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最終章

私とあなたは同じだから《セレスティーナ視点》

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 とても心地良い空間に、私はいました。
まるでゆったりと波間に身を任せているような、眠りの中にいるような、そんな気がします。

 私は5歳の時、お墓参りに行った王家の霊廟で、1つの光と悪霊に出会いました。
 眩い光を放つ女性を拘束する黒い靄に立ち向かった私は、自分が5歳の、無力な存在だと気づかない愚か者でした。

 そうです。あの悪霊はかつてマーベラス王国が滅びる原因となった王太子。
 そして、あの光は王太子の婚約者であったグレイスです。

 悪霊となったマーベラス王太子に睨まれた私は、自分から力が抜けていくのを感じたのです。

 今は分かります。私はあの時、死んでしまったのだと。
 今こうして、記憶や意識があるのは、あの時に放たれたグレイスの聖女の力のおかげなのだと。

 グレイスが放った聖女の力は、ほんの小さな欠片の私の魂を、どうにか消滅から守り抜いてくれたのだと。

 ゆっくりと瞼をあげると、そこは先程グレイスとグレイスの妹であるディアナ様といた空間でした。

 つまりは、私セレスティーナの深層部分です。
 ディアナ様の姿は見当たりません。目の前にいるのは、私と同じように光に包まれているグレイスだけです。

 灰色の、穏やかな瞳で、私を見つめているグレイス。

「グレイス」

「セレスティーナ様」

 繋いだ手が、見つめ合う瞳が、名前を呼び合う声が、緩やかに波を打つ髪が、全てが溶け合っていくような、そんな風に感じます。

 稀代の魔女と呼ばれたグレイスは、マーベラスの王太子のせいで生きる道を閉ざすこととなりました。

 彼女は、本当は誰よりも清廉な、心優しい聖女だったのに。

 アルバム皇国の皇女であるセレスティーナ・アルバム。
 5歳の時に、王家の霊廟で悪霊に襲われて長い眠りにつくことになりました。

 私は眠りにつくことで、グレイスの聖女の力で魂を癒されていたのです。

 何故、私がグレイスを救おうとしたのか。
 何故、グレイスがセレスティーナの体の中に入ってしまったのか。
 何故、1つの体の中に2つの魂があるのに、それが反発もせずに存在できているのか。

 私たちが1つになろうとしている今なら分かります。

 私は、グレイスが生まれ変わった存在。
輪廻の輪によって、グレイスは本当ならセレスティーナ・アルバムとして転生しているはずだったのです。

 それをあの悪霊が阻んでいました。
グレイスの魂を拘束し、完全に転生できないようにしていたのです。

「グレイスはセレスティーナわたし

「セレスティーナはグレイスわたし

「「私はあなたで、貴女は私だったのね」」

 私たちは、どちらが消えるわけでもないのです。
 だって、私たちはなのだから。
本来あるべき姿になるだけなのです。
 そして、愛するあの人の元へ戻るのです。


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