「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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学園卒業編

卒業パーティー

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 ラノベの『青の箱庭』の中で、婚約破棄されてアニエスが自害する、卒業パーティーの日がやってきた。

 婚約者なのにドレスも贈って貰えなくて、ラノベの中でアニエスは自分でドレスを準備していた。

 父や母にバレないように、侍女に頼んでマリウスが贈って来たように偽装してまで、マリウスが責められることがないようにしてた。

 だけどマリウスは、ファーストダンスすら踊ってくれなくて、婚約破棄まで・・・

 マリウスの瞳の色のドレスは、マリアが纏っていた。
 きっと、マリウスが贈ったんだと思う。
それをアニエスはどんな気持ちで見たんだろう。

 私は、自分の着ているドレスを見下ろした。
 サファイア色の・・・マリウスの瞳の色のドレスである。

 もちろんというか、マリウスが贈って来た。
 そして現在、私をエスコートしながら満面の笑みを浮かべている。

「アニエス、綺麗だよ」

「あ、ありがとうございます。マリ様も素敵ですわ」

 マリウスは、真っ白の王族衣装に空色のチーフを付けている。
 王族衣装に身を包んだマリウスは、いつもの5割増にかっこいいと思う。

 ラノベの中のマリウスと、目の前のマリウスは別人だって分かっているけど、やっぱりラノベの中の婚約破棄を思い出して、胸が苦しくなってしまう。

 楽団が音楽を奏で始め、マリウスが私に手を差し出した。

「アニエス、僕と踊ってくれる?」

「ええ、喜んで」

 マリウスの手に、自分の手を重ねる。
音楽に合わせてダンスが始まった。

 マリアは、エスコートして来たカイと踊っている。
 クランもルビスも、ニコラスもレイノルドも、みんな婚約者と仲睦まじくダンスをしている。

 あの、マリアに恋焦がれて、婚約者を蔑ろにしていた攻略対象たちはどこにもいない。

 悲しい婚約破棄の結末を、やっと回避できた気がする。

 マリウスのことは信じてるし、好かれていることも、ここがラノベの世界でないことも理解っているけど、やっぱりどこかに不安があったんだと思う。

「どうかした?アニエス」

「いいえ?学園生活ご終わることを、寂しいなと思っただけですわ」

 色んなことがあった。
マリアと出会って、彼女の人となりを知って、アニエスからマリウスを奪うヒロインだと思っても嫌いになれなくて。

 魔獣の討伐で、マリウスが怪我をして、マリアがそれを癒してくれて。

 あの時は、マリアとマリウスが惹かれ合うものだと思い込んでた。

 あの後、アニエスと話すことが出来た。
馬鹿みたいに、乙女ゲームやラノベに囚われてた私を、叱ってくれた。

 ヒロインもどきが現れて、マリアを傷つけようとした。
 カイが助けに行ってくれて、その縁でカイとマリアが交際するようになった。

 本当に色んなことがあった。
私、この世界に転生して良かった。
 大好きなマリウスもマリアも、そしてアニエスも救うことが出来たのだからー



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