はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな

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第六十七話

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「ここに、アルバート・クシュリナとエリザベス・カリスタの婚姻を認める。二人とも、おめでとう」

 クシュリナ王国国王陛下の宣言に、周囲から拍手がわき起こりました。

 クシュリナ王国では、王族は国王陛下の前で婚姻書に記入し、国王陛下の名の下に婚姻を宣言されることで夫婦と認められます。

 貴族の方だと、王太子殿下や他の王族の方が代理を務められることもあるそうです。

 そう。

 私は本日、アルバート・クシュリナ王太子殿下の妻となったのです。

 拍手してくれている、お父様やお母様やジェレミーの姿に、涙が出そうになりました。

「「おめでとう、エリザベス」」

「おめでとうございます、姉様」

「「「おめでとう」」」

 みんなの祝福の声に、胸の奥から何かが込み上げて来ます。

 真っ白なAラインのドレスは、多くの刺繍が施され、手袋も総レース。

 クシュリナ王国に来てから、王宮の侍女の方々にマッサージだのなんだのを毎日されて、食事制限の上に散歩もしてたから、ドレスもピッタリ着こなせました。

 これ以上ないくらいに磨き上げられ、真っ白な素敵なドレスに、艶やかに結い上げられた銀髪。

 多分、今日が私の頂点だと思いますわ。

 今日はこの後、バルコニーから国民の皆様にご挨拶をして、それから集まってくださった貴族の皆様からのご挨拶を受ける予定です。

 夜までびっしりですわ。

 コルセットを締め上げられる前に、夜までほとんど食べられないからと軽食を準備されましたが、あまり食べられませんでした。

 最近は、食事制限をしていたこともありますが、さすがに緊張からか食欲がなくて。

 婚姻式が行われた謁見の間から、王宮前の広場に面しているバルコニーへと移動します。

 今日は王太子殿下であるアルバート様の婚姻ですから、特別に広場に国民の方々が立ち入ることが許されています。

 バルコニーに出る手前で、アルバート様が足を止められました。

「リズ」

 声をかけられて見上げると、アルバート様が小さな茶色の粒を摘んだ指を、私の口の前まで持って来られました。

「お義父上が手に入れられたキラウェイのチョコレートだよ」

 これ。
私、アルバート様の指から直接食べなきゃいけないのでしょうか?

 私は真っ白なレースの手袋をはいているので、チョコレートなど触れません。

「ほら?口を開けて」

「っ!」

 今日のアルバート様は、光沢のある銀にも見える絹のジャケットにベスト、そしてトラウザーズ姿で、いつも素敵だけど、今日は特別に素敵で・・・

 そんなに素敵なのに、蕩けるような笑顔で私を見るなんて。

 ずるいですわ。
断れないじゃない。


 



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