嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな

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妊娠

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「ジュエル!大丈夫かっ?」

 お部屋に飛び込んできた旦那様であるハデス様に、ベッドの中でクッションを背にもたれていた私は、驚いて目を丸くした。

「ハデス様?びっくりしましたわ。お帰りなさいませ。お仕事お疲れ様でした」

「そんなのどうでもいい!どこが悪いんだ?医者は?」

 ハデス様は、控えているハンナに掴みかかりそうな勢いを見せていた。

 そういえば私、病気で寝込んだことなかったわ。

 今まで、具合が悪くて寝込んだこともなかった私だもの。

 そりゃ、ハデス様も心配するわよね。

 そういえば初めて乗った船でも、最初の夜以外は船酔いもしなかったわ。

「ハデス様、落ち着いて下さいませ」

「だがっ!」

「その・・・病気ではないのです」

 少し顔色は悪いかもしれないけど、それは今までの好物でも吐き気を催したりするからであって、別段体調は悪くないのよ。

 安静にと言われて、ハンナたちの圧に勝てなかっただけで。

「病気では、ない?」

「その・・・つっ、悪阻で吐き気がするので、お医者様に悪阻が治るまでは安静にと言われて」

「つわ・・・り?」

「赤ちゃんを授かったのです」

 ハデス様が喜んでくれるか不安で、小声になってしまった。

 いいえ。
ハデス様が嫌がるとは思ってないけど。

「ジュエル・・・」

「ハデス様?」

「ジュエル、本当に?俺たちの赤ん坊が?」

 壊れ物を扱うように、私にそっと手を伸ばしてくる。

 私はその手に頬を擦り付けて、両手でハデス様の手を包んだ。

「ハデス様、喜んでくださいますか?」

「当たり前だ!ジュエル・・・ジュエル、本当にありがとう。俺、俺が親になるなんて・・・」

 ハデス様は、ご両親から愛情を与えていただけなかった。

 ご本人は平気だとおっしゃっていたけど、そう言えるようになるまで、きっと何度も辛い思いをされたはず。

 だから・・・
私がハデス様の家族になって、ハデス様にたくさんたくさん愛情を捧げるの。

「悪阻は辛いのだろう?大丈夫か?」

「しばらくは悪阻は続くそうです。今は来ていただいてもあれなので、しばらく経ってからお母様に来ていただくようにお手紙を出しました。ハンナたちもお医者様に色々と聞いてくれたので、心配いりません」

「どうか安静にしていてくれ。必要なものや欲しいものがあれば、なんでも言って欲しい」

「ふふっ。大丈夫ですわ。ちょっと匂いに敏感なので、ご一緒に食事は無理かもですが、夜はお部屋に来て下さいませ」

 お仕事から戻ってすぐに私の部屋に駆けつけたハデス様は、私の額にキスを落とすと、急いで湯浴みとお食事に向かわれた。

 
 
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