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第五十四話 いざ本番の日
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ついに迎えた宮廷魔術師の試験の日。私は小屋で支度を整えている最中なのだが、忘れ物がないか何度も何度も確認をしていた。
「うぅ、何度確認しても不安で仕方がありませんわ……それに、もし失敗したらどうしましょう……」
『今更焦っても仕方がないんじゃない? もうなるようにしかならないって!』
『私もそう思うわ。シャーロットは毎日汗水流して、時には倒れるくらい練習したのだから、きっと大丈夫!』
「二人共……ありがとうございます」
おろおろしている私を見かねて、精霊の二人が私のことを励ましてくれた。
この二人は、ルーク様やホウキ達と同じように、ずっと私の練習を見守ってくれていた。そんな二人に励まされると、とても安心できる。
『シャーロット、合格! 出来る!』
『絶対、絶対、合格!』
『ぼくたち、応援! フレー! フレー!』
「みんなも応援してくれて、ありがとうございます」
ホウキ達は、一体どこから出したのか、柄の部分に、応援に使うポンポンをひっかけた状態で踊りだす。
今にもポンポンがどこかに飛んでいきそうでひやひやするが、応援したいという気持ちがとても伝わってきて、勇気が湧いてくる。
そんな私達のすぐ隣で空間の裂け目が開き、中からルーク様がやってきた。
「おかえりなさい、ルーク様」
「ただいま。思ったよりも試験についての話が長引いてしまったよ」
宮廷魔術師の試験の運営は、専門の委員会が存在しているが、王族も一緒になって運営にあたるらしく、ルーク様はいつも以上に忙しそうにしている。おかげで、最近は研究の時間が減ってきている。
以前、少し張り切り過ぎではないかと聞いたことがあるのだけど、ハリー様やアルバート様が、試験でなにか不正をしないか見張らないといけないと言っていた。
その話を聞いた時、アルバート様はそういうのは向いていなさそうな気がするが、ハリー様ならあの手この手で汚いことをしそうだと思ってしまったわ。
ちなみに、今のところは変なことはしていないみたい。
「緊張……は、思ったよりもしていないみたいだね」
「はい。ドキドキはしておりますが……みんなが励ましてくれました」
ふふんと自信たっぷりな男の子の精霊、優しく微笑む女の子の精霊、そして踊り続けたり、飛び跳ねて応えるホウキ達を順番に見ながら、私は力強く頷いた。
お母様が亡くなってから、ずっと一人ぼっちだった私はもういない。今の私には、こんなにも応援してくれる人がいる。
本当に……本当に、幸せだ。だからこそ、みんなの……ルーク様の期待に応えたい。そして、これからもみんなと一緒に、幸せで平和な日々を過ごしたい。
「よし、それじゃあ会場に……っと、その前に。シャーロット、君に伝えたいことがある」
「はい」
「僕はちゃんと君のことを見守っているから。絶対にそれは忘れないで」
傍から聞いていれば、ただの励ましの言葉でしかないが、ルーク様の真剣な表情がとても印象に残った。
「はい、もちろんです。ありがとうございます、ルーク様。とても心強いですわ」
「それじゃあ、今度こそ行こうか。みんな、留守番は頼んだよ」
「みんな、いってきます」
ホウキ達と精霊に挨拶を残し、裂け目を通って一度城に向かうと、そこには会場に行くための馬車が用意されていた。
その馬車に乗って揺られること十分。私達は、宮廷魔術師の試験会場へとやってきた。
「こんなにたくさんの参加者がいるのですね……」
「宮廷魔術師の倍率は、年々上がってきているからね。君も知っている通り、推薦が無いと受けられないようにしているのにこれだから、推薦が必要なければもっとすさまじいことになっているよ」
「想像するだけでも過酷そうですわ」
ただでさえすごそうな魔法使いばかりなのに、更に倍率が高くなったらと思うと、ゾッとする。
うぅ、みんなに励まされて緊張が解れたと思ったけど、改めて競い合う人達を見たら、また緊張してきてしまった。今にも吐きそう……。
「シャーロット」
「は、はい」
「さっき伝えただろう? 僕が見守っているって」
「あっ……」
そうだ、私にはルーク様がいる。私は、もう一人じゃない。そう思うと、緊張がほどけ、気持ちがすっと楽になった。
「ありがとうございます、ルーク様。おかげで気持ちが楽になりましたわ」
「それはよかった。あそこで受付をしているから、さっそく行こうか」
ルーク様と一緒に受付に向かうと、以前参加の申し込みの際に対応してくれた時と同じ人が対応してくれた。
「シャーロット様、ルーク王子様、ご機嫌麗しゅうございます。受験票を確認いたします」
「はい」
私は荷物の中から受験票を取り出して彼に見せると、別の紙に何かを書きこんでいた。
「はい、確認いたしました。試験の開始時刻までは自由時間となっておりますが、外出はお控えいただくよう、お願いいたします」
「わかりました」
ふう、とりあえず受付は無事に済んで良かった。たくさん練習をして、小屋を出る前に持ち物の確認を何度もしたのに、受験票を忘れて失格になんてなったら、私は後悔で一生成仏できなくなっていたわ。
「シャーロット。すまないが、僕は運営のことでここを離れないといけないんだ」
「わかりました。次にお会いする時には、宮廷魔術師になっていると、お約束いたします」
「ああ、君なら必ずできる。僕達の未来のために……いってらっしゃい!」
「はい、いってきます!」
ルーク様は、とても力強くて支える言葉を残して、会場の奥へと去っていった。
さてと、ここまで来てすることなんて無いし、静かなところでゆっくりしたい。
「確か、この会場には小さな中庭があったはず」
建物の中にいるよりも、風にあたった方がきっと落ち着けると思い、すぐに向かって見ると、私と同じ考えを持ったのか、数人ほどが静かに過ごしていた。
その中には、お付きの従者に淹れてもらったお茶を優雅に飲んでいる女性、が……って、あれはマーガレットじゃないの。
「見つかると面倒だし、中に戻りましょう」
「あら、お姉様じゃない! こんなところで会うなんて、奇遇だね~!」
……見つかってしまった。もう最悪……落ち着くために来たと言うのに、落ち着きとは真逆の人間に絡まれるだなんて。
「ハリー様から聞いたよ。お姉様、今回の試験に合格したら、結婚をするんだってね」
「ええ。それが?」
「あははっ、合格するのはあたしなんだから、そんな夢物語は諦めた方がいいでしょ?」
「あなたに決められる謂れはございませんわ」
「そんなピリピリしなくてもいいじゃん。そもそも、お姉様が幸せになるのが無理な話なんだよ? しょせんお姉様は、何の役にも立たないゴミなのだから」
「…………」
明らかにマーガレットは煽りに来ている。それが、私のメンタルを揺すりに来てるのか、憎しみを増幅させるのが駄目なことを知っているのか。
マーガレットのことだから、ただ単に私のことを馬鹿にしたいだけというのが、可能性としては一番高そうだ。
「ていうか、ルーク様って男を見る目が無いんだね。こんな無能を選ぶだなんて。やっぱり、あの杖目的としか思えないなぁ。あたし、優しいし賢いから教えてあげるけど、あの人はお姉様を利用――」
「何も知らないくせに、ルーク様の悪口を言わないで頂戴!!」
相手の口車に乗ってはいけないのはわかっているが、ルーク様のことを馬鹿にされたのが許せなくて……周りのことなんて気にしないで、言いたいことを大声でぶつけると、マーガレットは一瞬だけ怯んだ後、腹を抱えて笑い出した。
「なにをムキになってんの? ばっかみた~い! 下手な大衆娯楽より面白いよ! 芸人として、うちに戻ってこない? 今なら歓迎してあげるよ?」
「っ……!」
駄目だ、これ以上マーガレットと話していたら、心を乱されてしまう。悔しいけど、ここはさっさと退散した方が良さそうだ。
「お断りします。では、私はこれで失礼します」
「えぇ~? なになに、逃げちゃうの? 情けないな~」
「お好きに捉えていただいて結構です。ごきげんよう」
半ば逃げるような形になってしまったが、なんとかマーガレットの元から逃れることが出来た。
今だけ調子に乗っているといいわ。必ず、目にものを見せてあげるのだから……。
「うぅ、何度確認しても不安で仕方がありませんわ……それに、もし失敗したらどうしましょう……」
『今更焦っても仕方がないんじゃない? もうなるようにしかならないって!』
『私もそう思うわ。シャーロットは毎日汗水流して、時には倒れるくらい練習したのだから、きっと大丈夫!』
「二人共……ありがとうございます」
おろおろしている私を見かねて、精霊の二人が私のことを励ましてくれた。
この二人は、ルーク様やホウキ達と同じように、ずっと私の練習を見守ってくれていた。そんな二人に励まされると、とても安心できる。
『シャーロット、合格! 出来る!』
『絶対、絶対、合格!』
『ぼくたち、応援! フレー! フレー!』
「みんなも応援してくれて、ありがとうございます」
ホウキ達は、一体どこから出したのか、柄の部分に、応援に使うポンポンをひっかけた状態で踊りだす。
今にもポンポンがどこかに飛んでいきそうでひやひやするが、応援したいという気持ちがとても伝わってきて、勇気が湧いてくる。
そんな私達のすぐ隣で空間の裂け目が開き、中からルーク様がやってきた。
「おかえりなさい、ルーク様」
「ただいま。思ったよりも試験についての話が長引いてしまったよ」
宮廷魔術師の試験の運営は、専門の委員会が存在しているが、王族も一緒になって運営にあたるらしく、ルーク様はいつも以上に忙しそうにしている。おかげで、最近は研究の時間が減ってきている。
以前、少し張り切り過ぎではないかと聞いたことがあるのだけど、ハリー様やアルバート様が、試験でなにか不正をしないか見張らないといけないと言っていた。
その話を聞いた時、アルバート様はそういうのは向いていなさそうな気がするが、ハリー様ならあの手この手で汚いことをしそうだと思ってしまったわ。
ちなみに、今のところは変なことはしていないみたい。
「緊張……は、思ったよりもしていないみたいだね」
「はい。ドキドキはしておりますが……みんなが励ましてくれました」
ふふんと自信たっぷりな男の子の精霊、優しく微笑む女の子の精霊、そして踊り続けたり、飛び跳ねて応えるホウキ達を順番に見ながら、私は力強く頷いた。
お母様が亡くなってから、ずっと一人ぼっちだった私はもういない。今の私には、こんなにも応援してくれる人がいる。
本当に……本当に、幸せだ。だからこそ、みんなの……ルーク様の期待に応えたい。そして、これからもみんなと一緒に、幸せで平和な日々を過ごしたい。
「よし、それじゃあ会場に……っと、その前に。シャーロット、君に伝えたいことがある」
「はい」
「僕はちゃんと君のことを見守っているから。絶対にそれは忘れないで」
傍から聞いていれば、ただの励ましの言葉でしかないが、ルーク様の真剣な表情がとても印象に残った。
「はい、もちろんです。ありがとうございます、ルーク様。とても心強いですわ」
「それじゃあ、今度こそ行こうか。みんな、留守番は頼んだよ」
「みんな、いってきます」
ホウキ達と精霊に挨拶を残し、裂け目を通って一度城に向かうと、そこには会場に行くための馬車が用意されていた。
その馬車に乗って揺られること十分。私達は、宮廷魔術師の試験会場へとやってきた。
「こんなにたくさんの参加者がいるのですね……」
「宮廷魔術師の倍率は、年々上がってきているからね。君も知っている通り、推薦が無いと受けられないようにしているのにこれだから、推薦が必要なければもっとすさまじいことになっているよ」
「想像するだけでも過酷そうですわ」
ただでさえすごそうな魔法使いばかりなのに、更に倍率が高くなったらと思うと、ゾッとする。
うぅ、みんなに励まされて緊張が解れたと思ったけど、改めて競い合う人達を見たら、また緊張してきてしまった。今にも吐きそう……。
「シャーロット」
「は、はい」
「さっき伝えただろう? 僕が見守っているって」
「あっ……」
そうだ、私にはルーク様がいる。私は、もう一人じゃない。そう思うと、緊張がほどけ、気持ちがすっと楽になった。
「ありがとうございます、ルーク様。おかげで気持ちが楽になりましたわ」
「それはよかった。あそこで受付をしているから、さっそく行こうか」
ルーク様と一緒に受付に向かうと、以前参加の申し込みの際に対応してくれた時と同じ人が対応してくれた。
「シャーロット様、ルーク王子様、ご機嫌麗しゅうございます。受験票を確認いたします」
「はい」
私は荷物の中から受験票を取り出して彼に見せると、別の紙に何かを書きこんでいた。
「はい、確認いたしました。試験の開始時刻までは自由時間となっておりますが、外出はお控えいただくよう、お願いいたします」
「わかりました」
ふう、とりあえず受付は無事に済んで良かった。たくさん練習をして、小屋を出る前に持ち物の確認を何度もしたのに、受験票を忘れて失格になんてなったら、私は後悔で一生成仏できなくなっていたわ。
「シャーロット。すまないが、僕は運営のことでここを離れないといけないんだ」
「わかりました。次にお会いする時には、宮廷魔術師になっていると、お約束いたします」
「ああ、君なら必ずできる。僕達の未来のために……いってらっしゃい!」
「はい、いってきます!」
ルーク様は、とても力強くて支える言葉を残して、会場の奥へと去っていった。
さてと、ここまで来てすることなんて無いし、静かなところでゆっくりしたい。
「確か、この会場には小さな中庭があったはず」
建物の中にいるよりも、風にあたった方がきっと落ち着けると思い、すぐに向かって見ると、私と同じ考えを持ったのか、数人ほどが静かに過ごしていた。
その中には、お付きの従者に淹れてもらったお茶を優雅に飲んでいる女性、が……って、あれはマーガレットじゃないの。
「見つかると面倒だし、中に戻りましょう」
「あら、お姉様じゃない! こんなところで会うなんて、奇遇だね~!」
……見つかってしまった。もう最悪……落ち着くために来たと言うのに、落ち着きとは真逆の人間に絡まれるだなんて。
「ハリー様から聞いたよ。お姉様、今回の試験に合格したら、結婚をするんだってね」
「ええ。それが?」
「あははっ、合格するのはあたしなんだから、そんな夢物語は諦めた方がいいでしょ?」
「あなたに決められる謂れはございませんわ」
「そんなピリピリしなくてもいいじゃん。そもそも、お姉様が幸せになるのが無理な話なんだよ? しょせんお姉様は、何の役にも立たないゴミなのだから」
「…………」
明らかにマーガレットは煽りに来ている。それが、私のメンタルを揺すりに来てるのか、憎しみを増幅させるのが駄目なことを知っているのか。
マーガレットのことだから、ただ単に私のことを馬鹿にしたいだけというのが、可能性としては一番高そうだ。
「ていうか、ルーク様って男を見る目が無いんだね。こんな無能を選ぶだなんて。やっぱり、あの杖目的としか思えないなぁ。あたし、優しいし賢いから教えてあげるけど、あの人はお姉様を利用――」
「何も知らないくせに、ルーク様の悪口を言わないで頂戴!!」
相手の口車に乗ってはいけないのはわかっているが、ルーク様のことを馬鹿にされたのが許せなくて……周りのことなんて気にしないで、言いたいことを大声でぶつけると、マーガレットは一瞬だけ怯んだ後、腹を抱えて笑い出した。
「なにをムキになってんの? ばっかみた~い! 下手な大衆娯楽より面白いよ! 芸人として、うちに戻ってこない? 今なら歓迎してあげるよ?」
「っ……!」
駄目だ、これ以上マーガレットと話していたら、心を乱されてしまう。悔しいけど、ここはさっさと退散した方が良さそうだ。
「お断りします。では、私はこれで失礼します」
「えぇ~? なになに、逃げちゃうの? 情けないな~」
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