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誰ルートなの?

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 やっぱり、リリーのデザートには、チーズケーキとフルーツタルトが用意されてた。

 ふふっ。
リリーってば、嬉しいのにそれを表情に出さないように我慢してる。

 そして私の隣に座るハルト様が、ショートケーキとプリンを差し出してくれた。

「ちゃんと用意した」

「あ、ありがとうございます。すごく嬉しいです」

 にっこりと微笑むと、ハルト様がちょっとだけ笑った気がした。

 今日は、リリーは私の左隣に座っていて、ハルト様は右隣。

 リリーの左隣にはロキ・アルスタン。
エミリオ殿下とギルクは斜め前に。リリーの正面はエルガルド・リファイン。

 私が隣にいることで、リリーの塩対応は少しだけマシで、攻略対象たちもそれなりに嬉しそうだ。

 私に至っては、今日も推しの隣でランチを食べれて、会話も出来る幸せに昇天しそう。

 何のご褒美?
もしかして、私死ぬの?

「むぅ」

「ブロッサム嬢?チーズケーキはお気に召さなかったかい?」

「・・・ケーキは美味しいです」

 あら?
少しムクれた様子のリリーだけど、エミリオ殿下の問いかけに、珍しく答えている。

 リリーは本来は素直だ。
人に好かれる性格で、人懐っこい。

 ちょっとは打ち解けてきてるみたいで、ホッとした。

 概ね、いい感じでランチを終えたあと、エミリオ殿下が切り出した。

「クモリス公爵令嬢たちの件だが、僕たちの方から厳重注意をしておいた。この国で重要視されるのは政略結婚ではない。僕たちブロッサム嬢たちと親しくなりたいのを邪魔する権利は誰にもなく、また逆にクモリス公爵令嬢たちが僕たちと親しくなりたいのなら、彼女たちが行動する相手は僕たちであり、ブロッサム嬢たちではない。彼女たちも理解したと思うが、もしまた何かあれば話して欲しい」

「・・・わかりました」

 実はこれ、イベントのひとつである。

 この乙女ゲームには、基本的に悪い人って存在しない。

 まぁ、恋のライバルは存在しても、ヒロインの人柄なのか何なのか、悪質なことをされることはない。

 ゲーム内では、このイベントはもう少し後半、ヒロインが攻略対象のルートに入って好感度が八割超えになった時点で起こる。

 恋のライバルが現れて、ヒロインは小さなイジメを受ける。

 それで選択肢を間違えなかったら、攻略対象がライバルに注意を施して、ヒロインへの好感度が上がるというイベントなのだ。

 ちなみに選択肢を間違えると、ライバルと攻略対象が親しくなって好感度が下がる。

 盛り返しのイベントはあるけど、他の攻略対象との好感度とか影響するイベントなので、ハッピーエンドには難しくなる。

 あれ?イベント発生、早くない?
リリーって、誰ルートなの?
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