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ゲームの舞台

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 略奪系ゲーム『花盗人の夜』の舞台は、貴族の子息子女が通う学園。

 一応、ゲームが始まるのはエリザベートが十六歳になってからだけど、学園自体は十三歳から通う。

 この学園、基本的には貴族ならいくつからでも通えるし、いくつまででも通える。

 結構無理がある設定だと思ったけど、三歳年下のアーロン殿下とエリザベートと同い年のヒロインとの物語を紡がなきゃだから、仕方ないわよね。

 そもそも同い年にすれば良かったんだろうけど、ここにアーロン殿下と同い年のイザベリーナがヒロインと仲良くなって姉を悪役にするって展開があるから、仕方ないのよね。

 私と婚約してた時のアーロン殿下は・・・
 まぁはっきり言って子供だったわ。実際七歳だから子供だけど。

 言動が我儘過ぎて、攻略対象だけど「ないわぁ」と思ったくらいよ。

 でも、あれから三年。
イザベリーナ共々、しっかりと再教育されたアーロン殿下は、ちゃんと『王子様』らしくなっていた。

 ゲーム内の俺様系の我儘さは消え失せて、自分の立場を理解した『可愛い』男の子になった。

 正直言うと・・・
ちょっと好みかも。

 あの我儘なクソガ・・・もといお坊ちゃまは会話するのもうんざりだったけど、一生懸命自分のすべきことをやってるのって好感持てるよね。

 イザベリーナの方も、最初は癇癪をおこしてたけど、ゲーム内のエリザベートみたいな、立派な淑女となっていた。

 すごいな、王宮の先生方。

 これ、もしゲーム通りにヒロインが現れて、アーロン殿下と出会ったら・・・

 イザベリーナが悪役令嬢扱いになるんじゃないの?

 だってアーロン殿下の婚約者はエリザベートではなくイザベリーナ。

 そのイザベリーナは、エリザベートと同じようにちゃんとした淑女になったし、アーロン殿下も攻略対象として相応しい王子になった。

 ということは、本当にゲームが発生したら・・・

 私とアーロン殿下、そしてイザベリーナは今年学園に入学する。

 仲良しというわけじゃないけど、私とイザベリーナの関係は以前よりはマシになっている。

 少なくとも、イザベリーナが私の物を欲しがることはなくなった。

 両親もイザベリーナが無事に王子妃としてやっていけそうだと安心して、最近の関心は私の婚約者選びに移っている。

 私はというと、ようやく絵里ではなくエリザベートとしての生活に慣れた。

 お嬢様には全く縁のなかった私が、公爵令嬢としての言動を身につけるのは、イザベリーナが淑女らしくなるのと同じくらい大変だった、と思う。

 それでもなんとか、ゲーム舞台の学園へ明日入学する。


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