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第七十七話
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アルバート様に求婚していたバルトフェルド帝国の公爵令嬢が、クシュリナ王国からはるか北方にあるバーボーベン王国の公爵家に嫁がれたそうです。
あちらから是非にと、望まれてのご婚姻だとか。
「バーボーベン王国のことは、ほとんど知りませんわ。確か、身分制度がまだ強く残っている国でしたでしょうか?」
「うん、そうだよ。しかし、義母上の交友の広さには脱帽だよ。まさか、あのような相手を見つけてくるとは」
「どんな方ですの?公爵家の方なのですわよね?」
私は詳細は伺っていないのです。
正確に言うと、お父様とお母様に相談して・・・そしたら知らない間に事が片付いていたのですわ。
アルバート様も、それから国王陛下も驚いていらっしゃいました。
お母様に求婚して来たバルトフェルド帝国の皇帝陛下を、お父様が勝負をして勝ったということはお聞きしましたけど、勝負の内容は教えていただけませんでした。
「バーボーベン王国の公爵令息でね、公爵位を継ぐにあたり形だけの妻を探していた。その令息には、公爵夫人にできない身分の恋人がいてね。公爵夫妻も彼女のことを認めているんだがさすがに表立っての夫人には出来ない。だから形だけの妻を欲しがっていたんだ」
「形だけ、ですか?」
「ああ。公爵夫人としての社交も家政も、もちろん妻としてのあれこれも、何もすることのない。まさに名前だけの妻だ」
「そんなことを、納得なさるでしょうか?」
絶対に、文句を言って戻ってくる気がするんですが。
「皇帝陛下が戻ることは許さないと、伝えているらしいよ。もしこの婚姻を拒むなら、平民にすると言ったら嫁いで行ったそうだし、戻らないんじゃないかな」
「・・・」
お父様、本当にどんな勝負をなさいましたの?
しかし、夫人という名だけの存在。
そのお話だと、実際の公爵夫人としての役目は、その恋人の方が行うということなのでしょうね。
公爵夫人として嫁いだら愛人がいた、というどころか、まるで影武者のような役目。
それでも、平民になる覚悟は持てないのでしょう。
私は伯爵家の娘ですし商会を運営している関係で、貴族令嬢としての地位にこだわりはありませんでしたが、生まれてからずっと人に傅かれて生きて来た公爵令嬢の彼女には、平民になれなんて死刑宣告みたいなものなのかもしれません。
でも私がここで考えたところで、お父様とお母様が詳細を明かしてくれることはないでしょう。
それに、彼女が二度とアルバート様に求婚することがないのなら、もういいですわ。
あちらから是非にと、望まれてのご婚姻だとか。
「バーボーベン王国のことは、ほとんど知りませんわ。確か、身分制度がまだ強く残っている国でしたでしょうか?」
「うん、そうだよ。しかし、義母上の交友の広さには脱帽だよ。まさか、あのような相手を見つけてくるとは」
「どんな方ですの?公爵家の方なのですわよね?」
私は詳細は伺っていないのです。
正確に言うと、お父様とお母様に相談して・・・そしたら知らない間に事が片付いていたのですわ。
アルバート様も、それから国王陛下も驚いていらっしゃいました。
お母様に求婚して来たバルトフェルド帝国の皇帝陛下を、お父様が勝負をして勝ったということはお聞きしましたけど、勝負の内容は教えていただけませんでした。
「バーボーベン王国の公爵令息でね、公爵位を継ぐにあたり形だけの妻を探していた。その令息には、公爵夫人にできない身分の恋人がいてね。公爵夫妻も彼女のことを認めているんだがさすがに表立っての夫人には出来ない。だから形だけの妻を欲しがっていたんだ」
「形だけ、ですか?」
「ああ。公爵夫人としての社交も家政も、もちろん妻としてのあれこれも、何もすることのない。まさに名前だけの妻だ」
「そんなことを、納得なさるでしょうか?」
絶対に、文句を言って戻ってくる気がするんですが。
「皇帝陛下が戻ることは許さないと、伝えているらしいよ。もしこの婚姻を拒むなら、平民にすると言ったら嫁いで行ったそうだし、戻らないんじゃないかな」
「・・・」
お父様、本当にどんな勝負をなさいましたの?
しかし、夫人という名だけの存在。
そのお話だと、実際の公爵夫人としての役目は、その恋人の方が行うということなのでしょうね。
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それでも、平民になる覚悟は持てないのでしょう。
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それに、彼女が二度とアルバート様に求婚することがないのなら、もういいですわ。
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