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おとといきやがれ、ですわ

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 呆然としている元婚約者様ですが、隣のユリア様のおっしゃった言葉に、ハッと顔を上げました。

「え?王様死んじゃったの?あの意地悪な王妃様も?なら、エリック様が王様ってこと?」

 何故、そんな理論になるのか理解できません。

 お母様のお話を聞いていましたか?
セオドア王国は、シュワルミット王国の属国になることが決まっているのです。

 シュワルミット王国が、セオドア王国の崩壊の原因であるその方を、名だけの王としても担ぎ上げるわけがありません。

 そして、元婚約者様。
あれほど甘やかせてくれたお母様の死よりも、国王という座が大切ですか?

 ユリア様は王妃様のことを意地悪、とおっしゃいましたけど、多分わたくしに対する態度と変わらなかったと思いますわ。

 わたくしは、王太子殿下を支えるための勉強であったことと、ユリア様は令嬢としての勉強であったことの差はあるでしょうが。

 王妃様にとって大切なのは、息子の王太子殿下だけ。

 だから、ユリア様を婚約者にと望まれたことも受け入れて下さったでしょう?

 考え方やされていたことは納得できませんが、あの方が誰よりも息子を愛していたことは分かります。

 それなのに。

「僕が・・・国王・・・」

「いえ。そんなことをシュワルミット王国が許すわけがありませんわ。そもそも、そのシュワルミットに奴隷として参りますのよ?」

「はぁ?そっちこそ何言ってるのよ。王様が死んじゃったんだから、息子のエリック様が王様になるのは当たり前でしょ!そのシュ、何とかは関係ないじゃない!」

 は?
どういう理屈でしょうか?意味不明なのですが。

 確かに世襲制のセオドア王国ですから、国王陛下亡き後に王太子殿下が後を継ぐのは当たり前です。

 ですが、その方はすでに王太子どころか王族ですらないのですよ?

「王族でもない平民の奴隷が国王になれたら、世界の終わりよ」

 お母様が大きくため息を吐かれます。
お気持ちは分かりますわ。どうしてこうも話が通じないのかしら。

「え、あ、いや・・・そ、そうだ!あ、アリスティアが王妃になってくれれば・・・」

「いい加減に、わたくしの名前を呼ぶのはやめてくださいますか?不敬で罪を増やしますわよ」

「ちょっと!エリック様?私がいるでしょっ!」

「ユリアに王妃なんて無理だろう?全然勉強が進まないと母上も言っていた。大丈夫だ。側妃にすれば・・・」

 セオドア王国は、一夫一妻制で側妃も認められていませんわよ。

 基本的に間違っておられますけど、もしもこの方が王太子のままだったとしても、わたくしがこの方と結婚?

 冗談じゃありません。おとといきやがれ、ですわ。
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