悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

公爵令嬢は流行の先端です

　貴族の夫人や令嬢たちの流行は、一般的に王妃や高位貴族のご夫人ご令嬢が扱うものから始まる。

　夜会やお茶会で広まるそれは、ドレスの型だったり、色だったり、デザインだったり。
　髪型だったり、化粧品だったり、食べ物だったりと様々だ。

　そしてアデライン王国の流行を作っているのは、フィオレンサ公爵家である。

　フィオレンサ公爵夫人がアデライン王国王妃ヘスティアに渡し、そして自身もお茶会や夜会で披露する。

　そのほとんどは、公爵夫人マーガレットの娘であるルーナが立ち上げた商会が手がけている商品だ。

　現在ルーナが立ち上げた商会は、喫茶室を併設したスィーツ店が二種。

　化粧品を扱う商会。髪飾りなどのアクセサリーを扱う商会と貴金属を扱う商会。

　生活用品として使える魔法具を販売する商会。

　そして現在、医療機関や服飾機関など、専門職を目指す人間を育てるための学校設立まで手がけようとしているらしい。

　流行の先端というより、ルーナがアデライン王国を運営していると言いたくなるような状況である。

　だが、ルーナは発案し手がけはするが、決して表舞台に立とうとはしない。

　商会の商会長は父親であるシリウスだったり、母親であるマーガレットとし、運営自体は店舗責任者に任せている。

　試行錯誤して成功すれば報酬を、失敗すればどうすればいいか一緒に考える。

　商会を悪用しようとすれば当然のことながら解雇され、二度もまともな職に就けない。

　アデライン王国でフィオレンサ公爵家に睨まれれば、立ち行かないのだ。

　その怖さを知っている上に、ルーナは上手くその人間の良いところや特技を活かせて適材適所に配置していて、商会に雇われている人間が不満を口にすることはなかった。

　王妃ヘスティアにすれば、それこそ喉から手が出るほどルーナを手に入れたい。

　人を見る目、人を上手く使える能力、本人の資質、どれを取っても国母として最上なのだ。

　だが無理強いして、フィオレンサ公爵家がアデライン王国から出て行ってしまったら、アデライン王国は衰退してしまう。

　公爵家が扱う商会全てが、潰れてしまう可能性があるからだ。

　従業員はアデライン王国の人間だし、商会長は公爵夫妻が担っているが、運営自体は従業員が行っている。

　だから公爵家は、商会を潰したりはしないだろう。

　だが、この商会の新商品の開発や発案は、全てルーナがしているのだ。

　ルーナがいなくなれば、現状の商品しか作れず、そのうち別の国で新しい商品が発売されれば、衰退していくしかなくなるのだ。

　そんな危険な橋を渡るわけにはいかなかった。