「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

変わる気持ち。変わらない気持ち

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 私の気持ち?
自分の気持ちに素直に向き合えって言われても、私は別に偽ってなんか・・・

『本当に?』

 嘘じゃない。だって、マリアはヒロインで、マリウス殿下と結ばれる運命で・・・

『その運命、誰が決めましたの?』

 誰って・・・でも、ラノベの中でも乙女ゲームの中でも、ヒロインは選ばれる存在だからー

『わたくしは貴女の言う、おとめげぇむとやらも、らのべとやらも知りませんけど、選ばれる存在なんておかしいですわ。そうしたら、それはマリウス殿下のお気持ちなんて関係ないということですの?貴女の言うマリアさんは本当にいい子なのかもしれませんけど、それとこれとは話が別でしてよ』

 マリウス殿下だって、きっとマリアのことを好きになるんだよ・・・

『なら、今貴女の手を握って悲しんでいるマリウス殿下は偽物ですの?貴女、本当にちゃんと殿下を見ていますか?年齢やマリアさんの存在なんて全て取っ払って、よく考えてごらんなさい。この3年間、ずっとそばにいたのでしょう?あの方が誰を見て誰を思っているか、それすらわからないほど、貴女は子供なんですの?」

 アニエスにキツく言われて、私は俯くしかなかった。

 3年間、ずっとそばにいた。
マリウス・ハイドランジア王太子殿下。

 乙女ゲーム『青の箱庭』の攻略対象で、ラノベ版のヒロインの相手。
 婚約者のアニエスに婚約破棄を突きつけて、自殺させてしまう人。

 私は・・・
マリアが本当に良い子だから、だからきっと、マリウス殿下はラノベのようにマリアを好きになると思った。

 3年間、それなりにマリウス殿下の人となりを知って、仲良くなれたと思ったから、だからそんな彼に切り捨てられたくないと思った。

 私は・・・

 彼に婚約破棄されても自死を選ぶほど、彼のことを好きではない。

 彼がヒロインを好きになっても、私は大人なんだから、彼と釣り合うのは私じゃなくヒロインで当たり前だ。

 私は大人で彼は子供。恋愛対象になんてなるわけない。

『それが全て、いいわけだと理解しているのでしょう?マリウス殿下のことを好きになったから、嫌われるのが怖いから、好きな気持ちを認めようとしないのでしょう?』

 怖い。怖いよ。
だって、あんな風に私のことを好きだって言ってくれてる人に冷たくされたら・・・

 アニエスだって、マリウス殿下のこと大好きで、フラれたら自死を選ぶくらいじゃない。

『わたくしは貴女の言う、そのらのべとやらを知りませんけど、確かに殿下のことはお慕いしておりましたわ。ですが、もし殿下に婚約破棄されたとしても、自死など選びませんわ。王太子殿下に婚約破棄されれば、わたくしは傷ものとして扱われるでしょうけど、自死などしてお父様やお母様やクランを悲しませるくらいなら、修道院でもどこへでも行きましてよ。だってわたくし、何も悪いことをしていませんもの』






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