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第四十二話 聖女との再会
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レナード様のお誕生日から数週間後。私は今日もレナード様と共に、瘴気の被害に遭った町や村へと向かっておりました。
ここ最近は、どこに行ってもルナの後始末をしています。怪しまれないように、治療後の経過観察のために調べさせてほしいという体でやっているので、とりあえずは何とかなっておりますわ。
……ルナには、国のお抱えの聖女なのだから、完璧にやってほしいと思うのですが、こうして皆様の苦しみが無くなっているのだから、これは良いことだと自分に言い聞かせております。
「…………」
「レナード様、どうされましたか? 具合でも悪いのですか?」
「……ああ、すまない。ちょっとボーっとしてただけだよ」
「そうですか……」
なんだかここ最近、レナード様がぼんやりとしている時間が増えてきているような気がします。それと……急に私の元を去っていく回数も。
「今向かっている村は、直近で瘴気が発生した地域らしい。かなり田舎ということもあって、国から聖女を要請することもできないそうだ」
「……それなら、一秒でも早く瘴気の浄化と治療をして、皆様に安心してもらいましょう」
「到着いたしました。足元にお気をつけてお降りください」
「ありがとうございます。ではまいりましょう、レナード様」
レナード様の手を借りて馬車を降りると、そこには瘴気に包まれた村……は存在しませんでした。その代わりなのか、村の広場に人だかりが出来ているのを見つけました。
「はいはい、順番に診ますので、並んでくださいね~」
「この声は……!」
「あ、サーシャ!」
人だかりの中心から聞こえた声を確認するために、走って確認をしに行くと、見知った女性の姿がありました。
「ルナ……!」
「あれ、お義姉様だ! あはは、まさかこんなところで再会するなんて、思ってもみませんでしたよ!」
身構える私とは対照的に、ルナは満面の笑みで私の両手を取り、ブンブンと上下に振っていました。
まさか、聖女を要請できない田舎の村で、仕事中のルナと鉢合わせるとは思ってもみませんでした。
でも、ある意味丁度良かったかもしれない。ルナには言いたいことがございましたからね。
「聖女様、その女は誰だべ?」
「わたしの家族ですよっ。ちょっとお話したいので、みなさんここで待っててください」
「わかっただ! オラ達、ここで聖女様を待ってるだ!」
治療の途中だというのに、私との話を優先にしていいのかと感じましたが、見た感じではそれほど重症者はいないので、大丈夫……と思いたいですわ。
「お義姉様とお話するの、嬉しいです! ところで、隣にいる人は?」
「はじめまして、ルナ様。俺はレナード・クラージュと申します」
「あぁ~! あなたがお義姉様の新しい婚約者!? お話は聞いてますよ! 思ったよりイケメンでビックリしちゃいました! わたしの婚約者のエドワード様よりもカッコイイかも……な~んて!」
私から奪った婚約者を話に出すなんて、相変わらず良い趣味をしておりますわね。嫌がらせのつもりかもしれませんが、元々エドワード様のことは好きでもなんでもなかったので、特に気になりませんわね。
「そんなことよりも、あなた一体どういうつもりですの? あなたが治療を行った町や村の方々に、瘴気の残滓が残っておりましたわ!」
「え、瘴気の残滓? 初耳なんですけど?」
「とぼけるつもりですの!? 瘴気の残滓を残しておいたら、後々大変なことになるのは、あなたもわかっているでしょう!? 私が後始末をしたから良かったものの……」
「そう言われても、わたしは何も知りませんよ~。ちゃんと治療も浄化もしてますって」
「ちゃんとやっているなら、あんな結果にはなりません!」
「……は?」
思わずカッとなって、声を荒げてしまった私を、ルナは強く突き飛ばしてきました。
「お義姉様まで、わたしの腕を疑うんですか? わたしは聖女として、一生懸命役目を全うしてるんですけど」
「あなたが頑張っているのは素晴らしいですが、私達は人の命を預かっているんです! いくら頑張っていても、命が失われてしまったら意味がありませんわ! だから、私みたいに一人でも多く人を助けようと頑張らないといけませんの!」
「はー、うっざ……バケモノの分際で、偉そうに説教するなんて、随分と偉くなりましたね?」
ルナの本性を見たのは、随分と久しぶりです。教会で一緒に住んでいた時は、毎日のように罵詈雑言を浴びせさせられ、家を追い出される時も、毒を吐かれましたっけ。
「なるほど、君とは初対面だが、本当にサーシャと同じくらいの実力の持ち主なのか、疑うくらいだな」
「はぁ!? わたしは一流の聖女なのよ! あなたに何がわかるんですか!」
「さあね。あなたについては、何も知らない。だが、俺は絶対にサーシャの方が優れていると断言する」
ここに来るまで、ずっと自信たっぷりな動作をしていたルナだったが、レナード様の強烈な一言がよほど効いたのか、顔を真っ赤にしてワナワナと震えています。
「……人の命、人の未来……そういったものを、聖女として守らなければなりません。だというのに、あなたはどこでも中途半端、その割に自分の名前を残すのだけは得意ときた。ふざけてるおつもりなら、さっさと今の座を降りて、サーシャのような素晴らしい聖女を見つけることをお勧めしますよ」
レナード様に色々と言われたルナは、猫を被ってめそめそと泣くだろうと思ってましたが……今のルナは、激昂しておりました。
「さっきは欲しいと思ったけど……わたしを持ち上げられない所か、説教する馬鹿なんて、ムカつくからいらない。だから消えて、ばいばーい」
「そうやって拗ねるのが、才能が無いと言っているのがわかりませんか? サーシャならそんなことは絶対に言いません」
「ぐだぐだぐだぐだ……うっせーんだよ! もういい、私に逆らったことを後悔させてやる」
何かしてくるのかと思って身構えていると、ルナは大きく息を吸い込み――
「みなさ~ん! この赤い目のバケモノ女が、わたしを襲おうとしてるんです~! 助けてくださ~い!!」
ここ最近は、どこに行ってもルナの後始末をしています。怪しまれないように、治療後の経過観察のために調べさせてほしいという体でやっているので、とりあえずは何とかなっておりますわ。
……ルナには、国のお抱えの聖女なのだから、完璧にやってほしいと思うのですが、こうして皆様の苦しみが無くなっているのだから、これは良いことだと自分に言い聞かせております。
「…………」
「レナード様、どうされましたか? 具合でも悪いのですか?」
「……ああ、すまない。ちょっとボーっとしてただけだよ」
「そうですか……」
なんだかここ最近、レナード様がぼんやりとしている時間が増えてきているような気がします。それと……急に私の元を去っていく回数も。
「今向かっている村は、直近で瘴気が発生した地域らしい。かなり田舎ということもあって、国から聖女を要請することもできないそうだ」
「……それなら、一秒でも早く瘴気の浄化と治療をして、皆様に安心してもらいましょう」
「到着いたしました。足元にお気をつけてお降りください」
「ありがとうございます。ではまいりましょう、レナード様」
レナード様の手を借りて馬車を降りると、そこには瘴気に包まれた村……は存在しませんでした。その代わりなのか、村の広場に人だかりが出来ているのを見つけました。
「はいはい、順番に診ますので、並んでくださいね~」
「この声は……!」
「あ、サーシャ!」
人だかりの中心から聞こえた声を確認するために、走って確認をしに行くと、見知った女性の姿がありました。
「ルナ……!」
「あれ、お義姉様だ! あはは、まさかこんなところで再会するなんて、思ってもみませんでしたよ!」
身構える私とは対照的に、ルナは満面の笑みで私の両手を取り、ブンブンと上下に振っていました。
