決めたのはあなたでしょう?

みおな

文字の大きさ
1 / 82

婚約者の望むこと

「アリス。話がある」

 何かを決意した表情で、話しかけて来たサイード様に、私は彼に気づかれないように小さく息を吐きました。

 こうなることはわかっていました。
サイード様が何を話そうとしているのか、私には想像がついていたのです。

 私の目の前に立つサイード・スペンサー様は、スペンサー侯爵家の次男です。

 金髪碧眼に、精悍な顔つき。
騎士団に籍を置き、毎日鍛錬されていることで、とても鍛えられたご容姿をされています。

 私は、読んでいた本を閉じると、ベンチから立ち上がりました。

「どうされたのですか?サイード様」

 疑問の形を取っていますが、私はサイード様が何を仰ろうとしているのか、予想はついていました。

 ついてはいましたが、そうでなければ良いと思っていたのです。

 サイード様は躊躇いをみせた後、意を決したようにわたしに向き合われました。

「アリス。君との婚約は解消させて欲しい。僕は、ナターシャを愛しているんだ」

「サイード様。私たちの婚約はスペンサー侯爵家からの申し入れとはいえ、政略的なものです。私たち個人が勝手に結んだり解消したりは出来ないことはご存知でしょう?」

 貴族の婚約婚姻は、家と家の『契約』を意味しています。

 私、アリス・ジョージアナとサイード・スペンサー様との婚約も、両家の当主が政略的なものとして結んだものです。

 それを当事者とはいえ、私たちが勝手に解消することなどできるわけがありません。

「だが・・・僕はナターシャを愛しているんだ」

「サイード様が、ナターシャ様をお好きなことは理解しましたわ。ですが、私にそれをおっしゃられても困ります。どうしても婚約を解消したいのなら、お父様であるスペンサー侯爵にお願いしてくださいませ」

 苦悶の表情で、何度もナターシャ様への愛を語られるサイード様に、私は仕方なく解決案をお伝えします。

 お父上であるスペンサー侯爵家の当主様に、婚約解消をお願いすれば良いのですわ。

 スペンサー侯爵家は、サイード様のお兄様がお継ぎになると決まっています。

 次男のサイード様には、婚姻後にジョージアナ伯爵家を継ぐ私の伴侶になってもらう予定でした。

 ですが、それほどまでにナターシャ様をお好きなのなら、私と添い遂げることは難しそうです。

 政略結婚が貴族の令嬢の義務とはいえ、私もお互い思い思われる関係を築きたいですもの。

 お父様にはお手を煩わせてしまいますが、新たな婚約者を探していただかなければなりませんね。


 








 
感想 195

あなたにおすすめの小説

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?

ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」 その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。 「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令息サディアスはメイドのリディと恋に落ちた。 婚約者であった伯爵令嬢フェルネは無残にも婚約を解消されてしまう。 「僕はリディと真実の愛を貫く。誰にも邪魔はさせない!」 サディアスの両親エヴァンズ伯爵夫妻は激怒し、息子を勘当、追放する。 それもそのはずで、フェルネは王家の血を引く名門貴族パートランド伯爵家の一人娘だった。 サディアスからの一方的な婚約解消は決して許されない裏切りだったのだ。 一ヶ月後、愛を信じないフェルネに新たな求婚者が現れる。 若きバラクロフ侯爵レジナルド。 「あら、あなたも真実の愛を実らせようって仰いますの?」 フェルネの曾祖母シャーリンとレジナルドの祖父アルフォンス卿には悲恋の歴史がある。 「子孫の我々が結婚しようと関係ない。聡明な妻が欲しいだけだ」 互いに塩対応だったはずが、気づくとクーデレ夫婦になっていたフェルネとレジナルド。 その頃、真実の愛を貫いたはずのサディアスは…… (予定より長くなってしまった為、完結に伴い短編→長編に変更しました)

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

私はあなたの正妻にはなりません。どうぞ愛する人とお幸せに。

火野村志紀
恋愛
王家の血を引くラクール公爵家。両家の取り決めにより、男爵令嬢のアリシアは、ラクール公爵子息のダミアンと婚約した。 しかし、この国では一夫多妻制が認められている。ある伯爵令嬢に一目惚れしたダミアンは、彼女とも結婚すると言い出した。公爵の忠告に聞く耳を持たず、ダミアンは伯爵令嬢を正妻として迎える。そしてアリシアは、側室という扱いを受けることになった。 数年後、公爵が病で亡くなり、生前書き残していた遺言書が開封された。そこに書かれていたのは、ダミアンにとって信じられない内容だった。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜

真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。 しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。 これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。 数年後に彼女が語る真実とは……? 前中後編の三部構成です。 ❇︎ざまぁはありません。 ❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。