転生ガチャで悪役令嬢になりました

みおな

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気付かないふりをしてた《チェリー視点》

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「僕の名前は、ラクトウェル。ラクトウェル・グラディウス。このグラディウス王国の第2王子で、コンフェルト嬢の婚約者であるクリストフ王太子殿下の弟なんだ」

 ドクン!と心臓が嫌な音をたてる。
胸元で、キツく手を握った。

 本当は、どこかでそうじゃないかって思ってた。

 まさか王子様とは思ってなかったけど、公爵家のジェライトさんや侯爵家のレビンさんといつも一緒にいたから。

 それに、ラクトくん・・・ラクトウェル殿下の着ている服も、所作も、洗練されていることが、今ならわかる。

 私は、知らなかったとはいえ、王族の方を愛称で呼んで、高位貴族のご子息たちとも仲良くしていたのね。

 学園で何も嫌がらせをされなかったのは、きっとラクトウェル殿下がそばにいたから。

 いずれ、必ず何かされることになる。
きっとそう思って、ルミナス様は私に侍女見習いとして教育をしてくださってるんだわ。

 だって今ならわかる。
どれだけ殿下や高位貴族の彼らが仲良くしてくれたとしても、私は平民。

 それを悪いことだとは思っていないし、貴族になりたいと思ってもいない。

 分かっているのは、釣り合わないってことだけ。

 公爵家のご令嬢で、完璧な所作のルミナス様でさえ、あんなに毎日学んでらっしゃるの。

 歩き方。話し方。カップの持ち方。
そんなのは初歩中の初歩だって、レイラさんも言ってた。

 公爵家の使用人は、みんな洗練されてて、見習いといえ私なんかが混じったらいけないんじゃないかって思ったわ。

 でも、みんな優しかった。
最初はみんな初めてなんだから、素直に聞いて覚えていけば良いって。

 最初は、紅茶ひとつ上手に淹れられなかった。
 何度も同じ失敗をすれば叱られたけど、理不尽に叱られたことはない。

 叱ったあとは、必ず甘いお菓子をくれて、次は頑張りなさいって励ましてくれた。

 段々、色んなことを覚えるのが楽しくなって、公爵家に通うのが楽しくなった。

 学園では、なるべく女の子たちと一緒にいるようにした。

 ジェライトさんたちも近付いてこなくなったし、私がコンフェルト公爵家で侍女見習いをしてるって言ったら、ご令嬢方も親切とまではいかないけど、意地悪されることはなかった。

 それに見習いといっても、お給金をくれて、それで暮らしはすごく楽になって、お父さんやお母さんの力になれて嬉しかった。

 だから、気にしないようにしてたの。
『ラクトくん』は、私とは釣り合わない人で、友達にもなれない人なんだって。

 会ってて楽しかったことも、ドキドキしたことも、全部夢だったんだって、そう思おうとしてたの。



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