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シリル・イグリットの場合②
ステラ・カナーバの焦燥
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ステラ・カナーバ公爵令嬢は、イライラしていた。
原因は明白で、エドワードが子爵令嬢のフミナ・イヤーズを常にそばに置くようになったからだ。
今まで女遊びの激しかったエドワードだが、誰かひとりを優遇することはなかった。
ステラを除いて。
ステラは従妹ということもあり、エドワードの隣に立つことを公私共に認められていたのだ。
エドワードが、誰かひとりを優遇しないのは、『彼のオンナ』顔をされるのを疎んだからである。
エドワードにとっては、あくまでも遊び。
だから、婚約者のいない令嬢や後腐れのない夫人ばかり相手にしていたし、ステラはフミナもその中の一人だと思っていた。
なのにエドワードは、フミナと共に過ごすようになった。
たかが子爵令嬢風情が、王太子であるエドワードの隣に並んでいることが腹立たしい。
「ちょっと、シリル・イグリット!どういうつもりなの?」
その苛立ちは、エドワードの婚約者であるシリルに向かった。
シリルは、何の前置きもなくいきなり喚いてきたステラを、席に座ったまま見上げた。
「ごきげんよう、カナーバ公爵令嬢様。どういうつもりとは何のことでしょう?」
「ッ!惚けないで!貴女、エドワードの婚約者でしょ。あんな女をそばに置かせておくなんて、何を考えているのよ!」
ステラは、思い通りにならない苛立ちをシリルにぶつけたが、シリルは平常通りに落ち着き払った声音で答えた。
「お互いの交友関係に口は出さない、そういう契約です。ですので、王太子殿下がどなたとご一緒だとしても私は口出しするつもりもありませんし、権利も義務も発生しません。それに、私は王太子殿下がどなたと親しくされようと何も思いません」
「そ、そんな可愛げのない態度だから、エドワードに相手にされないのよ!」
シリルは、コテンと首を傾げた。
エドワードに相手にされないのは、確かに事実だと思う。
あの王太子は、何が気に入らないのが、最初からシリルのことを嫌っていた。
だから事実はともかくとして、何故それをステラに責められなければならないのか。
相手にされようとされなかろうと、それは王太子とシリルの問題である。
無関係のステラに、どうこう言われる覚えはない。
「相手にされなくても問題ありません。そういう契約です。王太子殿下は、必要最低限の婚約者としての務めを果たしてくだされば、ご本人が望まれた通り自由に過ごしていただけます」
「条件、条件って!貴女、子爵令嬢に婚約者を奪われて何とも思わないの?」
ステラは焦っていた。
エドワードに何か言って、嫌われたくはない。
だから、シリルを焚き付けようとするのに、全くの塩対応であった。
原因は明白で、エドワードが子爵令嬢のフミナ・イヤーズを常にそばに置くようになったからだ。
今まで女遊びの激しかったエドワードだが、誰かひとりを優遇することはなかった。
ステラを除いて。
ステラは従妹ということもあり、エドワードの隣に立つことを公私共に認められていたのだ。
エドワードが、誰かひとりを優遇しないのは、『彼のオンナ』顔をされるのを疎んだからである。
エドワードにとっては、あくまでも遊び。
だから、婚約者のいない令嬢や後腐れのない夫人ばかり相手にしていたし、ステラはフミナもその中の一人だと思っていた。
なのにエドワードは、フミナと共に過ごすようになった。
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「ちょっと、シリル・イグリット!どういうつもりなの?」
その苛立ちは、エドワードの婚約者であるシリルに向かった。
シリルは、何の前置きもなくいきなり喚いてきたステラを、席に座ったまま見上げた。
「ごきげんよう、カナーバ公爵令嬢様。どういうつもりとは何のことでしょう?」
「ッ!惚けないで!貴女、エドワードの婚約者でしょ。あんな女をそばに置かせておくなんて、何を考えているのよ!」
ステラは、思い通りにならない苛立ちをシリルにぶつけたが、シリルは平常通りに落ち着き払った声音で答えた。
「お互いの交友関係に口は出さない、そういう契約です。ですので、王太子殿下がどなたとご一緒だとしても私は口出しするつもりもありませんし、権利も義務も発生しません。それに、私は王太子殿下がどなたと親しくされようと何も思いません」
「そ、そんな可愛げのない態度だから、エドワードに相手にされないのよ!」
シリルは、コテンと首を傾げた。
エドワードに相手にされないのは、確かに事実だと思う。
あの王太子は、何が気に入らないのが、最初からシリルのことを嫌っていた。
だから事実はともかくとして、何故それをステラに責められなければならないのか。
相手にされようとされなかろうと、それは王太子とシリルの問題である。
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「相手にされなくても問題ありません。そういう契約です。王太子殿下は、必要最低限の婚約者としての務めを果たしてくだされば、ご本人が望まれた通り自由に過ごしていただけます」
「条件、条件って!貴女、子爵令嬢に婚約者を奪われて何とも思わないの?」
ステラは焦っていた。
エドワードに何か言って、嫌われたくはない。
だから、シリルを焚き付けようとするのに、全くの塩対応であった。
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