拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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婚約者様?一応います。

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 私、クロエ・ルーベンスは、子爵令嬢だ。

 このアルトナー国において珍しい黒髪黒目の私には、一年前に婚約した方がいる。

 アルトナー王国は女王制の国で、現女王陛下のお子様も姫君が三人いらっしゃる。

 王太女殿下の婚約者は、コンラッド公爵家の嫡男の方で、王太女殿下の三歳年上だ。

 実は政略ではなく相思相愛。

 コンラッド公爵家は次男のクライヴ様が継ぐことになり、そのクライヴ様の婚約者にと王家からの指示で決まった婚約だった。

 そう。

 王家からの指示なのだけど。

 公爵家を継ぐくらいだから、優秀な方のはずだった。

 もしかしたら私がだけで、優秀なのかもしれない。

 だけで。

 私の婚約者様は、どこかに常識を落としてきたらしい。

 何故なら。

 一年前の婚約式には、お顔を拝見した。

 アルトナー王国では、婚約の際にお互いの家長と本人、そして見届け人の署名が必要だから、顔合わせはした。

 感想?
そうねぇ。この人って馬鹿なんだわと思ったわ。

 だって、不満が明確に顔に出ていたもの。

 何故、公爵家の自分が子爵令嬢と婚約しなければならないのだ!ってね。

 まぁ、お兄様が王族、しかも未来の女王陛下と婚約したのだから、自分だってという気持ちは分からないでもないけど。

 多分、本人もご両親にそう言ったのでしょうね。

 そして、この婚約を断るのなら後継の座から外すとでも言われたのだと思うわ。

 そう。
私との婚約は、公爵家を継ぐためには必須。

 必須だとわかっていて・・・
婚約者様とは、婚約式以来、お会いしたことがない。

 一応、コンラッド公爵家から月に一回はお誘いの手紙は届く。

 多分、公爵夫妻に強要されて侍従か侍女にでも書かせているのだと思う。

 そして了承のお返事を差し上げると、お約束の日の当日の朝にこう言われるのだ。

「ファンティーヌが熱を出したので行けない」

 熱の時もあるし、一緒に出かけなければならない時もある。

 理由は様々だけど、理由がファンティーヌ様に関することなのは絶対。

 了承してもどうせキャンセルされるのだから、最初から断ってというか、誘わないで欲しいと最近は・・・

 三ヶ月後くらいからは思うようになった。

 こっちだって迷惑なのよ。
誘われたら、予定を空けておかなきゃならないんだもの。

 そんなにファンティーヌ様がお好きなのなら、彼女と婚約すれば良かったのに。

 別にそれでかまわなかったわ。

 後継の座さえ諦めれば、大好きな彼女と婚約出来るじゃない。

 ま、彼女は公爵様が引き取ったけれど、だけどね。
 
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