拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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はじめの一歩。

 シリルとちゃんと話がしたい。
そう決心して、覚悟を持ってシリルの部屋を訪れた・・・のだけど。

 どうして私は、シリルに後ろから抱きしめられて、しかもシリルのお膝の上に座らされているのかしら?

 その上、肩口にシリルの頭がグリグリと擦り付けられるのよ。

 おかしいわ。
確か、最初はちゃんと向かい合って話していたはずなのに。

 突然、部屋に訪れた私に驚いたものの、シリルは快く私を部屋に入れてくれた。

 一応、第三者には聞かせたくない話だから、私付きの侍女とシリルの護衛の方には、扉を少し開けた状態で廊下で待機してもらった。

 婚約者ではあるけれど、私たちは未婚の男女だから。

 私は、キャリーヌ様からお聞きしたこと、シリルのことが心配で力になりたいこと、シリルの側に他の女性がいるとムカムカすること、それから・・・

 炙り出しのために公言はしていなかったけど、シリルの役に立つのなら皇女の身分を明かしてもいいことを伝えた。

 私の身分がわかれば、少なくともリグレスト侯爵令嬢様のような方は、私にマウントを取ることはできなくなる。

 その上でなら、私がシリルの隣にいても文句を言える人はいなくなる。

 シリルは、私を危険に晒したくないのだろうってキャリーヌ様はおっしゃってたけど、私だってシリルを危険に晒したくないの。

 シリルはずっと黙って聞いてくれて、それから・・・

 気がついたら今の状態だったのよ。

「ああ・・・クロエが尊い。恋ではないと言いながら、僕の側に他の女性がいることが嫌だと言う。ヤキモチだよな?僕の勘違いじゃないよな?もしかして、これ夢とか?クロエが僕の膝の上に座ってるなんて、夢かもしれない」

「あ、の・・・シリル?」

 さっきから、ブツブツ言っているシリルのひとり言がおかしいのだけど?

 夢って。
しかも、膝の上に座らせたのはシリル自身でしょう?

 私が・・・自主的に座ったわけじゃないわよね?

 え?記憶にないだけで、私が自分から自主的に座ったり・・・してないわよね?

 それに・・・
あの、時々感じてたムカムカする気持ち。

 あれは、やきもちなの?
ヤキモチって、その、いわゆる嫉妬よね?

 シリルに、他の人が馴れ馴れしくした時にだけ感じた気持ち。

 元婚約者様がファンティーヌ様とどれだけ仲睦まじくしていても、感じなかった気持ち。

 あの感情が嫉妬だというのなら・・・

 私はシリルのことを、恋愛的な気持ちで好きなの?
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