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第七十六話 新しい家
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無事に引っ越しが終わり、私達は新しい場所に居を構えた。
場所は、遠く離れた地にある、至って普通の森の中だ。ここは時間通りに空模様が変わるから、なんだか少し新鮮な気分だ。
それと小屋についてだけど、ルーク様が全く同じ内装のものを、魔法で用意したのは驚いた。おかげで、あまり引っ越したという感覚がない。
『なんか、これじゃあ引っ越しの面白みが無いわね~』
『引っ越しって、おもしろいのかなぁ~?』
「それは人によるかな。って、君達は付いてきてくれたんだね」
『まあね。なんだかんだでずっと遊びに来てたから、それをしなくなるのは、なんか嫌なのよね。ほら、あいつとの思い出でもあるし』
「…………」
男の子の精霊との別れを思い出し、沈んだ空気になっていると、彼女がわざと明るい声を出した。
『あっ……それでね! この子も暇だからこっちに来たのよ!』
『よろしくなんだなぁ~。名前はねえから、適当に呼んでほしいぞお~』
そうだ、精霊には名前がない。今までは気にしては無いかったのだが、せっかくなら名前はあった方がいい。
「なら、私が二人に名前を付けてあげますわ。そうですね……ピースというのはどうかしら? とても可愛らしくて、おっとりしたあなたにピッタリかと!」
『お~、良いと思うんだなぁ。これからはピースなんだなぁ~』
『それじゃあ、私は? ふふっ、名前なんて長年生きてきて、つけたことなんて無いから、とってもワクワクするわ!』
「そうね……あなたは……セラピアというのはどうかしら?」
『セラピアか……いいじゃない! なんだか可愛いと綺麗が混ざっている感じがして、とっても気にいった!』
気に入ってもらえなかったらどうしようと思ったけど、二人共気に入ってくれたみたいで安心した。
「素敵な名前を貰えてよかったね。ただ、僕達の蜜月の時間の邪魔はしないでね」
『あら、どっかの馬鹿で空気の読めないお子様と違って、その辺の分別は付いてるから大丈夫よ』
『相変わらず、あいつの扱いが悪すぎるぞぉ……』
それは、自業自得のような気もするけど……これもある意味、彼への信頼の証なのかも。
「そういえば、この辺りには精霊はいるのかな?」
『気配は感じるんだなぁ~。でも、恥ずかしがって出てこないんだなぁ~』
『まあ、私達がいた森ほどはいなさそうな感じね』
ここにも精霊は住んでいるのね。せっかくだから、ここに住む精霊とも、仲良く出来たら嬉しいわ。
「それで、これからどうしましょうか? 少しゆっくりしますか?」
「とりあえず、父上の状況を確認したいね。僕がお願いした医者に話を聞きに行こう」
「ハリー様に気づかれてしまわないでしょうか?」
「彼の診療所は、城からかなり遠い場所にあるから、大丈夫だと思うよ。それに、一応変装していくつもりだからね」
「わかりました」
ルーク様は、いつものように空間の裂け目を開いて、目的地に行こうとするが、裂け目が開くことは無かった。
「あはは、癖で裂け目を開こうとしてしまったよ。習慣というのは恐ろしいね」
「裂け目は繋いでいないのですか?」
「残念ながら、繋いでなかったんだ。行ったことはあるから、今から繋げることも出来なくはないが……」
「以前私の家に繋いでくださった時のように、倒れてしまうかもしれませんわ」
「その通りだ。今の僕なら大丈夫かもしれないけど、実際に確かめたわけじゃない。リスクのある行動は避けたいっていうのが本音かな」
「でも、裂け目がないならどうやって向かうのですか? 徒歩?」
「徒歩はちょっとなぁ……恐らくだけど、ここから徒歩で行ったら、到着は何日もかかると思う」
「それは現実的じゃありませんわね……」
