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その後の元婚約者②〜シリウス視点〜
僕が愛しているのはジュエルだけだ。
あのルビーのような瞳も、柔らかな声も、強く抱きしめたら手折れそうな華奢な体も、全てが愛しい。
娼館に飽きた僕は自分の欲の発散に、エミリ・コンフォート嬢を使うことにした。
彼女は、コンフォート公爵が使用人に手をつけて産ませた庶子だ。
ずっと平民として暮らしていて、先日公爵が引き取ったばかりだった。
平民として暮らして来たせいだろう。
彼女は人との距離が近い。
ローゼン王国では、婚約者以外の異性との触れ合いは、ダンスですら適度な距離が求められる。
ただし貴族は、だ。
だから、平民だった彼女は自然に僕の腕や体に触れる。
それが新鮮だった。
僕から触れたいとは思わないが、エミリ嬢から触れられることに嫌悪感はない。
後ろに、公爵か公爵夫人の思惑が見え隠れしていたが、本人は単純に僕に好意を抱いているせいだろう。
だから・・・
だから、甘い言葉をかけてやったんだ。
嫌な言葉をかけるより、お互い気持ち良く過ごせるだろう?
「ジュエル・・・ジュエルが僕の婚約者でしょう?彼女は僕を想ってくれているのですっ!なのに、他の令嬢と婚約なんて!」
「その想ってくれている令嬢を裏切っておいて、よくその言葉が出るな」
「裏切ってなどっ!僕はジュエルを誰よりも愛していますっ!」
「なら、何故他の令嬢と口づけなどした?お前がコンフォート公爵令嬢とそれ以上の関係であることは、影の調査で分かっている。何度もリビエラ嬢を裏切っておいて愛している?ふざけるな!」
父上のその言葉に、僕は真っ青になった。
影とは、国王陛下専属の諜報部隊のことだ。
彼らの顔を知っているのは国王陛下だけで、王妃殿下である母上はもちろん、僕も知らない。
彼らは陛下の命令にのみ従い、その職務をこなす。
まさか、父上は僕のことを調べさせた?
血の気が引いた顔で見上げると、父上は大きくため息を吐いた。
「リビエラ伯爵から話を聞いて、すぐに影を動かした。彼やご令嬢が嘘をつくとは思えないが、ちゃんとした証拠を残さないとお前が認めないだろうと思ってな。リビエラ嬢にバレていないと思っていたお前は、浅はかにも逢瀬を繰り返した」
「それ、は・・・」
一度覚えた欲は、どうしてもジュエルに触れたいと訴えるから・・・
だから、向こうの誘いに乗っただけなんだ。
「お前が何を言おうと後悔しようと、リビエラ嬢との婚約は解消。お前がコンフォート公爵令嬢と愛し合っていることで、リビエラ嬢が快く身を引いたという形を取る。これは決定事項だ!」
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