まさか、聖女を要請できない田舎の村で、仕事中のルナと鉢合わせるとは思ってもみませんでした。
でも、ある意味丁度良かったかもしれない。ルナには言いたいことがございましたからね。
「聖女様、その女は誰だべ?」
「わたしの家族ですよっ。ちょっとお話したいので、みなさんここで待っててください」
「わかっただ! オラ達、ここで聖女様を待ってるだ!」
治療の途中だというのに、私との話を優先にしていいのかと感じましたが、見た感じではそれほど重症者はいないので、大丈夫……と思いたいですわ。
「お義姉様とお話するの、嬉しいです! ところで、隣にいる人は?」
「はじめまして、ルナ様。俺はレナード・クラージュと申します」
「あぁ~! あなたがお義姉様の新しい婚約者!? お話は聞いてますよ! 思ったよりイケメンでビックリしちゃいました! わたしの婚約者のエドワード様よりもカッコイイかも……な~んて!」
私から奪った婚約者を話に出すなんて、相変わらず良い趣味をしておりますわね。嫌がらせのつもりかもしれませんが、元々エドワード様のことは好きでもなんでもなかったので、特に気になりませんわね。
「そんなことよりも、あなた一体どういうつもりですの? あなたが治療を行った町や村の方々に、瘴気の残滓が残っておりましたわ!」
「え、瘴気の残滓? 初耳なんですけど?」
「とぼけるつもりですの!? 瘴気の残滓を残しておいたら、後々大変なことになるのは、あなたもわかっているでしょう!? 私が後始末をしたから良かったものの……」
「そう言われても、わたしは何も知りませんよ~。ちゃんと治療も浄化もしてますって」
「ちゃんとやっているなら、あんな結果にはなりません!」
「……は?」
思わずカッとなって、声を荒げてしまった私を、ルナは強く突き飛ばしてきました。
「お義姉様まで、わたしの腕を疑うんですか? わたしは聖女として、一生懸命役目を全うしてるんですけど」
「あなたが頑張っているのは素晴らしいですが、私達は人の命を預かっているんです! いくら頑張っていても、命が失われてしまったら意味がありませんわ! だから、私みたいに一人でも多く人を助けようと頑張らないといけませんの!」
「はー、うっざ……バケモノの分際で、偉そうに説教するなんて、随分と偉くなりましたね?」
ルナの本性を見たのは、随分と久しぶりです。教会で一緒に住んでいた時は、毎日のように罵詈雑言を浴びせさせられ、家を追い出される時も、毒を吐かれましたっけ。
「なるほど、君とは初対面だが、本当にサーシャと同じくらいの実力の持ち主なのか、疑うくらいだな」
「はぁ!? わたしは一流の聖女なのよ! あなたに何がわかるんですか!」
「さあね。あなたについては、何も知らない。だが、俺は絶対にサーシャの方が優れていると断言する」
ここに来るまで、ずっと自信たっぷりな動作をしていたルナだったが、レナード様の強烈な一言がよほど効いたのか、顔を真っ赤にしてワナワナと震えています。
「……人の命、人の未来……そういったものを、聖女として守らなければなりません。だというのに、あなたはどこでも中途半端、その割に自分の名前を残すのだけは得意ときた。ふざけてるおつもりなら、さっさと今の座を降りて、サーシャのような素晴らしい聖女を見つけることをお勧めしますよ」
レナード様に色々と言われたルナは、猫を被ってめそめそと泣くだろうと思ってましたが……今のルナは、激昂しておりました。
「さっきは欲しいと思ったけど……わたしを持ち上げられない所か、説教する馬鹿なんて、ムカつくからいらない。だから消えて、ばいばーい」
「そうやって拗ねるのが、才能が無いと言っているのがわかりませんか? サーシャならそんなことは絶対に言いません」
「ぐだぐだぐだぐだ……うっせーんだよ! もういい、私に逆らったことを後悔させてやる」
何かしてくるのかと思って身構えていると、ルナは大きく息を吸い込み――
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