入れ替わり転生〜生まれ変わったら、私を殺した婚約者の最愛になっていました〜

婚約者候補はどうなったのでしょうか

　ふと思い出しました。

　確か聖女様のお体に入っていた時、お父様にお願いしました。

　ジュリアーノ王太子殿下に、新たな婚約者をと。

　そしてお父様は、ファイス侯爵家のレイラ様か、エクセル侯爵家のアンディ様、カウント伯爵家のローラ様を候補に挙げられていたはずです。

　無事にウェンディの婚約は解消されましたけど、どうして婚約者が決まっていなかったのでしょうか。

「おじ様。確か、私が聖女様のお姿になっていた時に、お父様に王太子殿下に新たな婚約者をとお話したはずだったと思うのですが。何故、メトルファン皇国に婚約のお話が来たのでしょうか？」

「ああ、そのことか。実は、ファイス侯爵令嬢とエクセル侯爵令嬢が揉めてね。止めに入ったカウント伯爵令嬢が怪我をしたんだ。そのことで、カウント伯爵が婚約者の候補から下りると。陛下もこのことを重く見られて、候補は白紙とされたんだ」

「それでローラ様のお怪我は？」

「幸いにも大事には至らなかった」

　それは本当に幸いでした。
未婚のご令嬢に痕に残る傷なんて、婚約に差し障りますもの。

　その傷を盾に王太子殿下との婚約を求めることもできたでしょうに、そうなさらなかったということは、カウント伯爵家は婚約に乗り気ではなかったということなのでしょう。

「それで、侯爵家のお二人は？」

「陛下のお怒りがすさまじく、二人とも規律の厳しい修道院行きとなった」

「それは・・・でも、やむ得ないことですわ」

　しかし、それで納得しました。

　そのようなことがあったのでは、年齢の離れたご令嬢ですら婚約者になることを辞退するでしょう。

「しかし、そのようなことがあったのなら、確かに離れたメトルファン皇国に婚約の打診が来るはずですわ」

　ウェンディのこと。聖女様のこと。そして、ローラ様のこと。

　そんな醜聞まみれの王太子殿下の婚約者に、誰がなりたいと思うでしょうか。

「ああ。国王陛下は、これを逃せば後がないと王太子殿下にもキツく言い渡しているらしい。今の殿下は聖女様を失ったこと、もう後がないこと、そしてどこか聖女様とウェンディ嬢を思い出させるユエリティ皇女殿下の存在に揺らいでいる。必ず成し遂げることができるはずだ」

「ええ、おじ様。私はたとえ王太子殿下に悪女と罵られようと、必ずウェンディに戻ってみせます」

「ああ。そのためにできる限りの助力をしよう。ウェンディ嬢は、もう私たちにとっても娘と同じだ。何でも必要なことは言って欲しい」

「ありがとうございます、おじ様、おば様」

　成し遂げなければなりません。心を強く持たなくては。