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悪役令嬢回避編
姉《クラン視点》
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最近の姉上は、王太子妃教育に行くたびに何か手土産を持っていくようになった。
それは、姉上が作ったお菓子だったり、公爵家の庭に咲く花を刺繍したハンカチだったり様々だ。
多分、婚約者であるマリウス殿下に差し上げるのだと思う。
姉上とマリウス殿下は、生まれた時からの婚約者だそうだ。
筆頭公爵家である、リリウム公爵家の令嬢である姉上は、青みがかった銀髪に、空色の瞳をした女神のような容姿をされている。
一方、マリウス殿下は、金髪碧眼の、白皙の美少年で、男の僕から見てもとても素敵な方だ。
頭もキレて、剣の腕も素晴らしく、しかも誰にも優しい方らしく王宮の使用人たちも笑顔で殿下に挨拶していた。
非のつけどころのない人間というのがいるのだと、僕はマリウス殿下と姉上を見ていると、つくづく思う。
「クラン」
マリウス殿下からお借りした本を読んでいると、姉上が部屋へと乱入してきた。
「姉上、またアナに叱られますよ」
最近の姉上は、変わった。
その美しい見た目も、淑女としての振る舞いも以前と変わらず完璧なのに、時々いたずら好きの子供のように思いがけない行動を取る。
ノックもせずに部屋に入ってくるなんて、以前の姉上なら絶対にしなかった。
「そのアナから逃げてるのです。匿って」
「何をされたのですか?」
「・・・殿下に甲虫をお土産に差し上げようと思って・・・」
は?甲虫?
姉上がソファーの後ろに隠れたタイミングで、扉がノックされる。
「誰?」
「アナでございます。クラン坊っちゃま、アニエスお嬢様はおいででしょうか?」
「姉上?いや、来てないけど、どうしたの?」
「いえ、何でもありません。失礼しました」
アナは、リリウム公爵家の侍女頭だ。
僕たちのお目付役のような人で、僕もよく叱られていた。
だけど、姉上が叱られていた記憶はない。ずっと、淑女のお手本のような姉上が、ここ最近はアナに叱られるような、突飛な行動をする様になった。
マリウス殿下に持って行く手土産にしてもそうだ。
以前の姉上なら、刺繍はともかく、手作りお菓子なんてあり得なかった。
公爵家の令嬢が、自らお菓子を作るなんてあり得ないことだ。
だから、侍女頭のアナも、シェフもみんな反対した。
怪我などしたらどうするんだ、それに綺麗な手が荒れたりしたらと言った。
だけど姉上は、怪我をしたら薬を塗ればいいし、手は手入れをすれば良いのだと。
十分気をつけるし、シェフがそばにいる時にしかやらないと言う姉上に、父上も母上もアッサリ許可を出した。
あの2人は、異常に姉上に甘い。
姉上が白を黒と言えば、黒と言いそうなくらい姉上至上主義だ。
だから姉上を叱るのは、侍女頭のアナの役目となった。
アナは、文句を言いながらも、どこか嬉しそうに見えた。
一度どうしてか聞いてみたら「まるでアニエスお嬢様に急に血が巡ってきたような、お嬢様が生きているんだと実感するような、そんな気持ちになるんです」と言っていた。
なんとなくだけど、僕にも分かる。
姉上は変わった。しかも、良い方向に。
それは、姉上が作ったお菓子だったり、公爵家の庭に咲く花を刺繍したハンカチだったり様々だ。
多分、婚約者であるマリウス殿下に差し上げるのだと思う。
姉上とマリウス殿下は、生まれた時からの婚約者だそうだ。
筆頭公爵家である、リリウム公爵家の令嬢である姉上は、青みがかった銀髪に、空色の瞳をした女神のような容姿をされている。
一方、マリウス殿下は、金髪碧眼の、白皙の美少年で、男の僕から見てもとても素敵な方だ。
頭もキレて、剣の腕も素晴らしく、しかも誰にも優しい方らしく王宮の使用人たちも笑顔で殿下に挨拶していた。
非のつけどころのない人間というのがいるのだと、僕はマリウス殿下と姉上を見ていると、つくづく思う。
「クラン」
マリウス殿下からお借りした本を読んでいると、姉上が部屋へと乱入してきた。
「姉上、またアナに叱られますよ」
最近の姉上は、変わった。
その美しい見た目も、淑女としての振る舞いも以前と変わらず完璧なのに、時々いたずら好きの子供のように思いがけない行動を取る。
ノックもせずに部屋に入ってくるなんて、以前の姉上なら絶対にしなかった。
「そのアナから逃げてるのです。匿って」
「何をされたのですか?」
「・・・殿下に甲虫をお土産に差し上げようと思って・・・」
は?甲虫?
姉上がソファーの後ろに隠れたタイミングで、扉がノックされる。
「誰?」
「アナでございます。クラン坊っちゃま、アニエスお嬢様はおいででしょうか?」
「姉上?いや、来てないけど、どうしたの?」
「いえ、何でもありません。失礼しました」
アナは、リリウム公爵家の侍女頭だ。
僕たちのお目付役のような人で、僕もよく叱られていた。
だけど、姉上が叱られていた記憶はない。ずっと、淑女のお手本のような姉上が、ここ最近はアナに叱られるような、突飛な行動をする様になった。
マリウス殿下に持って行く手土産にしてもそうだ。
以前の姉上なら、刺繍はともかく、手作りお菓子なんてあり得なかった。
公爵家の令嬢が、自らお菓子を作るなんてあり得ないことだ。
だから、侍女頭のアナも、シェフもみんな反対した。
怪我などしたらどうするんだ、それに綺麗な手が荒れたりしたらと言った。
だけど姉上は、怪我をしたら薬を塗ればいいし、手は手入れをすれば良いのだと。
十分気をつけるし、シェフがそばにいる時にしかやらないと言う姉上に、父上も母上もアッサリ許可を出した。
あの2人は、異常に姉上に甘い。
姉上が白を黒と言えば、黒と言いそうなくらい姉上至上主義だ。
だから姉上を叱るのは、侍女頭のアナの役目となった。
アナは、文句を言いながらも、どこか嬉しそうに見えた。
一度どうしてか聞いてみたら「まるでアニエスお嬢様に急に血が巡ってきたような、お嬢様が生きているんだと実感するような、そんな気持ちになるんです」と言っていた。
なんとなくだけど、僕にも分かる。
姉上は変わった。しかも、良い方向に。
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