聖女の地位も婚約者も全て差し上げます〜LV∞の聖女は冒険者になるらしい〜

みおな

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ちょっとムカムカ?

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「では、わたくし達は皇帝陛下のお手伝いをいたします」

 カーティ様とリミア様が、シキの手伝いを申し出る。

 ムカムカ。

 ん?こないだから何か、胸がムカムカする。

 私はその思いを振り切るように、サッと立ち上がった。

「善は急げと言います。行きますよ」

「え?今すぐ?」

「もちろんです。こうしている間にも怪我をする人が増えますから。行かないなら、私ひとりで行きます」

「行く!行くから、ちょっと待って」

 私が一人で転移しようとすると、慌ててグレンとクラウドが立ち上がる。

 二人の手に触れ、シンクレア王国へと転移魔法を使う。

 転移する一瞬、ニコニコと笑うカーティ様とリミア様が見えた。

 シンクレア王国の王宮入口に転移し、ふぅと息を吐く。

 イライラする自分が腹立たしい。
駄目だ、こんなことじゃ。落ち着かなきゃ大きなミスをする。

「ティア嬢?大丈夫?」

「すみません、少しイライラしてしまって。急に転移してしまって、体調が悪くなったりしてませんか?」

「大丈夫だ。ティア嬢、貴女はまだ十三歳の少女なのだから、俺たちにそんな気を遣うことはない。体調が悪くなればちゃんとこちらから言うし、愚痴でもなんでも言いたいことがあれば聞く」

「うん。グレンの言う通りだよ。ティア嬢は大人になり過ぎているかな。もっと我儘を言って良いんだよ?」

 グレンとクラウドの言葉に、きょとんとしてしまう。

 私、結構好き勝手してると思う。
嫌なことは嫌って言ってるし。

 そう言うと、グレンもクラウドも「僕たちなんてこの歳で自分の好き勝手してるよね」などと笑う。

 うーん、彼らのは好き勝手というより譲れない想いなんじゃないかな。

「で、どうしてイライラしたの?」

「え、と、よくわからないです。最近、胸の奥がムカムカすることが時々あって」

「ふぅん。それってさ、シキが関わってたりしない?」

 クラウドの問いに、そういえば前回ムカムカした時は、転びそうなマリアベルをシキが支えた時だったっけ、と思う。

「・・・そういえばそうですね」

「ティア嬢は・・・」

「さっきから思ってたんですけど、ティアでいいですよ?私は貴族のご令嬢じゃないので」

「い、いや、呼び捨てで呼ぶのは・・・」

 グレンが困ったような表情で、クラウドと顔を見合わせている。

 呼び捨てたくない?
ああ。もしかして婚約者に叱られたりするのかな?

 それなら、無理強いはできないよね。

「まぁ、呼びやすい呼び方でいいです。カーティ様やリミア様にヤキモチ妬かれても困りますから」

「いや、面倒なのはシキのほうで・・・」

 クラウドが小声で何か言ってたけど、私には聞こえなかった。
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