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最終章

セレスティーナの危機

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「それでは、姫様。失礼いたします」

 お針子さん達が部屋を出て行かれます。私は再び窓際へと足を向けました。

 どうして、愛されていることは理解しているのに、不安に思ったりするのでしょうか。

 アル兄様に王女殿下のエスコートをお願いしたのは私なのに。
 本当なら私がするべきだし、アル兄様にさせたくなかったけど、今の私にはその僅かな時間すらなくて、婚姻のお祝いに来てくださっているのだから、ちゃんとおもてなししなきゃいけなくて。

 私はこの後すぐに、婚姻式にお招きする各国王族の方にお手紙を書かなくてはなりません。

 アル兄様は手伝ってくださるとおっしゃったけど、アル兄様には皇太子としての公務もあります。
 私にも皇女としての公務はありますが、兄様のは私の比ではありません。

 あとは、私とアル兄様の結婚式の1ヶ月後にご結婚されるメリッサ様とカイト様のお祝いの準備もしなければなりません。

 まずはお手紙です。
順に片付けていかないと、間に合いません。
 侍女が準備してくれている机の上のレターセットに向かいます。

 机に向かって30分ほど経った頃、部屋の扉がノックされました。

「どなた?」

「姫様。ジュディです。皇太子殿下がお呼びだというので、代わりの者が参り次第少し外します」

 ジュディというのは私専属の護衛です。
私より5歳年上の女騎士の方です。

「アル兄様が?王女殿下のことで何か至急のことかもしれないわ。すぐに行ってちょうだい」

「いえ。交代の者が参り次第で」

「私は部屋から出ないから大丈夫よ」

「わかりました。絶対に代わりの者が来るまではお部屋においでになって下さい」

 ジュディは出来ることなら交代の者が来てからにしたかったみたいですが、皇太子殿下が呼んでいるということで諦めたみたいです。
 私に絶対に部屋から出ないように念を押してから急いで立ち去りました。

 私はジュディの言いつけを破るつもりも、そんな暇もないので、すぐに机へと戻ろうとします。

 ですが、その時ー

 閉めた扉がいきなり開いて、1人の男性が私の執務室へと入って来ました。

「え?」

「セレスティーナ皇女殿下。会いたかったですよ」

「あなたは・・・確かシシア王女殿下の婚約者のバンズ公爵令息様。ここは、アルバム皇国皇女の執務室です。許可なく立ち入るべき場所ではございません。すぐに退室して下さいませ」

 他国の王族の婚約者の方が、勝手に皇城内を自由に動き回られては困ります。
 確か護衛を付けていた筈なのですが。

「そんなつれないことをおっしゃらないで下さいよ。ああ!綺麗な銀色の髪だ。その柔らかそうな唇も、ドレスに隠された胸も、全てを食べてしまいたい」

 後ろ手に部屋の鍵を閉めた令息は、立ち尽くす私の手を引くと、そのままその腕の中に私を抱き込みました。

「いやっ!離して」

「ああ。可愛い抵抗ですね。護衛の方が戻ってくるまでわずかしかありません。ムードに欠けますが、早々に私のモノになっていただきますね」

 ソファーに私を押し倒した令息は、馬乗りになってその顔を近づけて来ます。

 私はグレイスの時も、セレスティーナになってからも、アル兄様としか口づけをしたことはありません。

 恐怖のあまり固まった私の唇に、ソレが触れる直前ー

 私の左手のバングルから眩い光が溢れ出ましたー

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