拝啓、婚約者様。婚約破棄していただきありがとうございます〜破棄を破棄?ご冗談は顔だけにしてください〜

みおな

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皆様、予想されているはず

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 力で押さえつけられれば、女の私では男の方に敵いません。

 ですが、お兄様がその程度のことを予想していないわけがありませんから、何か言っても計画は変わらないでしょうね。

 ユリウス様は、私が不貞をしたなどとおっしゃられないでしょうし、きっとお守りくださるはず。

 仕方ありませんわ。
他のご令嬢が毒牙にかかってもいけませんし、今回きっちりと片付けさせていただきましょう。

「ユリウス様とご一緒していたら、声をかけてこないのではありませんか?」

「いや、ああいう輩は悪知恵だけは働くんだ。例えば、父上だったり、僕だったりが呼んでいるとかだな。まぁ、ミリムは人一倍警戒心が強いから、一人で付いて行ったりはしないんだが」

「今回はついて行きましょうか?」

 お兄様ってば、失礼ですわね。
未婚の令嬢が、一人で殿方に付いて行って何かあったらと警戒するのは当然でしょう?

 付いて来た方も悪いと言われますのよ。

 男性は経験があっても何も言われないのに、女性には純潔であることを望む社会ですもの。

 警戒するのは当然ですわ。

「いや。いつも通りでかまわない。もしかしたら薬を盛るかもしれない。ユリウス、目を離すなよ」

「大事な妻をこんなことに巻き込んでもらいたくないが、仕方ない」

 薬ですか。
我が国では、媚薬の類も違法なのですけど、どれだけ罪を重ねるおつもりかしら。

「ラナリス様も、警戒しておいて欲しい。デルモンドは馬鹿だが、いや馬鹿だからこそ、小悪党にいい様に手のひらで転がされるからな」

「分かっていますわ。今回は王宮でのパーティーですけれど、影を付けておきますから」

 王家の方には、影と呼ばれる暗部の護衛の方々がいらっしゃいます。

 王宮以外でのパーティーやお茶会には、必ず付いて行かれるという話です。

 お会いしたことはありませんわ。
影の方のお顔を知っているのは、国王陛下に王妃殿下、ラナリス様。そしてラナリス様の婚約者となった時点で影が付くことになったお兄様だけです。

 臣下の我々は、影の存在すら知らないのが普通です。

 私は今回の件で、初めてそういう存在がいることを教えていただきましたの。

 今日この会場にいる方々で、ジャグリング公爵家であったことをご存知の方は一割程度。

 もちろん、そういう話は皆様お茶会などで広めて行きますから、知識として知っている方は半分くらいかしら。

 デルモンド様のしたことを知らなくても、ダリー伯爵家の悪い噂は皆様ご存知です。

 国王陛下が「ダリー伯爵家の人間には、パーティーの内容も何も話さないように」と通達を出された時点で、きっと何かが起こることを想像されているでしょうね。
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