聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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公爵令嬢

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 自分の魔力の残滓を追って、王宮の奥へと進む。

 私はほとんど訪れたことがないけど、大体王宮というものは同じような造りらしく、カルディアで客室があった場所あたりから、残滓を感じた。

 ただ、残滓と同時に異質な力も感じる。

「ここ、みたいですが、嫌な感じがします」

「とりあえず、少し開けてみるか。中の様子を確認しよう」

「ですね」

 嫌なモノが背中を這い回っている感じで、気持ち悪い。

 そっと、三センチほど扉を開けてみる。

 外開きに開く扉は、音も立てずに開いた。

 部屋の中はカーテンが引かれたままなのか薄暗く、灯りも付いていない。

 シキと頷き合って、扉の隙間から部屋の中へと入り込み扉を閉める。

 中に入る時に一瞬、何かの抵抗を感じた。

 結界が張られていたのかもしれない。

 薄暗いの奥、窓際にベッドが見え、どうやら誰か眠っているようだった。

 魔力の残滓があることから、それが『クロを傷つけた人間』と分かる。

 シキが握った私の手に力を込める。
私は大丈夫だというように、握り返した。

 クロを傷つけた相手を許せない。
その気持ちは、今もある。

 だけど感情のまま、暴走したりしない。

 一歩ずつベッドに近づく。
相手は眠っているのか、身動きもしない。

 そして、その顔が見えるところまでシキと進み・・・

「これは・・・」

 そこにいたのは『公爵令嬢だったモノ』だった。

 あのふわふわしたピンクブロンドの髪は散り散りで、ほとんど残っていない。

 ルビー色の瞳は見えない。閉じられているだけでなくそこには包帯が巻かれ、血が滲んでいた。

 可愛らしい容姿だった顔は青黒く腫れて、鼻も口も歪んでいる。

 だけど、は私の罠の結果だ。つまり、彼女はクロの幻にこれだけ酷いことをしたということだ。

 だから、心は痛まない。

 私とシキが言葉を失ったのは・・・

「これは・・・魔石?」

 シキの呟きに、私も頷く。

 マリアベル・ガーディナー公爵令嬢。

 自分こそが王太子妃に相応しいと言い、筆頭聖女となったご令嬢。

 彼女の腹部には人の腕ほどの杭が埋め込まれ、そのわずかに彼女から出た杭の先には、子供の拳大の石があった。

 石の中で、鈍い赤色に弱々しい白い光が吸い込まれ、うねりながらどす黒い色を生み出していく。

「異常種を・・・造っている?聖力を取り込むことで、異質なものに変換させてるということ?」

「そんなことが可能なのか?」

 思わず呟いた言葉に、シキが疑問を向ける。

 可能かどうか。
なぜそんなことができるのか。

 私には分からない。

 でも今目の前で、聖女の力と生命を吸い取った何かが生まれようとしていた。
 


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