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第五十二話 異質すぎる病気
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体が植物に? なにその病気、聞いたこともないわ。そもそも、人間が植物になってしまうだなんて、想像もつかない。
「あはは、信じられないでしょう? ギルドの人にも、変なイタズラをするなって言われて、依頼書の掲載を断られましたし、薬師に直接お願いしても、適当にあしらわれちゃって!」
「わたしも信じられないかも……」
私もココちゃんもにわかには信じられなくて、二人して顔を合わせながら首を傾げた。
こんな内容では、ギルドも他の薬師も断るのも無理はないと思う。
「だが、嘘じゃないのだろう?」
「はい」
さっきまでの陽気な雰囲気だった方とはまるで別人みたいに、真剣な表情で頷く。
ヨハンさんが、イタズラでこんなことをするとは思えないけど……それでも植物になってしまうなんて信じられない……私が知らないだけで、実際にそういう病気があるのかしら?
これでも、薬を作るために、薬の勉強をしただけじゃなく、病気についてもたくさん勉強したつもりだったんだけどね。
「エリン、ココ。信じられないとは思うが、ヨハンはこんな子供の様な嘘をつく人間じゃない。きっと本当なのだろう」
「オーウェン先輩、信じてくれるんですか!?」
「ああ。ヨハンが何事に対しても真面目で、真摯に向き合う人間だと知っているからな」
「うぅ……オレ、感動です! ぐすっ」
正直に言わせてもらうと、まだイマイチ信じられていないけど、これで信じないでさようならをした結果、患者が植物になってしまったら、私は依頼を受けなかったことを、一生後悔すると思う。
それに、私の目標はたくさんの人を助けることだ。もちろんそれは、ヨハンさん達も例外じゃない。
……よし!
「わかりました、お受けいたします」
「本当ですか!?」
「はい。全力を尽くします」
「よっしゃー! ありがとうございます!」
ヨハンさんは両手を天に向かって突き上げてから、私の両手を取って、上下にブンブンと振った。
……引き受けたのはいいけど、あまりにも症状が特殊過ぎる。私に本当に治せるかどうか……もちろん全力は尽くすけど、ちょっと不安だ。
「そうだ、これは幼馴染の体から落ちた葉っぱなんです。なにかの役に立つかもと思って、持ってきたんです」
「見せて見せて! うーん、見た感じ普通の葉っぱだね。お兄ちゃんは何かわかる?」
「……至って普通の葉っぱだな」
ヨハンさんから葉っぱを受け取ったココちゃんは、料理をしているオーウェン様のところに持っていった。
ココちゃんやオーウェン様と同じく、私も普通の葉っぱにしか見えなかったけど……僅かに不思議な気配を感じた。
気のせいだろうと言われると、そうかも? と思ってしまうくらい弱い気配だけど……確かに何か感じるの。
「エリンお姉ちゃんは、なにか気づいた?」
「えっ? 私も特には……」
考え事をしている間に、ココちゃんが戻って来て、私に葉っぱを見せてくれていた。
ここで不思議な気配のことを言ってもいいけど、まだ確証もないのに変なことを言って、ヨハンさんに期待を持たせるのは申し訳ない。だから、この気配については、もう少しわかってから話そう。
「ヨハンも食べていくだろう?」
「え、いやいや! せっかくの団欒の時間をこれ以上邪魔するわけにはいきませんよ!」
「えー、ヨハンさん食べていかないの!? お兄ちゃんのビーフシチュー、絶品なんだよ!」
「そ、そう言われると……じゅるり……」
「私も賛成です。久しぶりの再会なのですから、ゆっくりしていってください」
「うぅ、ありがとうございます。オーウェン先輩、本当に良い彼女さんを見つけましたね……それに、ココちゃんも立派に育って……」
「ああ、俺には勿体ないくらいな二人だ」
そ、そんな……私なんて、薬を作るくらいしか取り柄がないというのに。むしろオーウェン様の方こそ、私には勿体ないくらい素敵な方だわ。
「まだ完成するのに時間がかかるから、ゆっくりしていてくれ」
「わかりました!」
元気よく返事をしたヨハンさんは、ニコニコしながらお茶を口を付けた。
どうしよう、ずっと黙ってたら居心地が悪くなってしまうわよね。でも、私はヨハンさんとは初対面だから、何を話せばいいのかわからない。
……そうだ、ヨハンさんは遠い地に勤めていたみたいだから、もしかしたらあの花のことを知っているかも!
「ちょっとお聞きしたいんですけど……ヨハンさんは、真っ白な花ってご存じですか? 茎も葉っぱも白い花なんですけど」
「いやぁ、知らないですね……そんなロマンチックな花があるんですか?」
「はい。私、故郷を探しているんですけど……唯一覚えているのが、その花のことなんです」
「なるほど……そんな大事なことなのに、力になれなくて申し訳ない……見つかることを祈ってます!」
「ありがとうございます」
城を出てからずっと情報を集めているのに、いまだに大した情報を手に入れられないなんて……本当に見つかるのだろうか?
いや、諦めちゃダメよね。絶対にお母さんの待っている故郷に帰るって決めたんだから、何度も諦めずに情報を集めなきゃ!
「あはは、信じられないでしょう? ギルドの人にも、変なイタズラをするなって言われて、依頼書の掲載を断られましたし、薬師に直接お願いしても、適当にあしらわれちゃって!」
「わたしも信じられないかも……」
私もココちゃんもにわかには信じられなくて、二人して顔を合わせながら首を傾げた。
こんな内容では、ギルドも他の薬師も断るのも無理はないと思う。
「だが、嘘じゃないのだろう?」
「はい」
さっきまでの陽気な雰囲気だった方とはまるで別人みたいに、真剣な表情で頷く。
ヨハンさんが、イタズラでこんなことをするとは思えないけど……それでも植物になってしまうなんて信じられない……私が知らないだけで、実際にそういう病気があるのかしら?
これでも、薬を作るために、薬の勉強をしただけじゃなく、病気についてもたくさん勉強したつもりだったんだけどね。
「エリン、ココ。信じられないとは思うが、ヨハンはこんな子供の様な嘘をつく人間じゃない。きっと本当なのだろう」
「オーウェン先輩、信じてくれるんですか!?」
「ああ。ヨハンが何事に対しても真面目で、真摯に向き合う人間だと知っているからな」
「うぅ……オレ、感動です! ぐすっ」
正直に言わせてもらうと、まだイマイチ信じられていないけど、これで信じないでさようならをした結果、患者が植物になってしまったら、私は依頼を受けなかったことを、一生後悔すると思う。
それに、私の目標はたくさんの人を助けることだ。もちろんそれは、ヨハンさん達も例外じゃない。
……よし!
「わかりました、お受けいたします」
「本当ですか!?」
「はい。全力を尽くします」
「よっしゃー! ありがとうございます!」
ヨハンさんは両手を天に向かって突き上げてから、私の両手を取って、上下にブンブンと振った。
……引き受けたのはいいけど、あまりにも症状が特殊過ぎる。私に本当に治せるかどうか……もちろん全力は尽くすけど、ちょっと不安だ。
「そうだ、これは幼馴染の体から落ちた葉っぱなんです。なにかの役に立つかもと思って、持ってきたんです」
「見せて見せて! うーん、見た感じ普通の葉っぱだね。お兄ちゃんは何かわかる?」
「……至って普通の葉っぱだな」
ヨハンさんから葉っぱを受け取ったココちゃんは、料理をしているオーウェン様のところに持っていった。
ココちゃんやオーウェン様と同じく、私も普通の葉っぱにしか見えなかったけど……僅かに不思議な気配を感じた。
気のせいだろうと言われると、そうかも? と思ってしまうくらい弱い気配だけど……確かに何か感じるの。
「エリンお姉ちゃんは、なにか気づいた?」
「えっ? 私も特には……」
考え事をしている間に、ココちゃんが戻って来て、私に葉っぱを見せてくれていた。
ここで不思議な気配のことを言ってもいいけど、まだ確証もないのに変なことを言って、ヨハンさんに期待を持たせるのは申し訳ない。だから、この気配については、もう少しわかってから話そう。
「ヨハンも食べていくだろう?」
「え、いやいや! せっかくの団欒の時間をこれ以上邪魔するわけにはいきませんよ!」
「えー、ヨハンさん食べていかないの!? お兄ちゃんのビーフシチュー、絶品なんだよ!」
「そ、そう言われると……じゅるり……」
「私も賛成です。久しぶりの再会なのですから、ゆっくりしていってください」
「うぅ、ありがとうございます。オーウェン先輩、本当に良い彼女さんを見つけましたね……それに、ココちゃんも立派に育って……」
「ああ、俺には勿体ないくらいな二人だ」
そ、そんな……私なんて、薬を作るくらいしか取り柄がないというのに。むしろオーウェン様の方こそ、私には勿体ないくらい素敵な方だわ。
「まだ完成するのに時間がかかるから、ゆっくりしていてくれ」
「わかりました!」
元気よく返事をしたヨハンさんは、ニコニコしながらお茶を口を付けた。
どうしよう、ずっと黙ってたら居心地が悪くなってしまうわよね。でも、私はヨハンさんとは初対面だから、何を話せばいいのかわからない。
……そうだ、ヨハンさんは遠い地に勤めていたみたいだから、もしかしたらあの花のことを知っているかも!
「ちょっとお聞きしたいんですけど……ヨハンさんは、真っ白な花ってご存じですか? 茎も葉っぱも白い花なんですけど」
「いやぁ、知らないですね……そんなロマンチックな花があるんですか?」
「はい。私、故郷を探しているんですけど……唯一覚えているのが、その花のことなんです」
「なるほど……そんな大事なことなのに、力になれなくて申し訳ない……見つかることを祈ってます!」
「ありがとうございます」
城を出てからずっと情報を集めているのに、いまだに大した情報を手に入れられないなんて……本当に見つかるのだろうか?
いや、諦めちゃダメよね。絶対にお母さんの待っている故郷に帰るって決めたんだから、何度も諦めずに情報を集めなきゃ!
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