拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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友人の恋。

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「ええと・・・」

 どう答えたらいいのかしら。

 ずっと想われてることを肯定するのも恥ずかしいし、でも否定するのはシリルに失礼だわ。

「マキシミリオン王国への留学を決められたのは、婚約者のお側にいるため、ですの?」

「え?ええ、そうですね。私は、元コンラッド公爵令息様とはほとんどお会いすることもなく、婚約者の時期を過ごしました。本当の身分を明かさなかったこともありますが、子爵令嬢ということに不満な様子だったので、こちらから歩み寄ろうとは思えませんでした」

 初対面の時から、不満そうだったもの。
 それでも初めの頃は、誘われたら会うつもりではいたのよ。

 もっとも、コンラッド公爵に言われて渋々誘って来てたみたいだし、全てファンティーヌ様を理由に断られたけど。

「自分の対応を間違いだとは思いませんが、歩み寄る必要がなかったとも言えない気がしたのです。マキシミリオン王国の成人は十八歳。婚姻するまでに、もっと婚約者として歩み寄るべきだと思ったのですわ」

「確かに私たち貴族にとって、政略結婚は当たり前ですけど、お互いを思い合えたらその方が喜ばしいですわよね。それに離れていると不安や疑心も生まれます。そばにいて、不安や疑心はその都度解消していくのが最良ですわ」

 グレース様はそう言って微笑まれた。

 ニトリル公爵令息様と、何かあったのかしら?

 でも、エルフレッド・ニトリル公爵令息様は、私たちより五歳年上だし、グレース様のことをとてもとても溺愛されていると聞くし、揉めるようなことはない気がするけど。

「でも、ニトリル公爵令息様はグレース様のことを溺愛されているのでしょう?お二人には不安や疑心なんてなかったのでは?」

 ああっ。
ベリンダ様、聞いてしまうの?

 なんだか聞いちゃいけないような気がして、私は口を噤んだのに。

 グレース様は、それこそ苦虫を噛み潰したようなお顔をされた。

 グレース様・・・
その表情は貴族令嬢としていかがなものかと思うわ。

「エルは、私たちより五歳年上ですから・・・私が知らないだけで、きっとそれなりにお付き合いされた令嬢がいたんだと思います」

「ニトリル様がそうおっしゃったのですか?」

「・・・いえ。でも、エスコートも何もかも、流暢なのです。慣れているというか」

 五歳年上なのだから、交際された方がいてもおかしくはないけど・・・

 グレース様をあれほど溺愛されているのだから、現在はグレース様ひと筋だと思うわ。

 それでも不安に思うのは、きっとニトリル様のことを好きだからね。

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