ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな

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学園に入学します

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 真新しい制服に身を包んで、学園の正門の前に立った。

 いよいよ乙女ゲームの始まり。学園に入学する。
 これから、攻略対象たちとどうにか距離を置いて、悪役令嬢たちに睨まれないようにしよう。

 そう決意した私の出鼻を挫くように、正門内側には、攻略対象たちが勢揃いしていた。

 ・・・なんで?

 全員がにこやかな笑みを浮かべて、しかも私を見ている。

 いやいやいやいや。
何してるの?自分の婚約者はどうした?

 学園に通うのは、全員貴族。
一応、学園内は身分は平等とされているけど、学園内で不敬なことをすれば、学園外で処罰・・・まではいかなくても不利な立場になる。

 第2王子は攻略対象の中では1番高位だけど、2歳年上の第1王子もまだ学園に通っているから、学園内で1番位が高いわけじゃない。

 それに婚約者のご令嬢は公爵家のご令嬢で、決して王子に苦言を呈せないわけでもない。

 なのに、どうしてその婚約者のエスコートもせずにここにいるわけ?

 いやいやいやいや。
こわい。怖い。怖い!ストーカーかい!

「イヴァン。帰りたい」

 思わず、本音がもれた。貴族の義務、果たせなくてもいいわ。

 イヴァンの腕にしがみついてたら、王子たちの視線がちょっと険しくなった。

 どーして婚約者にしがみついたら、睨まれなきゃならないのよぉ!

「アリア嬢!もう入学式が始まる。さ。我々がエスコートさせていただこう」

 無駄にキラッキラした顔で、第2王子がそう言うけど、馬鹿かーっ!自分の婚約者をエスコートしなよっ!
 そして勝手に名前を呼ぶな!

 こっちは迷惑だっての。アンタらがたかが伯爵令嬢に構ってるから、周囲の視線が怖いんだって。

 攻略もしてないのに、寄ってくんな!
大体、私にも婚約者がいるわけで、迷惑だって気付かない?

「さあ!」

「いえ・・・あの、えっと・・・」

 はっきり迷惑だと言ってやりたい。自分の婚約者をエスコートしろと言いたい。

 でも伯爵令嬢風情が、さすがに第2王子の顔を潰すわけにもいかなくて。
 イヴァンが何か言おうとしてくれるけど、私は首を振ってそれを止めた。
 イヴァンが処罰されたりしたら大変だもの。

 だけど、エスコートはされたくないし、断れないし、どうしよう。

 決断しかねていると、鈴を転がすような、愛らしい声が響いた。

「まぁ!わたくしのエスコートもなさらずに、どこに行かれたのかと思っておりましたら、入学される方々のお出迎えでしたか。さすがはシルヴァン様ですわ」

 現れたのは、第2王子の婚約者であるイザベラ・フィラデルフィア公爵令嬢を筆頭に、攻略対象の婚約者のご令嬢方。

 満面の笑みが怖い。
美人の笑顔って怖いものなんだ。しかも、褒めてるようで、滅茶苦茶嫌味っぽい。

 第2王子を筆頭に、攻略対象たちはその顔をひきつらせていた。



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