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第九十六話 無能共が!!
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■カーティス視点■
「はぁ……はぁ……くそっ……まだ薬は出来ないのか……!」
「は、はい……まだ完成には至っておりません」
「この無能共が! 国王が苦しんでいるというのに、なんてザマだ!」
昔から愛用しているベッドに力なく横たわりながら、僕は従者を怒鳴りつけた。
高熱のせいで頭がボーっとするし、眩暈も酷い。そのうえ体中がかゆくて仕方がなく、かゆみが発症している部分の中には、石のように皮膚が硬くなっている部分もある。
色々な医者や薬師に診せたが、誰もこの病気の症状を知らない無能ばかりで、全員が僕の病気は未知の病だと診断した。
しかも、最近はこの病が国民達に爆発的に広がり、死者も出ていると聞いた。国民など生きようが死のうがどうでもいいが、せっかく王になったのに、僕に頭を垂れる下民がいないと優越感に浸れない。
……一体、どうしてこんなことになってしまったんだ? せっかく邪魔な父上が死に、愛しのバネッサとも結婚をしたというのに、その矢先にこれだ。
「バネッサは……バネッサは無事なのか!?」
「奥様は、別室でお休みになられております」
「言葉がわからないのか!? 無事なのかと聞いているんだ、バカが!」
「まだご無事ではありますが……いつ症状が悪化するか……」
「くそがっ……! 専属の薬師は何をしている!」
「必死に治療薬を作っておりましたが、つい先日同じ病で倒れてしまい……」
な、なんだって? どいつもこいつも役立たずしかいないのか、ええい忌々しい!
「そんな無能は城から捨てておけ!」
「し、しかし相手は病人なのですよ!?」
「黙れ! この国の王は僕だ! 王は絶対であり、王は神だ! 処刑されないだけ感謝してほしいくらいだ! わかったら、早く捨ててこい!」
「っ……か、かしこまりま……し……」
「は? おい!」
渋々頷いた従者は、突然糸が切れた人形の様にその場に倒れると、体中をかきむしり始めた。
「か、かゆい……かゆいぃぃ! それに、体が熱い……!!」
「まさか、こいつにもあの病が……一体何が起こっているんだ……! と、とにかくそいつも捨ておけ! もし城の中で発祥した人間は、城から追い出すように! それが無理なら、斬り捨てても構わん!」
「そ、そんな無茶な……!」
「これは命令だ! 僕とバネッサの治療が滞りなく済むために、邪魔な人間は全員排除するんだ!」
さすがにここまで言われれば、頭空っぽの無能集団でもわかったようで、従者たちはぞろぞろと部屋を出て行った。
ふぅ、高熱が出ているのに叫ぶのは、少々体力を使うな……うっ、かゆい……かゆい……!!
「一体このかゆみは何なんだ……!」
硬くなった皮膚をぼりぼりとかいていると、その一部がごっそりと剥がれ落ちた。
その光景を前にした僕は、背筋を凍らせた。もしこのまま肌が硬くなり続けたら、こうやってボロボロと落ちていって……最後には死んでしまうんだと。
「い、いやだぁぁぁぁ! 全てを手に入れたのに、こんなところで死んでたまるかぁぁぁぁ! 誰でもいい、早く僕の病を治してくれ! 報酬なら弾む! だから早く、僕とバネッサを助けろぉぉぉぉ!!」
僕は恐怖から逃れる為に、ベッドの上で暴れまわる。
一国の王がこんなになるなんて、非常事態だろう? わかるだろう? だったらさっさと僕を助けに来い! 世の中の連中は、どうしてこうもグズな無能集団なんだ!?
