74 / 88
素敵な出会いです
しおりを挟む
「とても良い物が買えて良かったわ」
私は棚にある髪飾りを眺めながら、笑みが浮かびました。
お父様にはお洒落なカフスボタン、サンディには最近流行りのガラスのペンを購入しました。
文官のお仕事で得たお金はなくなってしまいましたけど、とてもいい買い物が出来たと思いますわ。
「きっと、喜んでいただけますよ」
店員さんが包んでくれている間、最後まで迷って選ばなかった方の髪飾りを見ながら、侍女のラミアと話していると・・・
「ごめん、それ買うのかな?」
突然、声をかけられました。
振り返ると、白金の髪と瞳をされた男性がこちらを見ていました。
「ええと、その髪飾りを買うのかな?」
「あ、いえ、ごめんなさい。私はもう買いましたの」
私がジッと見ていたことで、この髪飾りを買うのかと思われたのですね。
「良かった。妹が欲しがっていた雰囲気に似てるから、買いたいと思ったんだ」
「まぁ。お優しいお兄様ですのね。きっと妹様も喜ばれますわ。私も、こちらにするか迷いましたの」
「そうなんだ。君の選んだのはどんな感じなの?」
「私の選んだのは、深紅の花に白い小花がたくさんの髪飾りですわ。華やかな感じが気に入りましたの」
もうひとつの選ばなかった方は、小さな色とりどりの宝石が散りばめられたもので、その宝石が木の枝に咲く花のように見えるのです。
最後まで迷ったのですけど、お母様には華やかさのある深紅の花の方が似合うと思って、あちらを選びましたの。
「へぇ。それも素敵だけど、妹には大人すぎるかな」
その方は、私が選ばなかった方の髪飾りを購入されるようでした。
「お嬢様」
「包んでいただけたようですわ。それでは、失礼いたします」
「あ・・・急に声をかけて申し訳なかった。その・・・」
「いえ、私が選ばなかった髪飾りが、妹様が望まれていたもので良かったですわ。喜んでくださるとよろしいですね」
ラミアが品物を持って声をかけて来たので、私は男性に頭を下げるとお店を後にしました。
馬車に乗り込むと、ラミアが不思議そうに話しかけてきます。
「お嬢様が初対面のご令息と親しくお話されるなんて、お珍しいですね」
「そういえばそうね。でも、なんだか悩んで選ばなかった髪飾りが素敵な贈り物になると知って嬉しかったのよ」
それに・・・
なんだか、もっと色んなことをお話したいと思わせるお方でした。
私は王太子殿下の婚約者ですので、他のご令息とお話するときは、細心の注意を払っているのですけど・・・
そんなことを考えないくらい、楽しい会話でしたわ。
私は棚にある髪飾りを眺めながら、笑みが浮かびました。
お父様にはお洒落なカフスボタン、サンディには最近流行りのガラスのペンを購入しました。
文官のお仕事で得たお金はなくなってしまいましたけど、とてもいい買い物が出来たと思いますわ。
「きっと、喜んでいただけますよ」
店員さんが包んでくれている間、最後まで迷って選ばなかった方の髪飾りを見ながら、侍女のラミアと話していると・・・
「ごめん、それ買うのかな?」
突然、声をかけられました。
振り返ると、白金の髪と瞳をされた男性がこちらを見ていました。
「ええと、その髪飾りを買うのかな?」
「あ、いえ、ごめんなさい。私はもう買いましたの」
私がジッと見ていたことで、この髪飾りを買うのかと思われたのですね。
「良かった。妹が欲しがっていた雰囲気に似てるから、買いたいと思ったんだ」
「まぁ。お優しいお兄様ですのね。きっと妹様も喜ばれますわ。私も、こちらにするか迷いましたの」
「そうなんだ。君の選んだのはどんな感じなの?」
「私の選んだのは、深紅の花に白い小花がたくさんの髪飾りですわ。華やかな感じが気に入りましたの」
もうひとつの選ばなかった方は、小さな色とりどりの宝石が散りばめられたもので、その宝石が木の枝に咲く花のように見えるのです。
最後まで迷ったのですけど、お母様には華やかさのある深紅の花の方が似合うと思って、あちらを選びましたの。
「へぇ。それも素敵だけど、妹には大人すぎるかな」
その方は、私が選ばなかった方の髪飾りを購入されるようでした。
「お嬢様」
「包んでいただけたようですわ。それでは、失礼いたします」
「あ・・・急に声をかけて申し訳なかった。その・・・」
「いえ、私が選ばなかった髪飾りが、妹様が望まれていたもので良かったですわ。喜んでくださるとよろしいですね」
ラミアが品物を持って声をかけて来たので、私は男性に頭を下げるとお店を後にしました。
馬車に乗り込むと、ラミアが不思議そうに話しかけてきます。
「お嬢様が初対面のご令息と親しくお話されるなんて、お珍しいですね」
「そういえばそうね。でも、なんだか悩んで選ばなかった髪飾りが素敵な贈り物になると知って嬉しかったのよ」
それに・・・
なんだか、もっと色んなことをお話したいと思わせるお方でした。
私は王太子殿下の婚約者ですので、他のご令息とお話するときは、細心の注意を払っているのですけど・・・
そんなことを考えないくらい、楽しい会話でしたわ。
158
あなたにおすすめの小説
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
聖女の妹、『灰色女』の私
ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。
『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。
一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる