転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜

みおな

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モブ、着替える。

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 乙女ゲーム『月に恋した太陽』のヒロインは、定番の元平民の男爵家のご令嬢だ。

 これまた定番のピンク色の髪にピンク色の瞳をした、小動物系の可愛らしい女の子、という設定である。

 一方、婚約者のご令嬢は公爵家のご令嬢で、金髪に金の瞳の、美人系にした。

 そして当然のことながら、攻略対象たちは揃いも揃ってイケメンである。

 ゲームとして、イケメンばかりにしないと、攻略する気にならない!っていうのが制作会社の主張だった。

 俺様系、紳士な大人系、年下ワンコ系、俺について来いなワイルド系、ちょっと陰キャラの勉強できる系。

 物語は、学園の2年生にヒロインが転入するところから始まる。

 そして、現在の私の年齢は13歳。
学園の1年生として入学する直前である。

 ここが乙女ゲームの世界なのか、ラノベの世界なのか、それともそれに似てはいるけど違う世界なのか、今の私には判断がつかない。

 とりあえずは、学園に入学すれば、攻略対象や婚約者たちの姿は確認できるだろう。

 そんなことを考えながら、クローゼットの扉を開ける。

「陰気・・・」

 クローゼットの中身は、見事に黒、グレー、濃紺で埋め尽くされていた。

 髪が黒なんだから、もう少し明るい色を着ればいいのに、と他人事のように思ってしまう。

 私が転生する前のアイルって、地味っ子だったのだろうか。

 顔は悪くないと思うんだけど。
ドレッサーの中に映る黒髪の少女の姿を、マジマジと見る。

 三つ編みをしても、癖のひとつもつかない強固なストレートの黒髪は、腰あたりまである。

 小柄ではないけど、どちらかというとほっそりとした雰囲気。

 モデルや人気アイドルほどではないけど、10人いたら、1人くらいは可愛いと言ってくれる程度には可愛いと思う。

「アイル様。お目覚めでしたか」

 軽いノックの後、扉が開いて執事服姿の青年が入ってくる。

「おはようございます、アイル様」

「・・・おはよう、シキ」

 彼の名前は、シキ・リングス。
伯爵令嬢である私付きの侍従である。
 銀髪に、青い瞳。スラリとした長身で、執事服がめちゃくちゃ似合うイケメンである。

 えーと。
どうして令嬢であるアイルの侍従が、男の人なのかな?

 転生したことは、案外あっさりと受け入れたのに、自分付きの侍従が男の人であることには納得がいかなかった。

 だって、着替えとか手伝うんだよ?
さすがにお風呂までは付いてこないけど、何の羞恥プレイなの?って叫びそうになったわ。

「今日は、どちらをお召しになりますか?」

「・・・じゃあ、これ」

 黒のレースのワンピースを引っ張り出す。
別に派手な色合いの服が好きなわけじゃないけど、喪服じゃあるまいし、と思う。

 だけど、出来る侍従のシキは、黒のワンピースに、真っ白なレースの付け襟やリボンをつけて、脱喪服してくれる。

 この有能っぷりのせいで、着替えを手伝わなくていいと言えないのよね。


 


 
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