特に急ぎじゃなければ、旅行気分で徒歩で行くのもやぶさかではないが、さすがにそんなことをしている余裕はない。
「以前、デートで空を飛んだことがあるだろう? あれで行こうと思う」
「お体は大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。僕の中には、今も君の母上から頂いた精霊の力があるからね。加護はそこまで強くは無いから、魔力の消費はそれなりにあるが、そこは僕の持っている魔力量でカバーできるしね」
「それなら大丈夫そうですわね」
「それじゃあ、出発……の前に、ちょっと変装をしていこう」
そう言うと、ルーク様はパチンっと指を鳴らす。すると、私とルーク様の足元が光り始め、どんどんと体を包みこむ。
「これでよしっと」
光が収まると、ルーク様の姿が少しだけ変わっている。具体的には、前回と同じく、髪色と目の色に加えて、髪型も違う。
ルーク様は、銀の髪と青い瞳だったのが、今は両方とも金色になっている。髪型も、短くさっぱりとした見た目になっている。
自分はどう変わっているのだろうと思い、部屋の鏡を見て見ると、髪も目も金色だったのが、銀色の髪と青い瞳になっている。髪型は特に変わっていないようだ。
これって、ルーク様と色を交換したような形になっているのね。なんだか、ちょっぴり嬉しい。
「さてと、時間が惜しいし……早速出発しようか。みんな、留守番は頼んだよ」
『ご主人、いってらっしゃい!』
『シャーロット、気をつけて!』
『おみやげ期待してるわよ~』
みんなに見送られながら、私とルーク様は新しい家を出る。内装はほとんど変わらないのに、外の景色は違うから、慣れるまでは混乱しそうね。
「ちょっと急ぐから、危なくないようにおんぶでもいいかな?」
「はい、大丈夫ですわ」
本当はお姫様抱っこがよかったが、おんぶの方が安全なのは確かだ。お姫様だっこは、落ち着いたらしてもらえばいいかしら……な、なーんて……。
『おんぶでピッタリくっつくなんて、イチャイチャなんだなぁ~』
「きゃあ!? ピース、いつの間に外に!?」
『ほら、見送りは外まで必要ないから! 私達は、小屋の中からこっそりニヤニヤしてればいいの!』
『そうなのかぁ~? それはごめんなんだぞぉ~』
セラピアにペシペシと叩かれながら謝罪をしたピースは、のそのそとした動きで、小屋に戻っていった。
……なんだか、最後の方に凄く不穏なことが聞こえたような気がする……私達の時間を邪魔しないと言っていたけど、邪魔しないだけで、今までもこっそり見られてるのかも……は、恥ずかしい……。
「まったく困ったものだね……よいしょっと。相変わらずシャーロットは軽いなぁ。なんだか心配になってくるよ。ちゃんと毎日お腹いっぱいになってるかい?」
「これでも、一緒に過ごすようになって、たくさん食べているはずなのですが……」
「食べている時の君の顔、幸せそうで好きなんだよね……っと、駄目だな。気を抜くと、君と沢山おしゃべりがしたくなってしまう。僕の悪い癖だね」
その気持ちはよくわかる。私も、可能ならずっとルーク様とおしゃべりしたり、その……イチャイチャしたりしたいもの。
「それじゃあ、いくよ!」
ルーク様の足元に、緑色の魔法陣が描かれれ、強い風が下から上に向けて吹いた。すると、ルーク様の体は宙に浮き、目的地に向けて飛び始める。
前回は、事前の教えてもらえてなければ、危うくスカートがめくれてしまうところだったが、今回は既におんぶされている状態だから、めくれる心配はなかった。
「二回目の空の旅はどうだい?」
「とっても気持ちいいですわ。この風を切る感覚が、心地いいんですの」
初めて飛んだ時は、驚きと興奮で風を感じる余裕はなかったが、二回目となると多少の余裕があるわね。
「ここからどれくらいかかるのですか?」
「ちょっとわからないかな。夜までには着くと思うけど……」
「歩くよりかは断然早いですわね。あまり無理はせず、休憩を挟みながらお願いしますわ」
