あなたなんて大嫌い

みおな

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第22話

 ニケがかぶりを振っても、ラギトはニケの手を離そうとしない。

 実を言うと、ラギトはずっとニケのことが好きだった。
 初めて興味を抱いたのは、父親である国王陛下から祖先の話を聞いたときだ。

 ビスクランド侯爵家。
当時、ケルドラード皇国で宰相をしていた侯爵の夫人が、父の高祖父の従兄妹だったらしい。

 ビスクランド家は優秀な家系らしく、フォレスト王国はもちろんのこと、ケルドラード皇国とも血縁関係を築いている。

 その、遠い遠い血の繋がりの先、セラフィム子爵家の令嬢の絵姿を母親から見せられた時、恋に落ちたのだと思う。

 そのご令嬢ニケ嬢は、母が言うにはビスクランド家の至宝と呼ばれたアリス・ビスクランド伯爵令嬢によく似た容姿だそうで、銀の髪と菫色の瞳がとても愛らしい美少女だった。

 本人は、子爵家の娘だからと言っているが、兄嫁はフォレスト王国の王家の血を引いているし、大体子爵家なのは陞爵を受け入れないからだ。

 フォレスト王国のビスクランド伯爵家もそうだが、全く陞爵を受け入れないのだと父親である国王陛下もぼやいていた。

 だから子爵家だと軽視するのは、マグエルやエリンのような馬鹿くらいだ。

 初めて絵姿を見た時、一目惚れしたニケ嬢と婚約したいと父に願い出たのだが、タッチの差でロートレック侯爵家との婚約が成ってしまった。

 あの時の、ラギトのショックは言葉にしようがない。
 しばらくは王太子としての仕事も手につかず、部屋に閉じこもる始末だった。

 だが、そんなラギトが立ち直るきっかけを与えたのも、ニケだった。

 兄のノクスと共に王宮に訪れたニケが、ラギトの部屋の真下にある庭で、兄の問いかけに答えているのを、ラギトは聞いたのだ。

 自分の役目を全うしない人間をどう思うか?

 ニケの答えは単純明快で、軽蔑する、だった。

 人の話し声で、何気なく窓から下を見たラギトは、そのニケの姿を見て固まり、そしてその話の内容に、動けなくなった。

 あとで思えば、おそらく部屋から出ようとしない息子に手を焼いた父と母が、セラフィム子爵家に頼んでニケを王宮へと連れてきたことがわかる。

 だがあの時は、初恋の相手のニケに、軽蔑すると言われたことがショックで、思わず泣いてしまった。

 それでも、ニケと一緒になれなくても、せめて軽蔑される存在にはなりたくない。
 ニケが助けが必要な時は、手を差し伸べられる人間でありたい。

 そう思って、ラギトは王太子としての責務を全うしてきた。

 そんなラギトに舞い込んだニケの婚約解消の知らせに、ラギトが躊躇うわけがなかった。

 今度こそ、ニケを婚約者に。
絶対に譲れない、強い思いでセラフィム子爵家を訪れていたのだから。
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