冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな

文字の大きさ
36 / 56

誰かと一緒って楽しい

しおりを挟む
「レイ。そこ、ズレてる」

 刺繍針を進める手を止めて、レイの手元を覗き込む。

 アークライン王国への断罪をパパにお願いして、私はレイと一緒に『私がしたいこと』をすることにした。

 ローズリッテの時は、全てがセドリック様やアークライン王国、フェルゼン公爵家のためで、私がしたいことなんて何も出来なかった。

 だから・・・
私に愛情を注いでくれるパパやノイン、手助けしてくれるサウロン様やラーヴァナ様に何かお返しがしたい。

 そう言ったら、レイがハンカチに刺繍などどうですか?と提案してくれた。

 お菓子作りも良かったけど、ノインが作るのが美味しすぎて、チャレンジする勇気がもてないのよ。

 その点、刺繍ならさすがにノインはしない。

 みんなの服とかドレスとか、そういうのはちゃんと、専門の針子さんたちがいるの。

 刺繍糸や無地のハンカチを、パパたちには内緒ねって頼んだけど、多分ノインにはバレてると思う。

 仕方ないわ。
ノインは優秀なんだもの。

 ローズリッテの時に、当然だけど刺繍も学んだ。

 人に贈っても支障のないレベルまでにはなっていたと思う。

 だけど・・・
ロゼはまだ七歳だから、手がちょっと小さいのよ。

 ローズリッテの時のように、滑らかに針を刺していくことが難しい。

 最初は簡単な図案から。
そうして始めた刺繍に、レイが教えて欲しいと言い出した。

 レイの言うところの前世、レイコがいた世界でも刺繍はあったらしい。

 でもそういうのはお針子さんの仕事が好きな方がやることで、貴族の世界のように令嬢が必ず通るべき道ではないんですって。

 しかもレイが言うには、ミシンとかいう機械で、刺繍も出来るのだそう。

 レイコがいた世界って、すごいのね。
想像も出来ないわ。

 それで、拙いながらもレイに刺繍を教えているんだけど、レイって案外不器用だということが分かった。

 そう指摘したら「手芸は苦手なんです」ですって。

 どうして苦手なのに学ぼうと思ったのかしら。

「苦手なら、どうして刺繍を?」

「礼子の時に、友人たちが手芸クラブに入っていて、私も一緒にしたくて入りたかったんですけど、昔からこういう細かい作業は苦手で、結局みんなについて行けなくて辞めちゃったんです。別にみんな私を除け者にしたわけじゃないんですけど、疎外感を感じちゃって距離が出来てしまって。だから、誰かと一緒にやれたらなと思ったんです」

 ローズリッテは上級者の腕前だけど、ロゼにはその知識はあっても技能はまだ追いついていない。

 確かに、レイに教えながらのんびりと進めるのには良いのかもしれない。

 それに、ローズリッテも誰かとこんなふうに話しながら刺繍することなんてなかったわ。

 誰かと一緒って、すごく楽しいことなのね。
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

今、私は幸せなの。ほっといて

青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。 卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。 そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。 「今、私は幸せなの。ほっといて」 小説家になろうにも投稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

処理中です...