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番外編
攻略対象たちのバレンタイン事情
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この世界には、バレンタインというものはない。
そもそも、バレンタインとはキリスト教司教の名で、ローマ皇帝に処刑された日が2月14日だというもの、らしい。
だから、別にチョコレートをあげるという必要性はないし、そういう習慣はないわけだが、前世の記憶のある私としては、ちゃんと恋人となったマリウスに贈りたいという気持ちが芽生えていた。
「チョコレートですか?」
マリア、それからレイノルドの婚約者であるイザベラとお茶をしながら、好きな人にチョコレートを贈らないかという話を切り出した。
あ。この世界にもチョコレートはある。高級菓子とされてるけど。
前世でいうところの、ゴディ○とかって感じ。綺麗な宝石みたいにショーケースに並んでいる。
マリアは平民だから、食べる機会はなかったみたいだけど、イザベラは伯爵家のご令嬢だから一応知ってるみたいだった。
ちなみに、公爵家令嬢の私も自分用に買いはしないけど、お茶会の時とかに用いたりはする。
今回、2人に持ちかけているのは、そのチョコレートの手作りである。
いや。手作りと言っても、溶かして型にはめるだけだけど。
トリュフもいいけど、チョコスプレーがないのよね。
「好きな人にね、チョコレートをあげるの。女性から告白してもいい日って言われてるわ」
「そうなのですね。相変わらず、アニエス様は物知りですわね。我が国でも流行るかしら?」
本来、ヨーロッパでは、花束やカードを贈り合う日らしいし。
日本のバレンタインって、お菓子メーカーに踊らされてるのよね。
だから贈り物をする日って思えば良いんだろうけど、その場合クリスマスと区別がつかないわ。
やっぱり、好意を伝える日ってことにした方がいいのかも。
「女性から告白しても良い日だなんて、素敵ですわ」
「貴族の方々は、婚約者がいらっしゃる方が多いですから、恋愛という感覚は少ないのですか?」
マリアの疑問に、イザベラがそうですわねぇ、と頷いている。
「私たちの婚約は、家と家の契約で結ばれることが多いですから。もちろん、殿下とアニエス様のように相思相愛になれる場合もありますけど、基本は恋愛感情から入りはしませんわね」
「そう言うイザベラ様もノックス様と相思相愛でしょう?」
「でも、もし恋愛としての好きにならなかったとしても、結婚したと思いますわ。それが、私たちの役目ですものね」
まぁ確かに、よっぽどのことがない限り、婚約を解消することなどあり得ない。
「なら、チョコレートを贈られたら、想われてるって男性の方も気付けて、喜ばれるかもしれませんね」
確かに。
お慕いしていますと言っても、社交辞令としか思わなくても、もしバレンタインが定着して、婚約者からチョコレート、しかも手作りとか贈られたら、嬉しいかもしれない。
「レイノルド様、喜んでくれるかしら?」
「ノックス様が、イザベラ様からの品に喜ばないってあり得ないと思いますわ」
イザベラの言葉に、思わずそう言ってしまう。
こうして、私たちのバレンタインへの挑戦は始まった。
そもそも、バレンタインとはキリスト教司教の名で、ローマ皇帝に処刑された日が2月14日だというもの、らしい。
だから、別にチョコレートをあげるという必要性はないし、そういう習慣はないわけだが、前世の記憶のある私としては、ちゃんと恋人となったマリウスに贈りたいという気持ちが芽生えていた。
「チョコレートですか?」
マリア、それからレイノルドの婚約者であるイザベラとお茶をしながら、好きな人にチョコレートを贈らないかという話を切り出した。
あ。この世界にもチョコレートはある。高級菓子とされてるけど。
前世でいうところの、ゴディ○とかって感じ。綺麗な宝石みたいにショーケースに並んでいる。
マリアは平民だから、食べる機会はなかったみたいだけど、イザベラは伯爵家のご令嬢だから一応知ってるみたいだった。
ちなみに、公爵家令嬢の私も自分用に買いはしないけど、お茶会の時とかに用いたりはする。
今回、2人に持ちかけているのは、そのチョコレートの手作りである。
いや。手作りと言っても、溶かして型にはめるだけだけど。
トリュフもいいけど、チョコスプレーがないのよね。
「好きな人にね、チョコレートをあげるの。女性から告白してもいい日って言われてるわ」
「そうなのですね。相変わらず、アニエス様は物知りですわね。我が国でも流行るかしら?」
本来、ヨーロッパでは、花束やカードを贈り合う日らしいし。
日本のバレンタインって、お菓子メーカーに踊らされてるのよね。
だから贈り物をする日って思えば良いんだろうけど、その場合クリスマスと区別がつかないわ。
やっぱり、好意を伝える日ってことにした方がいいのかも。
「女性から告白しても良い日だなんて、素敵ですわ」
「貴族の方々は、婚約者がいらっしゃる方が多いですから、恋愛という感覚は少ないのですか?」
マリアの疑問に、イザベラがそうですわねぇ、と頷いている。
「私たちの婚約は、家と家の契約で結ばれることが多いですから。もちろん、殿下とアニエス様のように相思相愛になれる場合もありますけど、基本は恋愛感情から入りはしませんわね」
「そう言うイザベラ様もノックス様と相思相愛でしょう?」
「でも、もし恋愛としての好きにならなかったとしても、結婚したと思いますわ。それが、私たちの役目ですものね」
まぁ確かに、よっぽどのことがない限り、婚約を解消することなどあり得ない。
「なら、チョコレートを贈られたら、想われてるって男性の方も気付けて、喜ばれるかもしれませんね」
確かに。
お慕いしていますと言っても、社交辞令としか思わなくても、もしバレンタインが定着して、婚約者からチョコレート、しかも手作りとか贈られたら、嬉しいかもしれない。
「レイノルド様、喜んでくれるかしら?」
「ノックス様が、イザベラ様からの品に喜ばないってあり得ないと思いますわ」
イザベラの言葉に、思わずそう言ってしまう。
こうして、私たちのバレンタインへの挑戦は始まった。
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