5 / 56
秘密の関係ってやつですね
しおりを挟む
王太后様の行動は早かった。
翌日、王家から正式に、シオン王子の婚約者にとの申し入れが我が家にあった。
私は、公爵家にある父様の執務室に呼ばれた。
そこには、お父様とお母様、ルティシアがいた。
ルティシアは私が部屋に入ると、駆け寄ってきて、ぎゅううっと抱きついてくる。
いや、もうホント、コルセット並みに締め付けないで。
「シオン王子の婚約者にとのことだ。どうする?」
お父様は無駄なことは口になさらない。
タンザナイト王国の宰相として、辣腕を振るわれ、周りの方々には魔王と呼ばれていると噂に聞いた。
納得です。
生まれて13年、私はお父様に優しい言葉をかけてもらった記憶がない。
いや、別に厭われてるとかそういうんではない。
多分、性格なのだろう。多くを語らないし、抱きしめてきたりとかそういう、溺愛感もない。
でも、お母様はとても幸せそうだし、お父様も子供だからと言って、勝手に物事を決めたりしない。必ず、確認してくれる。
だから、お父様は私を、私とルティシアを、とても大切にしてくれているのだと思う。
「謹んでお受けいたします」
そう言った私に、お父様は、うん?と視線を向けてくる。
言葉で言ってください。私はお母様ではないんですから、以心伝心なんかしませんよ。
「シオン殿下の事をお慕いしております」
推したいではないですよ。いや、前世からの最推しですけどね。
私の言葉に、お父様は「分かった」とうなづいた。
登城するお父様は、そのまま執務室を出て行き、あとには、お母様とルティシアと私が残った。
「ほんとうに?レティシア?」
お母様が心配そうに近づいてきて、髪を撫でてくれる。
ちなみに、ルティシアはずっとしがみついたままだ。
おかしいなぁ。ヒロインって、こんなシスコンじゃなかった。
いや、大切には思われてたと思うけど、今のルティシアは、攻略対象より私の方が好きそうで・・・
え?私、ヒロイン攻略しちゃったの?
「お姉さま」
ぎゅうぎゅう締め付けてくる手に、そっと手をやると、ルティシアはその力を僅かに緩めた。
うん。内臓出ちゃうからね。そして、令嬢の力じゃないからね、それ。
「シオン殿下のことは、本当にお慕いしているの。子供の私をお相手してはいただけないと、諦めていただけで」
ルティシアの気持ちがわかるから、私は正直に自分の気持ちを口にした。
ルティシアも、お母様も、私が公爵家令嬢として、王家の申し出を受けたのだと心配している。
だから、私がそう言うと、お母様はホッとした表情をされた。
うん。愛されてるなぁ。
「シオン殿下は聡明な方と伺っています。よかったわね、レティシア」
「ありがとうございます。お母様」
お母様とにっこり微笑み合う私に、ルティシアは不満そうに、でも、仕方なさそうに呟いた。
「ゔー、私のお姉さまが・・・いや、でもお花畑よりはマシ・・・」
可愛いルティシア、それ、レインハルト王子のことだよね?お花畑って、あれでも王子だからね?
まぁ、私も思ったけどね。
2日後、私はお父様と登城した。
陛下との謁見を賜るために。
アルトハイン陛下は、金髪に碧眼の、もう、王様を完璧に具現化したような方だった。
顔つきはレインハルト王子とよく似ていて、王子が年をとったら、こうなるのかなっていう顔をされていた。
顔だけね。
だって、威厳とか、レインハルト王子に備わる気がしない。
その辺りは、王妃様似のシオン王子のほうが備わってるし。
やっぱり、王太子として教育受けてるのと、7歳の年の差かしら。
ちなみに、陛下の横には、王妃様、王太后様、シオン殿下がいらっしゃるけど、レインハルト王子の姿はない。
「レティシア嬢、シオンとの婚約に同意してくれ、ありがたく思う」
「陛下、もったいないお言葉です。私こそ、ありがたく思っております」
しっかりと礼を取っていると、シオン王子が私の前へと降りてきた。
「レティシア嬢。改めて申し込ませて下さい。私と、結婚していただけませんか?」
手袋をはめた手をとられ、その指先にそっとくちづけられて、私はビクン、と硬直した。
うわー!うわー!!
