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番外編
見てみたい景色《マリウス視点》
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その旅は、愛しい妻であるアニエスの一言から始まった。
「ねぇ、マリウス様。ブロッサム皇国に行ってみたいです」
「どうしたの?突然」
「みんなで旅行に行きませんか?」
旅行?
確かに、アニエスと結婚してからすぐに、アークとマーガレットを授かったから、旅行には行けていない。
だけど、どうしてブロッサム皇国なんだ?あそことは国交もないし、アニエスが行きたくなる要素があるのか?
「私たちは新婚旅行には行けなかったでしょう?だから、家族旅行になりますけど、みんなで旅行に行きたいのです」
「旅行は構わないけれど、どうしてブロッサム皇国なんだい?知り合いでもいるの?」
声が剣呑になってしまったのは、それが男かもしれないと思ったからだ。
結婚して子供もいるというのに、僕のアニエスへの想いは増える一方だ。
僕の様子に気づいているアニエスは、クスクスと笑いながら僕の頬にキスをしてくれた。
「困った方ね。知り合いなんていませんわ。ただ・・・」
「ただ?」
「あの国にあるという桜が見たいのです」
「サクラ?」
そういえば、聞いたことがある。
ブロッサム皇国には、ピンク色の儚げな花が咲く木があるのだとか。
「マリア様の髪と瞳のような、綺麗なピンク色の花なのです・・・って。それを見たいのです」
もちろん、愛しいアニエスの望みだ。
新婚旅行にも行けなかったし、ちょうど今は仕事もそんなに忙しくはない。
もうすぐ3歳になるアルクとマーガレットも、そう手はかからないし、どちらにせよ侍女たちは連れて行くのだ。
「カイとマリア嬢も誘う?」
「ありがとうございます、マリウス様。でも、やめておきますわ」
「そう?」
珍しい。
アニエスはマリア嬢のことをとても大切にしているから、彼女と同じ色合いの花なら、見せたいだろうと思ったのに。
「マリアは・・・多分ですけど、赤ちゃんが出来たんじゃないかな、と思いますの。最近の話を聞いてて、そう感じただけなんですけど」
「そうなんだ。それなら、遠出の旅行はやめといた方がいいね。そうか。カイたちも結婚して2年過ぎたし、そろそろかもしれないね。それなら、2人に良いお土産を探してこようか」
「はい」
嬉しそうに微笑むアニエスに、僕も嬉しくなる。
カイもマリア嬢も、アニエスの大切な人だ。それを蔑ろにする夫にはなりたくない。
そうして、僕たち家族は、ブロッサム皇国へと家族旅行に出かけることになった。
ブロッサム皇国は、小さな国だ。
だが、僕たちの国で見ることのない、木で作られたお風呂や、コメと言われる粒状の食べ物。キモノと言われる不思議なドレスなど、目を見張るものばかりだった。
そして、アニエスが見たいと言ったサクラは、とても美しい花だった。
風に吹かれて、ハラハラと散るピンク色の花びらに、アークとマーガレットが喜ぶ横で、アニエスはどこか懐かしそうに木を見上げていた。
「アニエス?」
「私、この花がとても好きです」
そう言ったアニエスは、ずっと風に舞う花びらを見つめていた。
その後、ブロッサム皇国皇族から、我がハイドランジア王国へサクラの木が贈られ、王宮の庭に植えられたのは、また別の話である。
「ねぇ、マリウス様。ブロッサム皇国に行ってみたいです」
「どうしたの?突然」
「みんなで旅行に行きませんか?」
旅行?
確かに、アニエスと結婚してからすぐに、アークとマーガレットを授かったから、旅行には行けていない。
だけど、どうしてブロッサム皇国なんだ?あそことは国交もないし、アニエスが行きたくなる要素があるのか?
「私たちは新婚旅行には行けなかったでしょう?だから、家族旅行になりますけど、みんなで旅行に行きたいのです」
「旅行は構わないけれど、どうしてブロッサム皇国なんだい?知り合いでもいるの?」
声が剣呑になってしまったのは、それが男かもしれないと思ったからだ。
結婚して子供もいるというのに、僕のアニエスへの想いは増える一方だ。
僕の様子に気づいているアニエスは、クスクスと笑いながら僕の頬にキスをしてくれた。
「困った方ね。知り合いなんていませんわ。ただ・・・」
「ただ?」
「あの国にあるという桜が見たいのです」
「サクラ?」
そういえば、聞いたことがある。
ブロッサム皇国には、ピンク色の儚げな花が咲く木があるのだとか。
「マリア様の髪と瞳のような、綺麗なピンク色の花なのです・・・って。それを見たいのです」
もちろん、愛しいアニエスの望みだ。
新婚旅行にも行けなかったし、ちょうど今は仕事もそんなに忙しくはない。
もうすぐ3歳になるアルクとマーガレットも、そう手はかからないし、どちらにせよ侍女たちは連れて行くのだ。
「カイとマリア嬢も誘う?」
「ありがとうございます、マリウス様。でも、やめておきますわ」
「そう?」
珍しい。
アニエスはマリア嬢のことをとても大切にしているから、彼女と同じ色合いの花なら、見せたいだろうと思ったのに。
「マリアは・・・多分ですけど、赤ちゃんが出来たんじゃないかな、と思いますの。最近の話を聞いてて、そう感じただけなんですけど」
「そうなんだ。それなら、遠出の旅行はやめといた方がいいね。そうか。カイたちも結婚して2年過ぎたし、そろそろかもしれないね。それなら、2人に良いお土産を探してこようか」
「はい」
嬉しそうに微笑むアニエスに、僕も嬉しくなる。
カイもマリア嬢も、アニエスの大切な人だ。それを蔑ろにする夫にはなりたくない。
そうして、僕たち家族は、ブロッサム皇国へと家族旅行に出かけることになった。
ブロッサム皇国は、小さな国だ。
だが、僕たちの国で見ることのない、木で作られたお風呂や、コメと言われる粒状の食べ物。キモノと言われる不思議なドレスなど、目を見張るものばかりだった。
そして、アニエスが見たいと言ったサクラは、とても美しい花だった。
風に吹かれて、ハラハラと散るピンク色の花びらに、アークとマーガレットが喜ぶ横で、アニエスはどこか懐かしそうに木を見上げていた。
「アニエス?」
「私、この花がとても好きです」
そう言ったアニエスは、ずっと風に舞う花びらを見つめていた。
その後、ブロッサム皇国皇族から、我がハイドランジア王国へサクラの木が贈られ、王宮の庭に植えられたのは、また別の話である。
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