「ああ、ありがとう」
こんな浮ついたことを思うのは良くないかもしれないけど……数時間もこうしてルーク様の背中に、合法的に抱きついていられるのって、あまりにも幸せ過ぎるわ……。
場所は、遠く離れた地にある、至って普通の森の中だ。ここは時間通りに空模様が変わるから、なんだか少し新鮮な気分だ。
それと小屋についてだけど、ルーク様が全く同じ内装のものを、魔法で用意したのは驚いた。おかげで、あまり引っ越したという感覚がない。
『なんか、これじゃあ引っ越しの面白みが無いわね~』
『引っ越しって、おもしろいのかなぁ~?』
「それは人によるかな。って、君達は付いてきてくれたんだね」
『まあね。なんだかんだでずっと遊びに来てたから、それをしなくなるのは、なんか嫌なのよね。ほら、あいつとの思い出でもあるし』
「…………」
男の子の精霊との別れを思い出し、沈んだ空気になっていると、彼女がわざと明るい声を出した。
『あっ……それでね! この子も暇だからこっちに来たのよ!』
『よろしくなんだなぁ~。名前はねえから、適当に呼んでほしいぞお~』
そうだ、精霊には名前がない。今までは気にしては無いかったのだが、せっかくなら名前はあった方がいい。
「なら、私が二人に名前を付けてあげますわ。そうですね……ピースというのはどうかしら? とても可愛らしくて、おっとりしたあなたにピッタリかと!」
『お~、良いと思うんだなぁ。これからはピースなんだなぁ~』
『それじゃあ、私は? ふふっ、名前なんて長年生きてきて、つけたことなんて無いから、とってもワクワクするわ!』
「そうね……あなたは……セラピアというのはどうかしら?」
『セラピアか……いいじゃない! なんだか可愛いと綺麗が混ざっている感じがして、とっても気にいった!』
気に入ってもらえなかったらどうしようと思ったけど、二人共気に入ってくれたみたいで安心した。
「素敵な名前を貰えてよかったね。ただ、僕達の蜜月の時間の邪魔はしないでね」
『あら、どっかの馬鹿で空気の読めないお子様と違って、その辺の分別は付いてるから大丈夫よ』
『相変わらず、あいつの扱いが悪すぎるぞぉ……』
それは、自業自得のような気もするけど……これもある意味、彼への信頼の証なのかも。
「そういえば、この辺りには精霊はいるのかな?」
『気配は感じるんだなぁ~。でも、恥ずかしがって出てこないんだなぁ~』
『まあ、私達がいた森ほどはいなさそうな感じね』
ここにも精霊は住んでいるのね。せっかくだから、ここに住む精霊とも、仲良く出来たら嬉しいわ。
「それで、これからどうしましょうか? 少しゆっくりしますか?」
「とりあえず、父上の状況を確認したいね。僕がお願いした医者に話を聞きに行こう」
「ハリー様に気づかれてしまわないでしょうか?」
「彼の診療所は、城からかなり遠い場所にあるから、大丈夫だと思うよ。それに、一応変装していくつもりだからね」
「わかりました」
ルーク様は、いつものように空間の裂け目を開いて、目的地に行こうとするが、裂け目が開くことは無かった。
「あはは、癖で裂け目を開こうとしてしまったよ。習慣というのは恐ろしいね」
「裂け目は繋いでいないのですか?」
「残念ながら、繋いでなかったんだ。行ったことはあるから、今から繋げることも出来なくはないが……」
「以前私の家に繋いでくださった時のように、倒れてしまうかもしれませんわ」
「その通りだ。今の僕なら大丈夫かもしれないけど、実際に確かめたわけじゃない。リスクのある行動は避けたいっていうのが本音かな」
「でも、裂け目がないならどうやって向かうのですか? 徒歩?」
「徒歩はちょっとなぁ……恐らくだけど、ここから徒歩で行ったら、到着は何日もかかると思う」
「それは現実的じゃありませんわね……」
特に急ぎじゃなければ、旅行気分で徒歩で行くのもやぶさかではないが、さすがにそんなことをしている余裕はない。
「以前、デートで空を飛んだことがあるだろう? あれで行こうと思う」
「お体は大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ。僕の中には、今も君の母上から頂いた精霊の力があるからね。加護はそこまで強くは無いから、魔力の消費はそれなりにあるが、そこは僕の持っている魔力量でカバーできるしね」
「それなら大丈夫そうですわね」
「それじゃあ、出発……の前に、ちょっと変装をしていこう」
そう言うと、ルーク様はパチンっと指を鳴らす。すると、私とルーク様の足元が光り始め、どんどんと体を包みこむ。
「これでよしっと」
光が収まると、ルーク様の姿が少しだけ変わっている。具体的には、前回と同じく、髪色と目の色に加えて、髪型も違う。
ルーク様は、銀の髪と青い瞳だったのが、今は両方とも金色になっている。髪型も、短くさっぱりとした見た目になっている。
自分はどう変わっているのだろうと思い、部屋の鏡を見て見ると、髪も目も金色だったのが、銀色の髪と青い瞳になっている。髪型は特に変わっていないようだ。
これって、ルーク様と色を交換したような形になっているのね。なんだか、ちょっぴり嬉しい。
「さてと、時間が惜しいし……早速出発しようか。みんな、留守番は頼んだよ」
『ご主人、いってらっしゃい!』
『シャーロット、気をつけて!』
『おみやげ期待してるわよ~』
みんなに見送られながら、私とルーク様は新しい家を出る。内装はほとんど変わらないのに、外の景色は違うから、慣れるまでは混乱しそうね。
「ちょっと急ぐから、危なくないようにおんぶでもいいかな?」
「はい、大丈夫ですわ」
本当はお姫様抱っこがよかったが、おんぶの方が安全なのは確かだ。お姫様だっこは、落ち着いたらしてもらえばいいかしら……な、なーんて……。
『おんぶでピッタリくっつくなんて、イチャイチャなんだなぁ~』
「きゃあ!? ピース、いつの間に外に!?」
『ほら、見送りは外まで必要ないから! 私達は、小屋の中からこっそりニヤニヤしてればいいの!』
『そうなのかぁ~? それはごめんなんだぞぉ~』
セラピアにペシペシと叩かれながら謝罪をしたピースは、のそのそとした動きで、小屋に戻っていった。
……なんだか、最後の方に凄く不穏なことが聞こえたような気がする……私達の時間を邪魔しないと言っていたけど、邪魔しないだけで、今までもこっそり見られてるのかも……は、恥ずかしい……。
「まったく困ったものだね……よいしょっと。相変わらずシャーロットは軽いなぁ。なんだか心配になってくるよ。ちゃんと毎日お腹いっぱいになってるかい?」
「これでも、一緒に過ごすようになって、たくさん食べているはずなのですが……」
「食べている時の君の顔、幸せそうで好きなんだよね……っと、駄目だな。気を抜くと、君と沢山おしゃべりがしたくなってしまう。僕の悪い癖だね」
その気持ちはよくわかる。私も、可能ならずっとルーク様とおしゃべりしたり、その……イチャイチャしたりしたいもの。
「それじゃあ、いくよ!」
ルーク様の足元に、緑色の魔法陣が描かれれ、強い風が下から上に向けて吹いた。すると、ルーク様の体は宙に浮き、目的地に向けて飛び始める。
前回は、事前の教えてもらえてなければ、危うくスカートがめくれてしまうところだったが、今回は既におんぶされている状態だから、めくれる心配はなかった。
「二回目の空の旅はどうだい?」
「とっても気持ちいいですわ。この風を切る感覚が、心地いいんですの」
初めて飛んだ時は、驚きと興奮で風を感じる余裕はなかったが、二回目となると多少の余裕があるわね。
「ここからどれくらいかかるのですか?」
「ちょっとわからないかな。夜までには着くと思うけど……」
「歩くよりかは断然早いですわね。あまり無理はせず、休憩を挟みながらお願いしますわ」
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