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その時までは②〜国王視点〜

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「もう二度と陽の下に出すことはない。長い間本当に辛い思いをさせた」

「・・・ジュエルは、辛い王太子妃教育の中でも、陛下の優しさが支えだったと言っていました。娘にあれほど執着していた殿下が、あのようなことをなさるとは本当に残念です。ですが、なかったことにはできません。新たな王太子殿下とその婚約者のご令嬢と共に、王家をお支えいたします」

「・・・ありがとう、リビエラ伯爵。夫人やご令嬢たちにもよろしく伝えてくれ」

 リビエラ伯爵が退出し、国王の執務室に一人になる。

 ずっと連れ添った王妃も、優秀で優しく自慢だった王太子息子も、真面目で可愛らしく頑張り屋の息子の婚約者も、全て失った。

 虚無感で、椅子から立ち上がれそうになかった。

 コンコン!

「陛下・・・父上、よろしいですか?」

 コンフォート公爵家の本来の嫡男、元コンフォート公爵夫人の実家に養子に出されていたサリオンが顔を覗かせる。

 元コンフォート公爵夫人によく似た、優しい面立ちの焦茶色の髪と瞳をしたまだ少年と呼べるは、照れくさそうに微笑んだ。

「セーラが来ているのです。一緒にお茶をしたくてお誘いに来ました」

 セーラ・ホリグラフ侯爵令嬢。
サリオンの元々の婚約者で、二人はとても仲睦まじい。

「わざわざ誘いに来てくれたのか。ありがとう」

 きっと、シリウスたちのことを聞いてを予想したのだろう。

 そうだな。まだ、座り込んでいるわけにはいかない。

 サリオンに、ちゃんと国王としての冠を引き継ぐまでは。

 中庭に共に歩きながら、この少年も複雑な環境にあったのだと改めて思う。

 シリウスさえ、愚かな行為をせずリビエラ嬢を愛し続けていたら、サリオンは元コンフォート公爵夫人の実家を継いでいただろう。

 実家は侯爵家だが、公爵でいることが幸せだとは限らない。

 現に、コンフォート公爵は婚約時代の浮気がサリオンが誕生した後に発覚し、夫人に家庭内別居をされ、嫡男を養子に出すハメになった。

 平民として暮らしていたということもあるだろうが、エミリ・コンフォート公爵令嬢は間違いなく父親の血を引いている。

 彼女には、シリウスが毒杯を飲んだ後二年は喪に服してもらう。

 その後、修道院に行くか平民になるかは本人次第だ。

 修道院に行けば、二度と外に出ることは叶わない。

 だが、ちゃんと務めを果たせば食事も出るし、寝床の不安もない。

 平民になれば、ある意味自由に見えるが、母親ももういないエミリは自分の手で稼がなければ食事も寝床も手に入らない。

 男を誑かせばなんとかなるかもしれないが、エミリを本気で愛して夫婦になってくれる男と会える確率は一割もないだろう。
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