拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

文字の大きさ
24 / 130

叱責は続きます。

しおりを挟む
 確かに私は、シリルとの婚約に関して何も言わなかったし、貴族から色々意見が出ていたことも知っていたから、アルトナー王国の公爵令息との婚約にも何も言わなかった。

 だから、お父様を責め立てるのはちょっと違うかなと思う。

 発端が、拗らせたお母様への愛だったとしても、それに関する罰はお母様が与えてくれている。

 だけど・・・

「あそこまで常識知らずの阿呆だとは思わなかったって、調査はしたんですか?」

 皇族が嫁ぐんだから、その相手の調査をちゃんとすることは当たり前よね?

「しっ、したとも。紹介してくれた王配殿下から聞いて、調査はした」

「なのにあの、脳内雑草具合に気付かなかったと?」

「調査の段階では、多少は未熟な部分はあるけれど、努力家で問題なかったんだ。優秀な兄に多少コンプレックスは抱いていたけど」

 そりゃまぁ確かに、兄が王配になるからといって、今みたいな問題児だったなら弟に継がせず養子をとったわよね。

 でも婚約の顔合わせの時点で、私を見下していたわよ。

 正確に言えば、子爵家ということを。

「どうやら、自分が後継になれたことで、兄へのコンプレックスを変な形に拗らせたらしい。公爵家の後継になったのだから、兄に嫁をもらって、人間になるのだと」

「なら、私が帝国の皇女だと名乗っていたら、ああはならなかったと?」

「それは・・・分からないが。あの従妹だという男爵令嬢がアレやこれや耳触りの良い言葉ばかり吐いていたらしいから、あれ以上に増長していたかもしれん」

 私が皇女であることを隠していたのは、シリルが皇女だからではなく私だから婚約したいと言ってくれていたから。

 だから、お父様が別の婚約者を決めた時私は自分が皇女だとは名乗らないと決めた。

 お父様にも、アルトナーの王家にも絶対に口外しないようにと伝えた。

 私が身分を隠していたのが悪い。

 そう思っていそうだけどね、元婚約者様。

 私が本当に子爵令嬢だったとしても、あれは政略結婚なの。

 両家の当主が決めた婚約を、あんな風に蔑ろに扱っていいわけがないの。

「クロエ、何をしているの?お茶でも一緒に飲みましょう」

 背後から聞こえた声に、お父様がビクリと体を震わす。

 お父様は、皇帝陛下としては優秀で、周囲に敬愛される方だけど、家族・・・特にお母様には弱いのよね。

 腰下まで伸びた綺麗な銀髪をサラリと揺らし、アメジストのような瞳をした、女神のように美しい女性。

 お母様の登場だ。
しおりを挟む
感想 372

あなたにおすすめの小説

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。 ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。 え?イザックの婚約者って私でした。よね…? 二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。 ええ、バッキバキに。 もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。

お久しぶりです、元旦那様

mios
恋愛
「お久しぶりです。元旦那様。」

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人
恋愛
ハーゲンシュタイン公爵の娘ローズは王命で第二王子サミュエルの婚約者となった。 王命でなければ誰もサミュエルの婚約者になろうとする高位貴族の令嬢が現れなかったからだ。 第一王子ウィリアムの婚約者となったブリアナに一目ぼれしてしまったサミュエルは、駄目だと分かっていても次第に互いの距離を近くしていったためだった。 常識のある周囲の冷ややかな視線にも気が付かない愚鈍なサミュエルと義姉ブリアナ。 ローズへの必要最低限の役目はかろうじて行っていたサミュエルだったが、常にその視線の先にはブリアナがいた。 みじめな婚約者時代を経てサミュエルと結婚し、さらに思いがけず王妃になってしまったローズはただひたすらその不遇の境遇を耐えた。 そんな中でもサミュエルが時折見せる優しさに、ローズは胸を高鳴らせてしまうのだった。 しかし、サミュエルとブリアナの愚かな言動がローズを深く傷つけ続け、遂にサミュエルは己の行動を深く後悔することになる―――。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

処理中です...