105 / 128
学園卒業編
羞恥の果てに
しおりを挟む
おかしい。
私は手加減して欲しいと言ったはずなのに、どうしてマリウスにキスされているのかしら?
し、しかも、しつこい。
全然、手加減されてないんだけど!
トン!とマリウスの胸を叩く。
マリウス。手加減。手加減!
お願いしたのに、全然届いてない!
「ま、マリ様・・・」
「ごめん、アニエス。まだ足りない」
再び、マリウスが覆いかぶさって来て、唇が重なる。
足りないって何!?
マリウスってこんな肉食系だっけ?
うゔーっ!アラサーといっても全然、全く、こんなことに経験ないのに。
アニエスとしても、王太子妃教育で閨教育も受けたけど、それだって殿方にお任せしておけば良いってだけだったし。
いやいや。
マグロでいいってこと?
経験値はないけど、一応おばちゃん耳年増というヤツで、そういう本だって読んだことあるわけで。
イニシアチブを取ろうとは思わないけど、こんなやられっぱなしというのも・・・
段々と深くなる口付けに、頭の芯がぼーっとしてくる。
こういう時は鼻で息をするらしいけど、そんな余裕なんかない。
私の息が絶え絶えになった頃、ようやくマリウスの唇が離れた。
離れたけど、熱のこもった瞳で、私を見下ろしている。
「アニエス・・・」
「マリ様の馬鹿・・・手加減してくださいって言ったのに」
生理的な涙がこぼれた。
マリウスが慌てたように、私の目尻に流れる涙を指で拭う。
「ご、ごめん。ごめん、アニエス。お願いだから泣かないで」
「ううっ・・・」
悲しいわけでも悔しいわけでもないのに、涙が止まらない。
「アニエス、ごめん」
「マリ様のぱかぁ。もうキスしないぃ~」
「ごめん!ごめんよ、アニエス。そんなこと言わないで。アニエスの欲しい物、何でも買ってあげる。行きたいとこはある?何でもいうこと聞くから、そんなこと言わないで」
マリウスの方が泣きそうな顔で、必死に謝ってくる。
こんな情けない顔のマリウス、乙女ゲームの中で見たことない。
頭がキレて、剣技も優れてて、容姿もピカイチで、その上身分まである、私の旦那様は、どうにも私には弱いらしい。
それが嬉しくて、情けない顔のマリウスを見ていたら、自然と笑みが浮かんでしまった。
「アニエス・・・ごめんね」
「どんなマリウス様も好きですけど、あんまり意地悪しないでください。でないと、実家に帰っちゃいますよ」
「わかった!約束する!」
マリウスのした約束は、この先時々破られて、私が実家に帰ることになるのだが、それはまた、別のお話である。
私は手加減して欲しいと言ったはずなのに、どうしてマリウスにキスされているのかしら?
し、しかも、しつこい。
全然、手加減されてないんだけど!
トン!とマリウスの胸を叩く。
マリウス。手加減。手加減!
お願いしたのに、全然届いてない!
「ま、マリ様・・・」
「ごめん、アニエス。まだ足りない」
再び、マリウスが覆いかぶさって来て、唇が重なる。
足りないって何!?
マリウスってこんな肉食系だっけ?
うゔーっ!アラサーといっても全然、全く、こんなことに経験ないのに。
アニエスとしても、王太子妃教育で閨教育も受けたけど、それだって殿方にお任せしておけば良いってだけだったし。
いやいや。
マグロでいいってこと?
経験値はないけど、一応おばちゃん耳年増というヤツで、そういう本だって読んだことあるわけで。
イニシアチブを取ろうとは思わないけど、こんなやられっぱなしというのも・・・
段々と深くなる口付けに、頭の芯がぼーっとしてくる。
こういう時は鼻で息をするらしいけど、そんな余裕なんかない。
私の息が絶え絶えになった頃、ようやくマリウスの唇が離れた。
離れたけど、熱のこもった瞳で、私を見下ろしている。
「アニエス・・・」
「マリ様の馬鹿・・・手加減してくださいって言ったのに」
生理的な涙がこぼれた。
マリウスが慌てたように、私の目尻に流れる涙を指で拭う。
「ご、ごめん。ごめん、アニエス。お願いだから泣かないで」
「ううっ・・・」
悲しいわけでも悔しいわけでもないのに、涙が止まらない。
「アニエス、ごめん」
「マリ様のぱかぁ。もうキスしないぃ~」
「ごめん!ごめんよ、アニエス。そんなこと言わないで。アニエスの欲しい物、何でも買ってあげる。行きたいとこはある?何でもいうこと聞くから、そんなこと言わないで」
マリウスの方が泣きそうな顔で、必死に謝ってくる。
こんな情けない顔のマリウス、乙女ゲームの中で見たことない。
頭がキレて、剣技も優れてて、容姿もピカイチで、その上身分まである、私の旦那様は、どうにも私には弱いらしい。
それが嬉しくて、情けない顔のマリウスを見ていたら、自然と笑みが浮かんでしまった。
「アニエス・・・ごめんね」
「どんなマリウス様も好きですけど、あんまり意地悪しないでください。でないと、実家に帰っちゃいますよ」
「わかった!約束する!」
マリウスのした約束は、この先時々破られて、私が実家に帰ることになるのだが、それはまた、別のお話である。
215
あなたにおすすめの小説
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています
22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」
そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。
理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。
(まあ、そんな気はしてました)
社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。
未練もないし、王宮に居続ける理由もない。
だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。
これからは自由に静かに暮らそう!
そう思っていたのに――
「……なぜ、殿下がここに?」
「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」
婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!?
さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。
「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」
「いいや、俺の妻になるべきだろう?」
「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
見捨てられたのは私
梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。
ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。
ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。
何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
他小説サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる