はい!喜んで!

みおな

文字の大きさ
54 / 79
シリル・イグリットの場合②

スティングレイ王国国王の決断

しおりを挟む
「どうやら、決断しなければならない時が来たようだな」

 スティングレイ王国国王陛下は、隣に座る王妃殿下にそう告げた。

 息子で王太子であるエドワードが、フミナ・イヤーズ子爵令嬢を自室に、妊娠させる行為を行なった。

 一応、令嬢は「同意です!それだけ求めてくれたと言うことです!」と言っていたらしいが、着ていた服はビリビリに破かれていて、令嬢自身も痛みからか泣き叫んでいたそうだ。

 その声に気付いた侍従と王宮騎士が駆けつけると、令嬢を押し付けるようにして後ろからエドワードがいたのだ。

 危険な状況と判断して、騎士がエドワードを昏倒させた。

 そのままエドワードは拘束され、フミナも騎士に連行されて国王陛下と王妃殿下の元に連れて行かれた。

「避妊薬は飲ませてないのだな?」

「は、はいっ」

「エドワードも飲んでないんだな?」

「わ、分かりませんけど、多分・・・」

 侍従は顔を青くしながら答える。

 スティングレイ王国では、避妊薬を飲む場合、基本的に男性が行為前に飲む。

 女性の場合も、行為前に飲むものだが、行為後の一時間以内なら七十パーセントで効果が得られる。

 だが、エドワードが避妊薬を飲んだとは思えない。

 そして、騎士たちが拘束してフミナを連れて来たが、すでに一時間以上経っている。

 王太子であるエドワードが、こと。

 そもそも、子爵令嬢でしかないフミナが王宮の、しかもエドワードの私室に入り込めたこと。

 普通なら、そこをおかしいと思い調査するのが普通だろう。

 だが、国王陛下も王妃殿下も、そこには全く触れようとしなかった。

 二人には分かっていたのだ。

 婚約時に、愚かにもエドワードが馬鹿な条件を出し、イグリット伯爵家側から追加の条件を出された時に、エドワードがどうなるのかが。

 つまり、ここで自分たちがするべきことは、キングレイ侯爵家の兄弟どちらかを王太子にする準備をすること。

 フミナの妊娠が発覚するまでは、エドワードとフミナは軟禁。

 妊娠していなかった場合、婚約破棄が難しくなるので、再び媚薬を与える必要があるが、そのあたりも対策されているだろう。

「陛下・・・」

「シャナルア、すまない。お前の産んだ唯一の子だというのに」

「いいえ、わたくしの血がいけなかったのかもしれません。キングレイ侯爵家の兄弟はどちらも真面目で勤勉だと聞いていますもの」

「そんなわけがない。あれは、エドワード個人の問題だし、もっと厳しく躾けるべきだったのだ。いや、もう何もかも今さらだな。我々は、我々のやるべきことをやろう」

 自分たちの血を分けた息子が、可愛くないわけではない。

 だが、親である前に、二人は国王陛下と王妃殿下でなければならなかった。

しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

【完結】六歳下の幼馴染に溺れた夫。白い結婚を理由に離縁を申し立てたら、義弟(溺愛)に全力で求婚されました

恋せよ恋
恋愛
夫が愛でるのは、守ってあげたくなるような「可憐な少女」。 夫が疎むのは、正論で自分を追い詰める「完璧な妻」。 「シンシア、君はしっかりしているから、大丈夫だろう?」 六歳年下の幼馴染ジェニファー子爵令嬢を気遣う貴方。 私たちは、新婚初夜さえ済ませていないのよ? 完璧な家政、完璧な社交。私が支えてきたこの家から、 ニコラス、貴方って私がいなくなったらどうなるか……。 考えたこともないのかしら? 義弟シモンは、学生時代の先輩でもあるシンシアを慕い 兄ニコラスの態度と、幼馴染ジェニファーを嫌悪する。 泣いて縋るあざとい少女と、救世主気取りの愚かな夫。 そして、義姉であるシンシアを慕うシモン。 これは、誇り高き伯爵夫人、シンシアの物語である。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

婚約破棄ですか?構いませんわ。ですがその契約、すべて我が家のものです

ふわふわ
恋愛
王太子ユリウスは、王立学園の卒業舞踏会で突然宣言した。 「カリスタ・ヴァレリオンとの婚約を破棄する!」 隣には涙を流す義妹ルミレア。 彼女は「姉に虐げられてきた可哀想な令嬢」を演じ、王太子はそれを信じてしまう。 だが――王太子は知らなかった。 ヴァレリオン公爵家が 王国銀行の資金、港湾会社の株式、商人組合の信用保証―― 王国経済の中枢を支える契約のほとんどを握っていたことを。 婚約破棄と同時に、カリスタは静かに言った。 「では契約を終了いたします」 その瞬間、王国の歯車は止まり始める。 港は停止。 銀行は資金不足。 商人は取引停止。 そしてついに―― 王宮大広間で王太子の公開断罪が始まる。 「私は悪くない!」 「騙されたんだ!」 見苦しく喚き暴れる王太子は、衛兵に取り押さえられ、床を引きずられるようにして連行されていく。 王太子、義妹、義父母。 すべてが破滅したとき、カリスタはただ静かに告げる。 「契約は終わりました」

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄された宰相です。 正直、婚約者も宰相も辞めたかったので丁度よかったです

鍛高譚
恋愛
内容紹介 「婚約破棄だ! そして宰相もクビだ!」 王宮の舞踏会で突然そう宣言したのは、女性問題を繰り返す問題王太子ユリウス。 婚約者であり王国宰相でもあるレティシアは、静かに答えた。 「かしこまりました」 ――正直、本当に辞めたかったので。 これまで王太子の女性問題の後始末、慰謝料交渉、教会対応、社交界の火消し…… すべて押し付けられていたレティシアは、婚約も宰相職もあっさり辞任。 そしてその瞬間―― 王宮が止まった。 料理人が動かない。 書類が処理されない。 伝令がいない。 ついにはトイレの汚物回収まで止まり、王宮は大混乱。 さらに王太子の新たな女性問題が発覚し、教会は激怒。 噂は王都中に広がり、王宮は完全に統治不能に。 そしてついに―― 教会・貴族・王家が下した決断は、 「王太子廃嫡」 そして。 「レティシア、女王即位」 婚約破棄して宰相をクビにした結果、 王宮を止めてしまった元王太子の末路とは――? これは、婚約破棄された宰相が女王になるまでの 完全自業自得ざまぁ物語。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、戻らなかっただけです

鷹 綾
恋愛
王太子カイル殿下から、社交界の場で婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リュシエンヌ。 理由は―― 「王太子妃には華が必要だから」。 新たに選ばれたのは、愛らしく無邪気な義妹セシリア。 誰もが思った。 傷ついた令嬢は泣き、縋り、やがて戻るのだと。 けれどリュシエンヌは、ただ一言だけ告げる。 「戻りません」 彼女は怒らない。 争わない。 復讐もしない。 ただ――王家を支えるのをやめただけ。 流通は滞り、商会は様子を見始め、焦った王太子は失点を重ねる。 さらに義妹の軽率な一言が決定打となり、王太子妃候補の座は静かに消えた。 強いざまあとは、叫ぶことではない。 自らの選択で、自らの立場を削らせること。 そして彼女は最後まで戻らない。 支えない。 奪わない。 ――選ばれなかったのではない。 彼女が、選ばなかったのだ。 これは、沈黙で勝つ公爵令嬢の物語。

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

処理中です...