気弱令嬢の悪役令嬢化計画

幸せになって！

　エリーゼの結婚式。

　王太子殿下と聖女の結婚式ということで、国中の貴族がお祝いに集まった。

　シェリエメール王国からは、王太子殿下ご夫妻とカイン様が参列してくれた。

　そう。
こちらも無事にご成婚された。

　私も結婚式には参列させてもらった。

　あの、自分は年上でないと・・・と情けなさそうに言っていた王太子殿下が、本当に憑き物が落ちたみたいに幸せそうだったのが印象的だった。

「エリーゼお姉様、おめでとうございます」

　今日からエリーゼは王宮で暮らす。

　辺境伯家に婿に行ったイグニス兄も、今日は帰って来てるけど、明日には向こうへ帰るそうだ。

　アスラン兄とその奥さんはいるけど、そのうちアスラン兄に爵位を譲ったら、両親も領地に引っ込むらしい。

　ああ。
ランディは、騎士団長の娘さんの猛アタックを受けて、去年婚約した。

　なかなかパワフルなご令嬢でカラッとした言動だけど、実は中身は乙女でランディに一目惚れしたということを私は知っている。

　ランディも先代の教育を受けて逞しくなり、イグニス兄の抜けた騎士団で頑張っている。

　私も・・・
来年には答えを出さなければならない。

　この四年間、定期的にシェリエメール王国に遊びに行っては、カイン様と交流した。

　カイン様は本当に誠実で、カケラも浮気の気配もない。

　王太子殿下や使用人の方々にも口を揃えて、お嫁に来てくれないとカイン様は一生独り者ですって言われた。

　相変わらずその身分と容姿で、女の子ホイホイみたいに引き寄せてるみたいだけど、とにかく塩というかブリザード対応らしい。

　いいのか、王族がそれで。

　まぁ、誰にでも優しい人というのはちょっとなと思うし、カイン様は信用できる人だと思う。

「アイリーン。寂しいわ、アイリーンと離れるなんて。会いに来てね？なんなら今夜泊まりに来ない？」

「・・・馬に蹴られたくないので、今夜はやめておきます」

　エリーゼ。今夜は初夜だよ？
王太子殿下の気持ちも考えてあげようよ。

　こんな可愛い花嫁を見たら、王太子殿下も当分離したくないでしょうよ。

「じゃあ、明日！明日は？」

「あー、えと明日はカイン様のところに行く予定なので。帰って来たら、お土産持って会いに行きますね」

　絶対、一週間くらい蜜月でしょ。
出て来ないヤツだと思う。

　エリーゼには幸せになって欲しいし、ちょっと溺愛強強だけど、王太子殿下ならエリーゼを本当に大切にしてくれると思う。

　小説の中でランディに殺された後、泣いてアイリーンの冤罪を晴らしてくれたのは王太子殿下とエリーゼだったから。

　だから、幸せになってね、エリーゼ。