「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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学園卒業編

僕の最愛は女神《マリウス視点》

 女性の出産時に、男は本当に役立たずだと思う。

 最愛の人があんなに苦しそうにしているのに、手を握ったり、背中を撫でたりするくらいしか出来ることがない。

 そして今、僕は部屋の前をウロウロと歩き回るくらいしか出来ることがない。

 ウロウロと歩き回る僕を、母上が生温かい目で見ていた。

「マリウス、ちょっと落ち着きなさい」

「しかし、母上。少し時間がかかりすぎではありませんか?」

「ハァ。本当に貴方はお父様そっくりね。あなたのお父様も、私があなたを産む時にそう言ってドアを叩こうとして、お母様に頭を叩かれたそうよ。いい?マリウス。出産は時間がかかるものなの。その間、アニエスは母親になるべく頑張っているの。私たちにできるのは、母子共に無事に赤ちゃんが生まれるのを祈るだけよ」

 母子共に・・・
そうだ。出産には母体に危険があるとも聞く。
 王太子である僕には、世継ぎは必要だ。
だけど、いくら子供が生まれたって、アニエスを失ったら意味がない。

 僕は扉にしがみつきたい気持ちを、必死に抑えた。

 そうして、どれだけ部屋の前を歩き回っただろう。

 やがて、部屋の中から元気な泣き声が聞こえて来た。

「産まれたようね」

 よほど元気なのか、少し間を置きながら赤ん坊は泣き続けている。

「どうぞ、お入り下さい」

 しばらくたって赤ん坊の泣き声が聞こえなくなった頃、扉が開かれ、僕と母上は部屋に入ることができた。

「アニエス!」

「・・・もう、マリウス様。先に赤ちゃんを見てくださいませ」

「赤ん坊も大切だけど、君が無事で良かった。ありがとう、アニエス」

 汗だくのアニエスは、少し疲れたように、それでも母親らしく僕を嗜めた。

「王太子殿下。王妃殿下。おめでとうございます。とても可愛らしく元気な赤ちゃんですよ」

 そう言って、侍女が赤ちゃんを抱いている。

「こちらが先に産まれた男の子です」

「こちらが女の子です。男女の双子の赤ちゃんですね」

 男の子は、アニエス譲りの銀髪。女の子は僕譲りの金髪をしている。
 スヤスヤと眠る我が子に、胸が締めつめられる思いがした。

 愛するアニエスとの子供だ。
可愛くないわけがない。

「双子だなんて。アニエス、大変だったわね、お疲れ様。ゆっくり休んでちょうだい」

 母上がアニエスを労っているのが聞こえた。

 僕は侍女に赤ん坊の抱き方を教えてもらうと、男の子、つまり未来の王太子を母上のところへと連れて行った。

「母上。抱いてもらえますか?」

「ええ、マリウス。初孫ってこんなに可愛いものなのね。ふふっ。産まれた時のあなたを思い出すわ」

 母上が息子を抱いてくれたので、僕は娘を抱っこした。

 ベッドに横たわるアニエスは、それを嬉しそうに見てくれていた。

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