私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな

文字の大きさ
71 / 105

71.王太子として〜クライゼン王国王太子視点〜

しおりを挟む
 アイシュ・フローレンス公爵令嬢。
本当なら、私の妹になる予定だったマデリーン王国の公爵令嬢だ。

 銀の髪に銀の瞳をしたとても麗しい令嬢は、弟アスランの初恋の相手だった。

 幼い頃に、フローレンス公爵家に預けられていたアスラン。

 初恋の相手は、マデリーン王国の王太子殿下の婚約者で、叶わない恋だった。

 だが、そのウィリアム王太子殿下が別の女性と恋に落ち、アスランはフローレンス嬢と婚約することが出来た。

 素直に・・・
嬉しいと思った。

 アスランは第二王子で、フローレンス嬢は公爵家の一人娘。

 国は離れてしまうが、フローレンス公爵家へ婿入り出来ることは、アスランにとって最善だと思えた。

 元々アスランは、我が国の公爵家であるアイボリー家の一人娘であるフランチェスカと婚約する予定だった。

 だが、私の年代に王太子妃としての家格と資質のある令嬢がいなかったため、私の婚約者となったのだ。

 政略結婚だが、私は私なりにフランチェスカを婚約者として大切にしてきたつもりだった。

 五歳離れていることもあり、すでに私は王太子としての公務を行っている。

 だからいつもそばにいるというわけにはいかないが、王太子妃教育を頑張る彼女を労い、可能な限り時間を共にするようにしていた。

 確かに、彼女は優秀だった。
家格も公爵家で問題なく、王太子妃教育も無事に終えた。

 だが私も両親も、フランチェスカの性根までは見抜けなかったようだ。

 彼女はこともあろうに、アスランがフローレンス嬢と婚約したことに、アスランと不貞行為をしたのだ。

 アスランが拒めば良かった話だが、元々が同い年で仲の良かったために、涙ながらに一度だけと迫られ、冷たく突き放すことが出来なかったのだろう。

 だが、その場面をフローレンス嬢に見られてしまった。

 フローレンス嬢の目はアスランを完全に拒絶していた。

 国王陛下である父上は、アスランを廃籍の上でフランチェスカと共にレイホリック聖国へ国外追放するつもりだった。

 仕方ない。
かつて婚約者の心変わりで婚約解消をしているフローレンス嬢を、初恋だと言いながら裏切ったアスランも、友人だと言いながら裏切ったフランチェスカも許せない。

 最初は情に流されただけかもしれない。

 だが、第二王子であり公爵令嬢の婚約者という立場は、その甘さを許してはもらえない。

 私にとってアスランは、大切で可愛い弟

 アイツが初恋の相手と婚約できたことも、心から嬉しいと思っていた。

 父上も母上も、本当に喜んでいたのに・・・
しおりを挟む
感想 214

あなたにおすすめの小説

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした

カレイ
恋愛
 子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き…… 「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」     ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?

全てがどうでもよくなった私は理想郷へ旅立つ

霜月満月
恋愛
「ああ、やっぱりあなたはまたそうして私を責めるのね‥‥」 ジュリア・タリアヴィーニは公爵令嬢。そして、婚約者は自国の王太子。 でも私が殿下と結婚することはない。だってあなたは他の人を選んだのだもの。『前』と変わらず━━ これはとある能力を持つ一族に産まれた令嬢と自身に掛けられた封印に縛られる王太子の遠回りな物語。 ※なろう様で投稿済みの作品です。 ※画像はジュリアの婚約披露の時のイメージです。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。 これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。 実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。 自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。

【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。

曽根原ツタ
恋愛
 ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。  ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。  その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。  ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?  

記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。 眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。 侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。 ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。 彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。

処理中です...