****
「……はい、正式に依頼を受理いたしました」
無事に港町に到着した私達は、薬屋アトレとしてギルドに向かい、国が出している石化病の依頼を受けた。
さっき職員の人に聞くまで知らなかったんだけど、今回の一件は非常事態ということもあり、ギルドで正式に依頼を受けた人や、アンデルクの王家から召集された人しか治療できないそうだ。
「あの、患者はどこにいるかご存じですか?」
「アンデルクの色々な場所におりますが、特に多いのが王都です。この町から出ている定期便に乗れば、向かうことが出来ます」
「わかりました。ありがとうございます。オーウェン様、行きましょう!」
「ああ」
ギルドの職員から場所を聞いた私達は、急いでギルドの外に出る。以前来た時とは違い、町にはあまり活気がなく、人々の表情は不安に満ちていた。
それも仕方のないことだろう。全く知らない病気が急激に広がり、国から逃げることもできないのだから。
「定期便の乗り場ってどこなんでしょう?」
「確か、ギルドを出て東に行ったところにあるはずだ。以前訪れた時に見たんだ。案内するよ」
「さすがオーウェン様ですね」
オーウェン様に手を引かれて向かうと、丁度馬車が来ていたタイミングだった。
どうやら石化病の影響で、私達以外にお客はいないらしく、私達が乗るとほぼ同時に、王都に向けて出発してくれた。
「エリン……じゃなかった。アトレ、王都に着いたらどうするんだ?」
「とりあえずは、患者の状態を確認したいですね。それと、現地には多くの同業者がいるはずですから、情報を共有してもらおうと思っています」
一応オーウェン様から大雑把に聞いているとはいえ、同業者だからこそわかる部分もあるかもしれない。それを知っていれば、作ってきた薬が効かなった時に、調べる手間を省いて新しい薬を作れるからね。
「お客さん、もしかして医者か薬師なのかい?」
「あ、はい。最近流行っている病気を治すために、王都に行くんです」
「そうなのか。ってことは、新しい国王様とお后様を治しに行くのかい?」
「国王様……?」
今、御者様は確かに国王様って言ったわよね? 確か今のアンデルクの国王様って、カーティス様よね? そのカーティス様まで、石化病になってしまったというの!?
「その話、詳しく聞かせてもらえないだろうか?」
「詳しくって言ってもなぁ……なんか病気を調べにきた連中の中から、優秀な奴を探して王様とお后様を診察させているって聞いたことがあるぜ」
まさか、カーティス様とバネッサまで病に倒れているなんて……一刻も早く薬を作って、事態を収束させなきゃ……!
「はぁ……はぁ……くそっ……まだ薬は出来ないのか……!」
「は、はい……まだ完成には至っておりません」
「この無能共が! 国王が苦しんでいるというのに、なんてザマだ!」
昔から愛用しているベッドに力なく横たわりながら、僕は従者を怒鳴りつけた。
高熱のせいで頭がボーっとするし、眩暈も酷い。そのうえ体中がかゆくて仕方がなく、かゆみが発症している部分の中には、石のように皮膚が硬くなっている部分もある。
色々な医者や薬師に診せたが、誰もこの病気の症状を知らない無能ばかりで、全員が僕の病気は未知の病だと診断した。
しかも、最近はこの病が国民達に爆発的に広がり、死者も出ていると聞いた。国民など生きようが死のうがどうでもいいが、せっかく王になったのに、僕に頭を垂れる下民がいないと優越感に浸れない。
……一体、どうしてこんなことになってしまったんだ? せっかく邪魔な父上が死に、愛しのバネッサとも結婚をしたというのに、その矢先にこれだ。
「バネッサは……バネッサは無事なのか!?」
「奥様は、別室でお休みになられております」
「言葉がわからないのか!? 無事なのかと聞いているんだ、バカが!」
「まだご無事ではありますが……いつ症状が悪化するか……」
「くそがっ……! 専属の薬師は何をしている!」
「必死に治療薬を作っておりましたが、つい先日同じ病で倒れてしまい……」
な、なんだって? どいつもこいつも役立たずしかいないのか、ええい忌々しい!
