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時間をかけたら変わるのかしら
「少し話したい」
王太子殿下にそうおっしゃられて、私たちは王宮にある中庭に向かいました。
一応、私たちは婚約者なので部屋で二人きりになることに問題はありませんが、殿下は私の気持ちを考慮してくださったみたいです。
「父上がすまなかった」
中庭にある東屋に着くと、殿下はそう言って頭を下げられました。
「おやめください。王太子殿下が悪いわけではありません。それに、国王陛下のお考えも、間違いなわけではないと思います。ただ、私が受け入れることが出来ないだけです」
あのようなことがなければ、私も受け入れたかもしれません。
実際、一度目は国王陛下やお父様の意見に従いました。
王太子殿下が、毅然とした態度で接してくださるのなら、今回は大丈夫かもしれません。
ですが、私はもうそんな我慢をしたくないのです。
陛下にお伝えしたとおり、王太子殿下が聖女様をお支えすることに文句はありません。
ただ、私との婚約を解消して欲しいだけです。
「・・・ウェンディ嬢は、もう僕と婚約していることは嫌?」
「・・・正直に言うと、よくわかりません。今の殿下が、過去の行動を後悔して正しくあろうとしてくださっていることは、理解しています。でも、声が聞こえるんです。過去の、殿下を恨んで死んでいった私が言うんです。後悔したからって簡単に許しても良いのかって」
王太子殿下を、嫌いになったわけではありません。
王太子殿下と聖女様のお気持ちが愛だというのなら、私は殿下を愛してはいません。
一度目も愛してはいませんでしたが、婚約者として敬愛できればと思っていましたし、聖女様が現れるまではそれなりにお慕いしていたと思います。
ですが、あの時・・・
私は本当に殿下を憎みました。
殿下だけでなく、聖女様も、国王陛下も、お父様も、全てを憎いと思いました。
あの時の気持ちが、後悔したからといって簡単に忘れても良いのかと私に言うのです。
王太子殿下は、私の答えに小さく息を吐かれました。
「そうだな、その通りだ。簡単に許せるわけがない」
「王太子殿下は・・・もう聖女様にお気持ちはないのですか?あれほどまでに・・・あれほどまでに愛し合っていた方なのに」
私を殺してまで、とは言えませんでした。
傷口に塩を塗るような真似を、するような人間になりたくなかったのです。
「ユエのことは・・・いや、聖女様のことは好きだと思っていた。彼女の奔放さが眩しくて、僕は目が眩んでいたのだと思う。だが、ユエリティ皇女殿下・・・ウェンディ嬢に貴族としての在り方を示されて、僕は自分の過ちに気付いたんだ」
王太子殿下にそうおっしゃられて、私たちは王宮にある中庭に向かいました。
一応、私たちは婚約者なので部屋で二人きりになることに問題はありませんが、殿下は私の気持ちを考慮してくださったみたいです。
「父上がすまなかった」
中庭にある東屋に着くと、殿下はそう言って頭を下げられました。
「おやめください。王太子殿下が悪いわけではありません。それに、国王陛下のお考えも、間違いなわけではないと思います。ただ、私が受け入れることが出来ないだけです」
あのようなことがなければ、私も受け入れたかもしれません。
実際、一度目は国王陛下やお父様の意見に従いました。
王太子殿下が、毅然とした態度で接してくださるのなら、今回は大丈夫かもしれません。
ですが、私はもうそんな我慢をしたくないのです。
陛下にお伝えしたとおり、王太子殿下が聖女様をお支えすることに文句はありません。
ただ、私との婚約を解消して欲しいだけです。
「・・・ウェンディ嬢は、もう僕と婚約していることは嫌?」
「・・・正直に言うと、よくわかりません。今の殿下が、過去の行動を後悔して正しくあろうとしてくださっていることは、理解しています。でも、声が聞こえるんです。過去の、殿下を恨んで死んでいった私が言うんです。後悔したからって簡単に許しても良いのかって」
王太子殿下を、嫌いになったわけではありません。
王太子殿下と聖女様のお気持ちが愛だというのなら、私は殿下を愛してはいません。
一度目も愛してはいませんでしたが、婚約者として敬愛できればと思っていましたし、聖女様が現れるまではそれなりにお慕いしていたと思います。
ですが、あの時・・・
私は本当に殿下を憎みました。
殿下だけでなく、聖女様も、国王陛下も、お父様も、全てを憎いと思いました。
あの時の気持ちが、後悔したからといって簡単に忘れても良いのかと私に言うのです。
王太子殿下は、私の答えに小さく息を吐かれました。
「そうだな、その通りだ。簡単に許せるわけがない」
「王太子殿下は・・・もう聖女様にお気持ちはないのですか?あれほどまでに・・・あれほどまでに愛し合っていた方なのに」
私を殺してまで、とは言えませんでした。
傷口に塩を塗るような真似を、するような人間になりたくなかったのです。
「ユエのことは・・・いや、聖女様のことは好きだと思っていた。彼女の奔放さが眩しくて、僕は目が眩んでいたのだと思う。だが、ユエリティ皇女殿下・・・ウェンディ嬢に貴族としての在り方を示されて、僕は自分の過ちに気付いたんだ」
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