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シリル・イグリットの場合
ウォルター・アルトガンの失態
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「この、馬鹿者が!」
バキッ!と音を立てて、ウォルターが吹き飛んだ。
父親であるアルトガン公爵が、息子の左頬を殴り飛ばしたのだ。
ウォルターがキャンディとカップルカフェに行ってから、一ヶ月後。
すでに学園中に噂は広がり、ウォルターは婚約者以外の令嬢に手を出していながら、その責任を令嬢に被せるという屑だと噂になっていた。
そしてその噂は、とうとう父親である公爵の耳にも入ってしまったのだ。
当然のことながら、ウォルターは噂のことを問い詰められて弁明した。
シリルと行くための下見と考えて、頼まれたついでに行ったのだと。
その結果が、この殴打である。
「ッ!父上・・・」
「私は言ったはずだな?イグリット嬢と婚約した時に。彼女との婚約は、絶対に失ってはならないと。そんなことすら理解出来ていなかったのか!」
「で、ですが、彼女は伯爵令嬢ですし、あちらから婚約解消などはできないはずです。それに、俺は不貞などしてはいません」
このガーデンプレイス王国では、下位の貴族から上位の貴族へ婚約の解消や破棄の申立てをするには、キチンとした証拠を提示の上で貴族院に訴えを出さなくてはならない。
本当に相手の不貞が理由だとしても、貴族院に訴えた時点で公になり、訴えた側にも疵になる。
だから、それを避けるために下位から解消を求めることはほとんどない。
どうしてもという場合は、疵を覚悟で訴えるか、相手と同等か上位の貴族の手を借りるかするのが普通だ。
アルトガン公爵家より上位となると、マーガレットのカイサル公爵家か王家くらいである。
「カイサル公爵家と王家から、婚約解消に応じろと通達がきた!この、愚息が!」
「なっ!し、しかし、本当に俺は不貞なんか・・・」
「事実などどうでもいい!お前が普段からイグリット嬢との交流をしていないから、こういう時に味方がいないのだ!親が注意することを許可されていなかったから口を出せなかったが、お前がここまで愚かだとは思わなかった」
事実がどうでもいいと言われたこと、そしてシリルの友人にあの生意気なマーガレット・カイサルがいたことをウォルターは思い出した。
たかが女だと見下していたから、すっかり忘れていたが、カイサル公爵家は筆頭公爵家でアルトガン公爵家より上だ。
しかも、王太子殿下の婚約者。
王家とカイサル公爵家から抗議を通り越して、婚約解消を求めて来たということは、そういうことである。
ウォルターは、その場に座り込んだ。
このままでは愛しいシリルを失ってしまう。
バキッ!と音を立てて、ウォルターが吹き飛んだ。
父親であるアルトガン公爵が、息子の左頬を殴り飛ばしたのだ。
ウォルターがキャンディとカップルカフェに行ってから、一ヶ月後。
すでに学園中に噂は広がり、ウォルターは婚約者以外の令嬢に手を出していながら、その責任を令嬢に被せるという屑だと噂になっていた。
そしてその噂は、とうとう父親である公爵の耳にも入ってしまったのだ。
当然のことながら、ウォルターは噂のことを問い詰められて弁明した。
シリルと行くための下見と考えて、頼まれたついでに行ったのだと。
その結果が、この殴打である。
「ッ!父上・・・」
「私は言ったはずだな?イグリット嬢と婚約した時に。彼女との婚約は、絶対に失ってはならないと。そんなことすら理解出来ていなかったのか!」
「で、ですが、彼女は伯爵令嬢ですし、あちらから婚約解消などはできないはずです。それに、俺は不貞などしてはいません」
このガーデンプレイス王国では、下位の貴族から上位の貴族へ婚約の解消や破棄の申立てをするには、キチンとした証拠を提示の上で貴族院に訴えを出さなくてはならない。
本当に相手の不貞が理由だとしても、貴族院に訴えた時点で公になり、訴えた側にも疵になる。
だから、それを避けるために下位から解消を求めることはほとんどない。
どうしてもという場合は、疵を覚悟で訴えるか、相手と同等か上位の貴族の手を借りるかするのが普通だ。
アルトガン公爵家より上位となると、マーガレットのカイサル公爵家か王家くらいである。
「カイサル公爵家と王家から、婚約解消に応じろと通達がきた!この、愚息が!」
「なっ!し、しかし、本当に俺は不貞なんか・・・」
「事実などどうでもいい!お前が普段からイグリット嬢との交流をしていないから、こういう時に味方がいないのだ!親が注意することを許可されていなかったから口を出せなかったが、お前がここまで愚かだとは思わなかった」
事実がどうでもいいと言われたこと、そしてシリルの友人にあの生意気なマーガレット・カイサルがいたことをウォルターは思い出した。
たかが女だと見下していたから、すっかり忘れていたが、カイサル公爵家は筆頭公爵家でアルトガン公爵家より上だ。
しかも、王太子殿下の婚約者。
王家とカイサル公爵家から抗議を通り越して、婚約解消を求めて来たということは、そういうことである。
ウォルターは、その場に座り込んだ。
このままでは愛しいシリルを失ってしまう。
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