「そんな無能は城から捨てておけ!」
「し、しかし相手は病人なのですよ!?」
「黙れ! この国の王は僕だ! 王は絶対であり、王は神だ! 処刑されないだけ感謝してほしいくらいだ! わかったら、早く捨ててこい!」
「っ……か、かしこまりま……し……」
「は? おい!」
渋々頷いた従者は、突然糸が切れた人形の様にその場に倒れると、体中をかきむしり始めた。
「か、かゆい……かゆいぃぃ! それに、体が熱い……!!」
「まさか、こいつにもあの病が……一体何が起こっているんだ……! と、とにかくそいつも捨ておけ! もし城の中で発祥した人間は、城から追い出すように! それが無理なら、斬り捨てても構わん!」
「そ、そんな無茶な……!」
「これは命令だ! 僕とバネッサの治療が滞りなく済むために、邪魔な人間は全員排除するんだ!」
さすがにここまで言われれば、頭空っぽの無能集団でもわかったようで、従者たちはぞろぞろと部屋を出て行った。
ふぅ、高熱が出ているのに叫ぶのは、少々体力を使うな……うっ、かゆい……かゆい……!!
「一体このかゆみは何なんだ……!」
硬くなった皮膚をぼりぼりとかいていると、その一部がごっそりと剥がれ落ちた。
その光景を前にした僕は、背筋を凍らせた。もしこのまま肌が硬くなり続けたら、こうやってボロボロと落ちていって……最後には死んでしまうんだと。
「い、いやだぁぁぁぁ! 全てを手に入れたのに、こんなところで死んでたまるかぁぁぁぁ! 誰でもいい、早く僕の病を治してくれ! 報酬なら弾む! だから早く、僕とバネッサを助けろぉぉぉぉ!!」
僕は恐怖から逃れる為に、ベッドの上で暴れまわる。
一国の王がこんなになるなんて、非常事態だろう? わかるだろう? だったらさっさと僕を助けに来い! 世の中の連中は、どうしてこうもグズな無能集団なんだ!?
****
「……はい、正式に依頼を受理いたしました」
無事に港町に到着した私達は、薬屋アトレとしてギルドに向かい、国が出している石化病の依頼を受けた。
さっき職員の人に聞くまで知らなかったんだけど、今回の一件は非常事態ということもあり、ギルドで正式に依頼を受けた人や、アンデルクの王家から召集された人しか治療できないそうだ。
「あの、患者はどこにいるかご存じですか?」
「アンデルクの色々な場所におりますが、特に多いのが王都です。この町から出ている定期便に乗れば、向かうことが出来ます」
「わかりました。ありがとうございます。オーウェン様、行きましょう!」
「ああ」
ギルドの職員から場所を聞いた私達は、急いでギルドの外に出る。以前来た時とは違い、町にはあまり活気がなく、人々の表情は不安に満ちていた。
それも仕方のないことだろう。全く知らない病気が急激に広がり、国から逃げることもできないのだから。
「定期便の乗り場ってどこなんでしょう?」
「確か、ギルドを出て東に行ったところにあるはずだ。以前訪れた時に見たんだ。案内するよ」
「さすがオーウェン様ですね」
オーウェン様に手を引かれて向かうと、丁度馬車が来ていたタイミングだった。
どうやら石化病の影響で、私達以外にお客はいないらしく、私達が乗るとほぼ同時に、王都に向けて出発してくれた。
「エリン……じゃなかった。アトレ、王都に着いたらどうするんだ?」
「とりあえずは、患者の状態を確認したいですね。それと、現地には多くの同業者がいるはずですから、情報を共有してもらおうと思っています」
一応オーウェン様から大雑把に聞いているとはいえ、同業者だからこそわかる部分もあるかもしれない。それを知っていれば、作ってきた薬が効かなった時に、調べる手間を省いて新しい薬を作れるからね。
「お客さん、もしかして医者か薬師なのかい?」
「あ、はい。最近流行っている病気を治すために、王都に行くんです」
「そうなのか。ってことは、新しい国王様とお后様を治しに行くのかい?」
「国王様……?」
今、御者様は確かに国王様って言ったわよね? 確か今のアンデルクの国王様って、カーティス様よね? そのカーティス様まで、石化病になってしまったというの!?
「その話、詳しく聞かせてもらえないだろうか?」
「詳しくって言ってもなぁ……なんか病気を調べにきた連中の中から、優秀な奴を探して王様とお后様を診察させているって聞いたことがあるぜ」
まさか、カーティス様とバネッサまで病に倒れているなんて……一刻も早く薬を作って、事態を収束させなきゃ……!
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