のために、直してあげたいんだ」
マリーヌに呆れ顔をされてしまったが、一度口にしたことを撤回する気は無い。
とりあえず、エルミーユ嬢のための物の準備を早く済ませて、ぬいぐるみの修理に取り掛からないとな。
それに、エルミーユ嬢と結婚するのに必要な書類も、国に提出しないといけない。
本当は二人の記念として、結婚式やパーティーを開きたいところだが、変に大掛かりなことをして悪目立ちするのは避けたい。
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