私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

文字の大きさ
49 / 105

49.拒絶させてもらいます

しおりを挟む
「あ、アイシュ!」

 辺りを見回している時点で、嫌な予感はしていたのよ。

 私の元に駆け寄って来た。

「アイシュ!僕は本当に君を愛しているんだっ!」

「アイシュ!わたくしたち、お友達でしょう?その、アスランのことは謝るわ。れ、レオナルド様がお留守で寂しくて、その・・・」

「・・・」

 呆れてものが言えないわ。

 婚約者が留守で寂しいからって、その度に不貞をされたらたまらないわよ。

 それに確かに決定的になったのは、私と王太子殿下が留守になってかららしいけど、それらしき傾向はあったと聞いたわ。

「アイシュ!許してくれるよね?君も僕のことを愛してくれているだろう?もう二度とふらついたりしない。君のことが本当に好きなんだ!」

 私を抱きしめようと伸ばして来た手を、リュカがはねのけた。

「ッ!お前っ、僕は王族だぞっ!処罰されたくなければそこを退けっ!」

「処罰されるというのなら、甘んじて受けましょう。ですが、お嬢様に触れさせるわけにはいきません」

「僕は婚約者だぞっ!」

「あら?婚約は国王陛下が白紙撤回してくださいましたわ。ですから、私と第二王子殿下は婚約者ではございませんわよ」

 リュカが守ってくれている後ろから、反論だけさせてもらう。

 もちろん、リュカを処罰なんてさせないわ。

「アイシュ!」

「あらあら。婚約者でもない令嬢を、名で呼ぶのは失礼でしてよ。私のことはフローレンス公爵令嬢と家名でお呼びください」

「き、君は僕を愛してくれていたんじゃないのか?」

「私にとって第二王子殿下は、初恋の方でしたわ。生まれた時からの婚約者に好きな方が出来て婚約解消となった時、婚約を申し込んでくださったこと感謝していますわ。この方とならお互いずっと信じ合い思い合えると思っておりましたのに・・・まさかこんな裏切りにあうとは思いもしませんでした。それも、実のお兄様の婚約者とだなんて!ずっと好きだったからと告白されて、結局お気持ちに応えたんでしょう?そんな手で触れないで下さいませ。気持ち悪い」

 最後まではしていないけど、それに準ずる行為はしていたとお聞きしている。

 最後までしなかったのは、王太子殿下との婚姻の際、純潔である証が必要だから。

 もしそうでなければ、最後までしていたわよね。

 私に気持ち悪いと言われて、アスラン殿下はその場に崩れ落ちた。

 周囲の蔑むような視線は、鋭さを増している。

「アイシュ、その・・・ごめんなさい。許してもらえないかもしれないけど、わたくし・・・」

「ええ。許しません。私とアイボリー公爵令嬢様はではなかったようですから、私のことを名で呼ぶのはおやめください」

「何故そんな酷いことを言うの?わたくしたち、仲良くしていたじゃない!初めての友達だって言ってくれたでしょう?」

 でも、貴女は友情よりを取ったのよね?
しおりを挟む
感想 214

あなたにおすすめの小説

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。

婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜

みおな
恋愛
 王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。 「お前との婚約を破棄する!!」  私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。  だって、私は何ひとつ困らない。 困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ

みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。 婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。 これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。 愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。 毎日20時30分に投稿

処理中です...