恋とはどんなものかしら

みおな

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秘密の関係ってやつですね

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 王太后様の行動は早かった。

 翌日、王家から正式に、シオン王子の婚約者にとの申し入れが我が家にあった。

 私は、公爵家にある父様の執務室に呼ばれた。
 そこには、お父様とお母様、ルティシアがいた。

 ルティシアは私が部屋に入ると、駆け寄ってきて、ぎゅううっと抱きついてくる。
 いや、もうホント、コルセット並みに締め付けないで。

 「シオン王子の婚約者にとのことだ。どうする?」

 お父様は無駄なことは口になさらない。

 タンザナイト王国の宰相として、辣腕を振るわれ、周りの方々には魔王と呼ばれていると噂に聞いた。

 納得です。

 生まれて13年、私はお父様に優しい言葉をかけてもらった記憶がない。
 いや、別に厭われてるとかそういうんではない。
 多分、性格なのだろう。多くを語らないし、抱きしめてきたりとかそういう、溺愛感もない。

 でも、お母様はとても幸せそうだし、お父様も子供だからと言って、勝手に物事を決めたりしない。必ず、確認してくれる。
 だから、お父様は私を、私とルティシアを、とても大切にしてくれているのだと思う。

 「謹んでお受けいたします」

 そう言った私に、お父様は、うん?と視線を向けてくる。
 言葉で言ってください。私はお母様ではないんですから、以心伝心なんかしませんよ。

 「シオン殿下の事をお慕いしております」

 推したいではないですよ。いや、前世からの最推しですけどね。

 私の言葉に、お父様は「分かった」とうなづいた。
 登城するお父様は、そのまま執務室を出て行き、あとには、お母様とルティシアと私が残った。

 「ほんとうに?レティシア?」

 お母様が心配そうに近づいてきて、髪を撫でてくれる。
 ちなみに、ルティシアはずっとしがみついたままだ。

 おかしいなぁ。ヒロインって、こんなシスコンじゃなかった。
 いや、大切には思われてたと思うけど、今のルティシアは、攻略対象より私の方が好きそうで・・・
 え?私、ヒロイン攻略しちゃったの?

 「お姉さま」

 ぎゅうぎゅう締め付けてくる手に、そっと手をやると、ルティシアはその力を僅かに緩めた。
 うん。内臓出ちゃうからね。そして、令嬢の力じゃないからね、それ。

 「シオン殿下のことは、本当にお慕いしているの。子供の私をお相手してはいただけないと、諦めていただけで」

 ルティシアの気持ちがわかるから、私は正直に自分の気持ちを口にした。
 ルティシアも、お母様も、私が公爵家令嬢として、王家の申し出を受けたのだと心配している。

 だから、私がそう言うと、お母様はホッとした表情をされた。
 うん。愛されてるなぁ。

 「シオン殿下は聡明な方と伺っています。よかったわね、レティシア」

 「ありがとうございます。お母様」

 お母様とにっこり微笑み合う私に、ルティシアは不満そうに、でも、仕方なさそうに呟いた。

 「ゔー、私のお姉さまが・・・いや、でもお花畑よりはマシ・・・」

 可愛いルティシア、それ、レインハルト王子のことだよね?お花畑って、あれでも王子だからね?
 まぁ、私も思ったけどね。

 2日後、私はお父様と登城した。
陛下との謁見を賜るために。

 アルトハイン陛下は、金髪に碧眼の、もう、王様を完璧に具現化したような方だった。
 顔つきはレインハルト王子とよく似ていて、王子が年をとったら、こうなるのかなっていう顔をされていた。
 顔だけね。

 だって、威厳とか、レインハルト王子に備わる気がしない。
 その辺りは、王妃様似のシオン王子のほうが備わってるし。
 やっぱり、王太子として教育受けてるのと、7歳の年の差かしら。

 ちなみに、陛下の横には、王妃様、王太后様、シオン殿下がいらっしゃるけど、レインハルト王子の姿はない。

 「レティシア嬢、シオンとの婚約に同意してくれ、ありがたく思う」

 「陛下、もったいないお言葉です。私こそ、ありがたく思っております」

 しっかりと礼を取っていると、シオン王子が私の前へと降りてきた。

 「レティシア嬢。改めて申し込ませて下さい。私と、結婚していただけませんか?」

 手袋をはめた手をとられ、その指先にそっとくちづけられて、私はビクン、と硬直した。

 うわー!うわー!!

 王子様だ!・・・いや、ホントに王子様だったわ。ドキドキしちゃうなぁ。

 内心の狂喜乱舞を、能面の(本人談。あとで聞いたことによると、周りからはバレバレだったらしい)表情で隠して、私は微笑んだ。

 「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 「こちらこそ、よろしくね。私・・・僕のことはシオンと呼んで?」

 うわー!あまーい。

 手をとられたまま、シオン王子にメロメロになってると、陛下たちが微笑ましそうに見つめてくる。恥ずかしいから、見ないで下さい。

 「レインハルトには、もうしばらく伏せておく。だが、あれは子供ゆえ、レティシア嬢に迷惑をかけることもあるやもしれん。だから、婚姻の書を交わしておこう」

 「は?」

 突然の陛下の言葉に、思わずキョトンとしてしまった。婚姻って言いました?
 今日、婚約しましょうって話をしたばかりじゃ・・・

 「陛下。娘はまだ13歳です」

 あ。お父様の声が氷点下だ。お父様の言葉に、陛下が、だってね、と続ける。

 「あれだけ、どんなご令嬢に言い寄られても、ダンスひとつ踊らなかったシオンが、レティシア嬢と婚約したいって言うんだ。叶えてあげたいじゃないか」

 「ですから、今はまだ、婚約でよろしいでしょう」

 お父様、負けてないなぁ。というか、シオン王子、そんなふうに言ってくれてたんだ。・・・嬉しい。

 「レインハルトはねぇ、なんていうかお花畑だからねぇ。とにかく、公表はレティシア嬢のデビュタントまで待つとして、書はかわしておこう」

 陛下は譲るつもりはないみたいで、すでに署名済みの書類を私たちに差し出してきた。

 あ。陛下にまでお花畑って思われてるのね。あの王子。

 タンザナイト王国では、侯爵家以上の子息令嬢の婚姻には、陛下の認証が必要となる。
 陛下の署名、王家の捺印、あと本人達の署名で、初めて婚姻が認められる。

 お父様も、陛下が引き下がらない事を理解したのか、シオン王子に視線を向ける。

 「シオン殿下。婚姻しようと、娘はまだ13歳です。正式公表まで、節度ある交際を心がけていただきたい」

 「わかっています」

 そのあと、私とシオン王子が署名した婚姻の書は、王家で大切に保管されることになった。

 婚約をお受けする旨、登城したのに、なんか結婚してしまった。
 15歳までは、ここにいる6人以外の誰にも、ルティシアにも、内緒の関係。
 
 だけど、嬉しかった。
前世から、まともに恋をしたこともなかったけど。恋をすっ飛ばして、結婚って思ったけど。
 だけど、嬉しかった。
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