王子様だ!・・・いや、ホントに王子様だったわ。ドキドキしちゃうなぁ。
内心の狂喜乱舞を、能面の(本人談。あとで聞いたことによると、周りからはバレバレだったらしい)表情で隠して、私は微笑んだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。私・・・僕のことはシオンと呼んで?」
うわー!あまーい。
手をとられたまま、シオン王子にメロメロになってると、陛下たちが微笑ましそうに見つめてくる。恥ずかしいから、見ないで下さい。
「レインハルトには、もうしばらく伏せておく。だが、あれは子供ゆえ、レティシア嬢に迷惑をかけることもあるやもしれん。だから、婚姻の書を交わしておこう」
「は?」
突然の陛下の言葉に、思わずキョトンとしてしまった。婚姻って言いました?
今日、婚約しましょうって話をしたばかりじゃ・・・
「陛下。娘はまだ13歳です」
あ。お父様の声が氷点下だ。お父様の言葉に、陛下が、だってね、と続ける。
「あれだけ、どんなご令嬢に言い寄られても、ダンスひとつ踊らなかったシオンが、レティシア嬢と婚約したいって言うんだ。叶えてあげたいじゃないか」
「ですから、今はまだ、婚約でよろしいでしょう」
お父様、負けてないなぁ。というか、シオン王子、そんなふうに言ってくれてたんだ。・・・嬉しい。
「レインハルトはねぇ、なんていうかお花畑だからねぇ。とにかく、公表はレティシア嬢のデビュタントまで待つとして、書はかわしておこう」
陛下は譲るつもりはないみたいで、すでに署名済みの書類を私たちに差し出してきた。
あ。陛下にまでお花畑って思われてるのね。あの王子。
タンザナイト王国では、侯爵家以上の子息令嬢の婚姻には、陛下の認証が必要となる。
陛下の署名、王家の捺印、あと本人達の署名で、初めて婚姻が認められる。
お父様も、陛下が引き下がらない事を理解したのか、シオン王子に視線を向ける。
「シオン殿下。婚姻しようと、娘はまだ13歳です。正式公表まで、節度ある交際を心がけていただきたい」
「わかっています」
そのあと、私とシオン王子が署名した婚姻の書は、王家で大切に保管されることになった。
婚約をお受けする旨、登城したのに、なんか結婚してしまった。
15歳までは、ここにいる6人以外の誰にも、ルティシアにも、内緒の関係。
だけど、嬉しかった。
前世から、まともに恋をしたこともなかったけど。恋をすっ飛ばして、結婚って思ったけど。
だけど、嬉しかった。
翌日、王家から正式に、シオン王子の婚約者にとの申し入れが我が家にあった。
私は、公爵家にある父様の執務室に呼ばれた。
そこには、お父様とお母様、ルティシアがいた。
ルティシアは私が部屋に入ると、駆け寄ってきて、ぎゅううっと抱きついてくる。
いや、もうホント、コルセット並みに締め付けないで。
「シオン王子の婚約者にとのことだ。どうする?」
お父様は無駄なことは口になさらない。
タンザナイト王国の宰相として、辣腕を振るわれ、周りの方々には魔王と呼ばれていると噂に聞いた。
納得です。
生まれて13年、私はお父様に優しい言葉をかけてもらった記憶がない。
いや、別に厭われてるとかそういうんではない。
多分、性格なのだろう。多くを語らないし、抱きしめてきたりとかそういう、溺愛感もない。
でも、お母様はとても幸せそうだし、お父様も子供だからと言って、勝手に物事を決めたりしない。必ず、確認してくれる。
だから、お父様は私を、私とルティシアを、とても大切にしてくれているのだと思う。
「謹んでお受けいたします」
そう言った私に、お父様は、うん?と視線を向けてくる。
言葉で言ってください。私はお母様ではないんですから、以心伝心なんかしませんよ。
「シオン殿下の事をお慕いしております」
推したいではないですよ。いや、前世からの最推しですけどね。
私の言葉に、お父様は「分かった」とうなづいた。
登城するお父様は、そのまま執務室を出て行き、あとには、お母様とルティシアと私が残った。
「ほんとうに?レティシア?」
お母様が心配そうに近づいてきて、髪を撫でてくれる。
ちなみに、ルティシアはずっとしがみついたままだ。
おかしいなぁ。ヒロインって、こんなシスコンじゃなかった。
いや、大切には思われてたと思うけど、今のルティシアは、攻略対象より私の方が好きそうで・・・
え?私、ヒロイン攻略しちゃったの?
「お姉さま」
ぎゅうぎゅう締め付けてくる手に、そっと手をやると、ルティシアはその力を僅かに緩めた。
うん。内臓出ちゃうからね。そして、令嬢の力じゃないからね、それ。
「シオン殿下のことは、本当にお慕いしているの。子供の私をお相手してはいただけないと、諦めていただけで」
ルティシアの気持ちがわかるから、私は正直に自分の気持ちを口にした。
ルティシアも、お母様も、私が公爵家令嬢として、王家の申し出を受けたのだと心配している。
だから、私がそう言うと、お母様はホッとした表情をされた。
うん。愛されてるなぁ。
「シオン殿下は聡明な方と伺っています。よかったわね、レティシア」
「ありがとうございます。お母様」
お母様とにっこり微笑み合う私に、ルティシアは不満そうに、でも、仕方なさそうに呟いた。
「ゔー、私のお姉さまが・・・いや、でもお花畑よりはマシ・・・」
可愛いルティシア、それ、レインハルト王子のことだよね?お花畑って、あれでも王子だからね?
まぁ、私も思ったけどね。
2日後、私はお父様と登城した。
陛下との謁見を賜るために。
アルトハイン陛下は、金髪に碧眼の、もう、王様を完璧に具現化したような方だった。
顔つきはレインハルト王子とよく似ていて、王子が年をとったら、こうなるのかなっていう顔をされていた。
顔だけね。
だって、威厳とか、レインハルト王子に備わる気がしない。
その辺りは、王妃様似のシオン王子のほうが備わってるし。
やっぱり、王太子として教育受けてるのと、7歳の年の差かしら。
ちなみに、陛下の横には、王妃様、王太后様、シオン殿下がいらっしゃるけど、レインハルト王子の姿はない。
「レティシア嬢、シオンとの婚約に同意してくれ、ありがたく思う」
「陛下、もったいないお言葉です。私こそ、ありがたく思っております」
しっかりと礼を取っていると、シオン王子が私の前へと降りてきた。
「レティシア嬢。改めて申し込ませて下さい。私と、結婚していただけませんか?」
手袋をはめた手をとられ、その指先にそっとくちづけられて、私はビクン、と硬直した。
うわー!うわー!!
王子様だ!・・・いや、ホントに王子様だったわ。ドキドキしちゃうなぁ。
内心の狂喜乱舞を、能面の(本人談。あとで聞いたことによると、周りからはバレバレだったらしい)表情で隠して、私は微笑んだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくね。私・・・僕のことはシオンと呼んで?」
うわー!あまーい。
手をとられたまま、シオン王子にメロメロになってると、陛下たちが微笑ましそうに見つめてくる。恥ずかしいから、見ないで下さい。
「レインハルトには、もうしばらく伏せておく。だが、あれは子供ゆえ、レティシア嬢に迷惑をかけることもあるやもしれん。だから、婚姻の書を交わしておこう」
「は?」
突然の陛下の言葉に、思わずキョトンとしてしまった。婚姻って言いました?
今日、婚約しましょうって話をしたばかりじゃ・・・
「陛下。娘はまだ13歳です」
あ。お父様の声が氷点下だ。お父様の言葉に、陛下が、だってね、と続ける。
「あれだけ、どんなご令嬢に言い寄られても、ダンスひとつ踊らなかったシオンが、レティシア嬢と婚約したいって言うんだ。叶えてあげたいじゃないか」
「ですから、今はまだ、婚約でよろしいでしょう」
お父様、負けてないなぁ。というか、シオン王子、そんなふうに言ってくれてたんだ。・・・嬉しい。
「レインハルトはねぇ、なんていうかお花畑だからねぇ。とにかく、公表はレティシア嬢のデビュタントまで待つとして、書はかわしておこう」
陛下は譲るつもりはないみたいで、すでに署名済みの書類を私たちに差し出してきた。
あ。陛下にまでお花畑って思われてるのね。あの王子。
タンザナイト王国では、侯爵家以上の子息令嬢の婚姻には、陛下の認証が必要となる。
陛下の署名、王家の捺印、あと本人達の署名で、初めて婚姻が認められる。
お父様も、陛下が引き下がらない事を理解したのか、シオン王子に視線を向ける。
「シオン殿下。婚姻しようと、娘はまだ13歳です。正式公表まで、節度ある交際を心がけていただきたい」
「わかっています」
そのあと、私とシオン王子が署名した婚姻の書は、王家で大切に保管されることになった。
婚約をお受けする旨、登城したのに、なんか結婚してしまった。
15歳までは、ここにいる6人以外の誰にも、ルティシアにも、内緒の関係。
だけど、嬉しかった。
前世から、まともに恋をしたこともなかったけど。恋をすっ飛ばして、結婚って思ったけど。
だけど、嬉しかった。
99
あなたにおすすめの小説
良くある事でしょう。
r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。
若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。
けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】
私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……?
*短編です。あっさり終わります
*他サイトでも投稿中
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる